通行人を突き飛ばせ!ジェットパックで空を飛べ!生贄を捧げ、悪魔の力を手に入れろ!ヤギ大暴れ 『Goat Simulator』レビュー
Q.ずいぶんひどい記事タイトルだけど、結局これは何をするゲームなんだい?
A.こいつを見てくれ。
そういうわけで、今回は一部で話題のヤギになって暴れ回る物理シミュレーションゲーム『Goat Simulator』をレビューしていこう。バカゲーやジョークの類と侮るなかれ、ヤギはヤギなりに手が込んでいるのだ。
……いや、本当にバカゲーだけど。
・概要:ヤギ。
「ヤギあれ。」
こうして、ヤギがあった。
――旧約メェ書
正直言って、本作の説明は冒頭の『ヤギを操作する物理シミュレーションゲーム』という文言に全て圧縮できる。要するに不死身のヤギを操り、Unreal Engine 3によって構築されたゲーム内世界でただただ破壊と暴走の限りを尽くすのだ。スコアも伸びるしね。
3秒前までガソリンスタンドだった
というわけで、そこに戦略的なゲームシステムや多人数による協力・対戦プレーなどありはしない。一応スコアの概念はあるし、実績解除によるちょっとした追加要素等も準備されているのだが……。
とりあえずプレイヤーができるのは「ヤギを操作して小さな町を破壊しまくること」だけ、という潔すぎる設計となっている。ストーリーも手に汗握る駆け引きもへったくれもあったもんじゃない。レビュー記事の文字数を稼ぐのに苦労するありさまだ。どのサイトのレビューを見てもスクショてんこもりだったことから察してほしい(そして本記事もそうなるだろう。概ねヤギのせいだ)。流石は公式サイトに「ぶっちゃけ言うと、こいつを買うための10ドルでレンガの山でも買った方がいい(意訳)」と書かれているだけある。
加えて、本作のPVも大概ひどい。ご覧いただこう。
一部の人はお気づきかもしれないが、反響を呼んだあの『Dead Island』のPVのパロディなのだ。しかしゲームの内容が内容なだけに「どうしてこうなった……」感しかない(ヤギのせいだ)。とりあえずヤギだということは分かる。ヤギ飛んでる。そこまでは分かる。何のゲームだ。
ちなみに、筆者は仕込まれた小ネタ(ミステリーサークル、開発したCoffee Stain Studioのオフィスetc)や、物理演算のバグ(おそらく意図的に除去されていない。たぶんヤギのせいだ)でオブジェクトにハマり超高速で振動するヤギを見て笑うのに大半の時間を費やした。
このまま足を懸命に動かして梯子を登る(というかヤギが上昇する)
埋まった。
・ヤギの操作
とりあえずゲームを起動するとロード画面に操作説明があるので、それを見ればだいたいの操作は習得できるだろう。こちらでも解説しておくと、キーボードのWが前進、Aが左移動、Dが右移動、Sが後退。1でヤギが鳴き、スペースキーは押すときれいに着地できる。Qを押すとヤギが寝そべって、各移動用キーでゴロゴロできる。誰得だ。
あと重要なのがEで、「舌で舐める」動作となっている。Rは各種特殊能力やアイテム(ジェットパックや悪魔ヤギ等)を使用するためのキーとなる。またカメラの移動はマウスで行い、頭突きが左クリック、右クリックは空中での方向転換(というか宙返り)となる。
この「舌で舐める」操作がクセモノで、まあ詳しくは試してみてほしい。舐めるというかつかむに近い。
ヨッシーみたいな、とでも言えば分かるだろうか。つかむ際の射程は短いが、つかんだ後はほぼ無制限に伸びる舌で人を引きずったり車を引っ張ったりできる。もう一度Eを押したり強力な力がはたらくと離す。
ジェットパックと組み合わせるとこんな空中ランデブーも可能。嬉しくない
加えて万が一(いや普通に発生するのだが)詰まった、バグった際のリスポーン(ヤギを初期位置に移動)、リスタート(全オブジェクトとスコアのリセット)はEscキーから開くメニューで行える安心設計だ。どうしてここは気が利いているのか。
・もうちょっと細かく:ヤギ。
A.4月1日。
――『Goat Simulator』公式サイトQ&Aより
公式回答でさえ上述のようなことを言いだす始末なので、シリアスなゲーム性を求める人にはオススメしない(というか、この文章が出てくるまで記事を読んでいないだろう)。しかし細かいネタには困らない。
本作を怪は……開発したCoffee Stain Studioのオフィスに入ると絶賛開発中のエンジニアがいる。また条件を満たすとUFOに連れ去られたり、人間を生贄に捧げることで悪魔の力を手に入れたり、ガケから岩を落としてバーベキュー会場を吹き飛ばしたり、ヤギによるヤギのためのヤギの宮殿を訪れたり……ともう何が何やらといった次第だ。正直その手のネタしかないと言ってもいい。やはり潔い。
どう見ても邪教の儀式のための魔方陣です本当にありがとうございました
しかし物理演算はそれなりにしっかりしているため、微妙にリアル……なのかどうか分からないヤギの挙動を楽しむこともできる。いやぶっちゃけガバガバだけど。演算。
しかしオブジェクトを破壊したり人をぶっ飛ばしたりでたらめに空へ打ち上げられたりするのは案外爽快なもので、気がつくと大量に並んだ店の商品や建設資材を頭突きでなぎ倒している、そんな楽しみはある。ドンガラガッシャドンガラガッシャピギャーピギャーとSEが鳴りまくる心地よさは間違いなく存在する。
私たちはヤギの定義を見直す必要があるようだ
どういう世界観だ
・おわりに:ヤギ。
そういうわけで今回は『Goat Simulator』のレビューをお送りした。多くの生命の誕生がそうであるように(そしてヤギのそれも)、本記事も難産だったことは言うまでもない。正直言うこともあんまりない。加えて、筆者の使用しているPCのスペックは泣きたくなるほど低い。プレー中は処理落ちを防ぐため、足元ばかり見てプレーせざるをえなかった。何が悲しくてこのゲームを縛りプレイする必要があるのか。
しかしそんな中でも本作は放置されっぱなしのバグや突然上空に打ち上げられるヤギ、謎の施設や意味不明な挙動そして小ネタの数々で筆者を笑わせてくれた。少なくとも10ドルを燃やして眺めているよりは楽しいと確信を持って言える。
ただし買った後の抗議は受け付けないので、自己責任でヤギをヤギしてほしい。
・追記:ヤギ。
本記事を書き終わった直後にこんなアナウンスが来た。要するに追加パッチが無料DLCとして配信されるらしい。新マップに新実績・新ヤギ、挙句の果てには分割画面による多人数プレイetcを投入予定、時期は5月中旬になるとのこと。何を考えてるんだこいつら。今後ともヤギには期待したい。
[タイトル]
Goat Simulator
[ソフトウェアタイプ]
シェアウェア(有料、9.99ドル。2014年4月2日リリース時点での価格)
[対応OS]
Windows
[ダウンロード]
Steamのストアページ
(プレイにはSteamのダウンロードが必要)
[制作者]
Coffee Stain Studios
[プレイ時間]
3分~飽きるまで。