今後のアップデートと完成が期待される、注目の制作途中フリーゲーム3選(2022年8月号)
日々、個性豊かな新作が誕生し続けているフリーゲーム。その中には完成品に限らず、現在制作途上のものもあり、公開後も都度実施されるアップデートで完成に向け、着々と進歩し続けている。
本記事では、そんな制作途上のフリーゲームより注目の3本を紹介。
今回はSFノベル、シミュレーションRPG、散策系RPGの3タイトルをピックアップした。いずれも今後の完成版登場が期待されるタイトルだ。機会があれば実際にプレイし、その魅力をお確かめいただきたい。
目次
アンダー・フォーティーン
西暦30XX年の遥か未来。女神「カトレア」により、滅亡から救われた地球には14歳の「子ども」が、火星には15歳以上の「大人」が暮らしている。主人公の少年「シラン」は、地球の教会にて心優しいシスターと大好きな友達に囲まれ、穏やかな日々を過ごしていた。そんな中、友達が15歳の誕生日を迎え、火星へと旅立つことが決まる。そして火星へと旅立つ前日、シランはある人物たちと出会い、火星と地球の教会に隠された秘密を知ることになる……という、興味深い設定と先の気になるストーリーが特徴のノベルゲーム。
全4章構成で、本稿執筆時点では1章のみがプレイ可能となっている。内容としてはテキストを読みながらストーリーを追っていく、スタンダードなノベルゲーム。一部、選択肢が表示される場面もあるが、1章の時点ではストーリーが大きく変化する仕掛けはなく、1本道で進行する作りになっている。また、画面構成も左側にキャラクターおよび背景、右側にメッセージとメニュー全般を配置するという明確な分担が成された特徴的なデザイン。その構図もあってか、どことなく絵本のような雰囲気を醸し出している。
実際、淡いキャラクターデザイン、ピアノ主体の音楽も相まって、プレイ中には絵本を読み進めているような気分に浸れる。ただ、ストーリーは途中から一気に不穏な雰囲気へと変わり、作中の世界に隠されたおぞましい”なにか”が見え始める。シランもそれに直面し、どのように関わっていくのか……という、気になるところで1章は終了するようになっている。
まだ序盤も序盤のため、語られる情報も断片的だが、ストーリーは最終的にどんな収束を迎えるのか、先が読めないものがあって嫌でも興味を引く。特にシランと親しかった友人で、火星へと既に旅立った「スバル」なる人物はどんな形で関わってくるのか、1章で起こる”出来事”も相まって殊更気になってしまうだろう。現状、僅かな台詞の変化に留まった選択肢も今後、どんな役割を果たすのかなど、システム面でも今後の推移が注目される本作。設定面と雰囲気に少しでも惹かれたのなら、ぜひプレイいただきたい。
ただ、1章の引きが割と強めのため、続きを早急に求めたくなる症状を発する可能性あり。念のためご注意を。
[基本情報]
タイトル:『アンダー・フォーティーン』
作者:グレうさぎ
クリア時間:30分~1時間
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
◇ダウンロードはこちら
https://novelgame.jp/games/show/3993
魔女の詩
山賊退治に赴いた帝国の騎士とその従者たちが、ある子連れの母親を救出したことによって、大陸全土を巻き込む戦乱の渦に飲まれていくという本格的な戦記物語を描くシミュレーションRPG(SRPG)。本稿執筆時点では5章までがプレイ可能。
SRPG制作ツールの「SRPG Studio」製の作品で、システム面ではその定型に沿った味方と敵の順で行動するターン制を採用している。
少し特徴的なのが「兵種三すくみ」。歩兵は槍兵に強い、槍兵は騎兵に強い、そして騎兵は歩兵に強いという、兵種に応じて戦闘結果が大きく左右される仕組みになっている。「ふりーむ!」の作品ページに名が出ている通りだが、『ラングリッサー』シリーズの「ユニット属性」みたいなものである。そのため、マップ上のユニットにもどの兵種かを示すアイコンが表示されるようになっている。
他にシステム面では「名声(ボーナスポイント)」なるものも。これはユニットごとに設定されており、強敵を倒したり難しいクエストを達成することで追加分のポイントを獲得できる。逆に戦闘に敗北し、負傷撤退してしまうとペナルティ発生で減少。永久ロストこそないが、この合計数値に応じて以降のシナリオの分岐が生じるため、よりよいルートを目指すとなれば撤退は最小限に留めることが推奨されるようだ。なお、体験版は1本道だが、完成版はマルチシナリオになる予定とのこと。
さらにマップでも、前述のクエストに関連したイベントが発生して戦術の転換が必要となる、変化を感じ取れる構成になっているのが面白い。増援ユニットの出現位置が可視化されているといった仕様もユニークだ。
ストーリーも戦記物らしく古風な言い回しが多用されていたり、最終的には親子二世代の戦いへと発展していくというだけあって、壮大な内容になりそうな期待を抱かせる。イベント用の一枚絵も豊富に加え、デザイン面でも個性強めと、並々ならぬ気合いが感じられる仕上がり。長編SRPG、戦記物語好きの人には注目の1本だ。
システム的に『ラングリッサー』シリーズの経験者も要チェック……?
[基本情報]
タイトル:『魔女の詩』
作者:後藤健二
クリア時間:3時間(※5章まで)
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
◇ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/28402
神様ノ季節
雪に埋もれつつある、滅びゆく世界を舞台にした自由探索系のロールプレイングゲーム。ストーリーは薄めの作りで、舞台となる世界のあちこちに存在する遺跡と思しきものや、住民たちに設定されたテキストから考察していくというスタイルになっている。
ただ、本稿執筆時点で公開されている体験版ではストーリーがほとんど設定されていないに等しく、ゲームを始めると状況がよく分からぬままマップ探索、その末の大ボス戦が始まるようになっている。そのため、何の情報もないまま始めると困惑しやすいので、これからプレイ予定の方はあらかじめご注意いただきたい。
また、システム面でも主に戦闘周りで説明不足な部分が多く、チュートリアルもないので、割と手探りなプレイになりやすい。基本は敏捷性の高い順から行動するターン制のコマンド選択型バトルなので、最小限の理解でも遊べる。ただ、特徴を感じるには一定の時間を要するので、これもまた今後プレイ予定の方は注意いただきたい。
のっけから注意点の紹介に集中したが、それほど突き放し具合の強い作りになっている。逆に言えば、分かってくると個性が見えてくる面白さがある。
特にパーティメンバーそれぞれの適切な役割に徹させることが試される戦術面、必ずプレイヤー側が先制し、それと同時に発動する「スキル」に応じて以降の難易度に変化が生じるバランスがユニーク。雑魚敵とボス戦とで明確な強弱差も表現しており、どこに最も頭を働かせるかという方針がはっきりしているのも印象的だ。
探索周りも雪に埋もれつつある世界という、謎に満ちた設定が興味をそそる。また、マップは疑似3D形式で、対応するボタンを押せば1人称の主観視点になり、3DダンジョンRPGチックな探索が楽しめるのもちょっとした見所である。
現在は説明不足な点が多い点で尖り具合が凄いが、戦闘システムに世界観、自由探索というテーマなど興味深い点は多く、さらなる充実化への期待がかかる。特に序盤の導入部分が整うことで、探索と戦闘の特徴を理解した上で入っていけそうに思えるので、今後のアップデートでの進化に注目したいところである。なお、体験版では動作環境に関するフィードバックも募集されている(※詳細は同梱されているテキストファイルを参照いただきたい)。実際にプレイしてみて、気になった点があれば、意見を送ってみよう。
[基本情報]
タイトル:『神様ノ季節』
作者:七画 形
クリア時間:未設定(※完成版は8~10時間予定)
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
◇ダウンロードはこちら
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_10306.html