世界はゴリラ(とバナナ)で回ってる!? ソリティア風“一人用”カードゲーム『ゴリティア』プレイレビュー
というわけで今日は“一人用“カードゲーム『ゴリティア』の紹介だ。発表当初から思い切ったデザインやコンポーネント等が話題になっていたが、蓋を開けて実際に遊んでみたところかなりガッチリと作り込まれた、やり込みがいのあるカードゲームだと感じた。今日はこいつの紹介をしたい。ゴリラと言えば学名がゴリラ・ゴリラだったりニシローランドゴリラの学名がゴリラ・ゴリラ・ゴリラだったり《Gorilla Shaman(ALL)》にMoxenを叩き割られたり音ゲーを極めた人をゴリラと呼んだりゴリラTRPGなんていう代物が存在していたり、と何かと話題に事欠かない動物だが、本作ではどのような横顔(※ゴリラの)を見せてくれるのだろうか?
……さて、本作『ゴリティア』を一言で説明するなら“勝利条件にして消費者にして土台にして哲学にして資源にして行動者たるゴリラをピラミッド状に積み上げて覇者となる一人用カードゲーム”だ。多分このままだと何を言っているのか分からない人が9割を占めると思うので、早速内容の紹介に入っていきたい。
ちなみに本作のメインゲームデザイナーは「ステッパーズ・ストップ」のポーン氏。フリーゲームにおけるノンフィールドRPGの草分け的存在『159人の願いと幻想~フィラデルフィア演義』や『雪道』で広く知られるとともに、以前もぐらゲームスでレビューを掲載した『シェフィ』のデザイナーでもある。そんなポーン氏が制作したのは上述の『シェフィ』に引き続き一人用のカードゲーム。氏の携わったゲームには、どれもストラテジックな楽しみがあり、そこにスパイスとして運要素の加わったものが多くあったように記憶している。本作『ゴリティア』では一体どうなるのか楽しみだ。
必要なカードはたったの二種類(コンポーネント編)
本作について、ルールよりも先に最初に話しておきたいことがある。なんとこのカードゲーム、カードはたったの二種類しかない。その二種類とは、ゴリラとバナナである。
ご覧の通り、ゴリラとバナナにはトランプのような数字や絵柄・色等の違いさえ存在しない。限界まで削ぎ落とされた、超のつくシンプルっぷりだ。『ゴリティア』ではこの2種類のカードを巧みに使い分け、ゴリラでカードを引き、ゴリラにバナナを植えさせ、ゴリラがさらなるゴリラを呼び、ゲームの勝利を目指す。ちなみにバナナはゴリラたちの食料としてそのまま食べるか、バナナの安定供給のために植えることになる。食物連鎖もシンプルである。
さて、ここまでの文章ではまだまだ謎に包まれている『ゴリティア』だが、次項ではジャングルの神秘を解き明かしてみたい。要するにルールの解説だ。
ジャングルでの生き残り方(ルール編)
と、いうわけで本パートでは『ゴリティア』のプレイの仕方について解説したい。とはいえ『ゴリティア』、正直言って文章ベースで説明するのはなかなか骨が折れるというか難しい。詳細すぎる説明は省くが、一連の流れを見てもらえばだいたいどのようなゲームか把握できるはずだ。
Part1:デッキ構築編
『ゴリティア』はまず自分のデッキを作るところから始まる。カードごとの枚数バランスを考慮しつつ、デッキが36枚になるようにカードを吟味・選出するのだ。一人用カードゲームとはいえ、ここのバランス調整はなかなか悩ましいところ。
なんせこのゲームの勝利条件は(若干の語弊はあるが)「ゴリラを7匹以上、横一列に並べること」。しかしゴリラにバナナを供給し続けなければ、食糧危機をきっかけとして群れは崩壊しゲームオーバーになってしまう。ゴリラが多すぎてもダメ、バナナが多すぎてもダメ……そう、デッキ構築の時点から既にゲームは始まっている。
君だけの(ゴリラとバナナの二種類だけで構成された)最強デッキを作ろう! 筆者はゴリバナ比17:19がお気に入り
また、説明書には各カードの推奨枚数が記載されているので初回プレイも安心。慣れてきたプレイヤーは自分のプレイスタイルに応じて微調整を行うのもよいだろう。カードの枚数の匙加減が最終的に勝敗を分ける、というのはカードゲームの醍醐味の一つであり、この『ゴリティア』も例外ではない。まあカードは二種類しかないのだが。
Part2:ゲーム準備編
続けてデッキをシャッフルして裏向きに置き、デッキの上からカードを7枚引く。この7枚がゲーム開始時の初期手札となる。ゴリラが多すぎれば食料の取り合いになるし、バナナだらけなのもなんだか寂しい。バランスが良くなるよう祈りながらカードを引こう。
Part3:ゲームプレイ編
手札の準備ができたらゲーム開始。『ゴリティア』はターン制になっており、1ターンはより細かい区分として6つの「フェイズ」に区切られている。これをゲームが終了する(あるいはゲームオーバーになる)まで繰り返す。タイトル『ゴリティア』の由来(であろう)、ソリティア的なゲーム進行だ。ちなみにフェイズは以下の通り。
1:【目覚め】フェイズ
2:【ドロー】フェイズ
3:【アクション】フェイズ
4:【食事】フェイズ
5:【手札調整】フェイズ
6:【ターン終了】フェイズ
この1~6のフェイズを順番に進行し、6の【ターン終了】フェイズが終了したら1の【目覚め】フェイズに戻り、次のターンが始まるわけだ。さて、早速だがそれぞれのフェイズについて解説していこう。
まず【目覚め】フェイズだが、これは「寝ているゴリラを全て縦に起こす」というものだ。ゴリラは「アクション」と呼ばれる特別な行動を行うと寝てしまい、次の【目覚め】フェイズまでアクションに参加できなくなる。それを回復するためのフェイズだ。これは最初のターンには関係ないので今は置いておこう。
その次は【ドロー】フェイズ。こちらはそのまま「デッキからカードを一枚引く」。「ただし最初のターンはカードを引かない」とルールブックにはあるので、こちらも最初のターンには関係ないから飛ばしておこう。もちろん、次のターンからカードを引くのを忘れないように。
ちなみにアクションの効果や【ドロー】フェイズでカードを引く場合、山札切れでカードを引けないと即ゲームオーバーとなるので注意が必要だ。
ドローの瞬間はいつだって緊張が走るものだ(カードは二種類しかないけど)
三番目は【アクション】フェイズ。ここからが『ゴリティア』の本番だ。
このフェイズで出来ることは二つある。まず「手札から場にゴリラカードを1枚出す」。これはアクションフェイズ内ならどのタイミングでも行うことができる。基本的には毎ターンゴリラを追加してゆくのが理想的な流れと言えるが、例外的な状況もある。
最初のターンに出てきた最初のゴリラ。一匹だけだとどことなく哀愁さえ漂う
ちなみに【アクション】フェイズでゴリラを場に出す際には制約がいくつかある。ゴリラは原則としてピラミッド状に積み上げてゆくことになるため、最初は一番下の段(ここを「地面」と呼ぶ)に置く必要がある。他にもいくつかの制約があるが、本記事では理解を早めるために敢えて省略する。そしてゴリラには「レベル」が存在し、一番下の段=地面にいるゴリラのレベルは1。以降、段がひとつ上がるごとにゴリラのレベルは1ずつ上昇してゆく。この「レベル」は、ゴリラの行う特殊行動「アクション」で重要になってくる。
「場」に出したゴリラはピラミッド状に積み上がってゆく。二段目のゴリラはレベル2、三段目のゴリラはレベル3だ
そしてお待たせいたしました、【アクションフェイズ】で出来ることがもう一つ。「ゴリラにアクションを実行させる」だ。「アクション」とは、ゴリラを寝かせることで行える特殊な行動を指す。例えばレベル1以上のゴリラ1体を寝かせるとアクション「散策」が使える。これは山札の一番上が「ゴリラ」か「バナナ」か予想し、その場で表にして当たっていたらそれを手札に加えることができるというものだ。
他にも手札のバナナを植えて食糧を安定供給してくれる「植林」、ゴリラを追加で場に出せる「招待」etc、ゲームを有利に進めることができる効果が満載。
基本的にレベルが高くなれば高くなるほど効果の大きい(=強い!)アクションを使えるようになるので、段は着実に積み上げていきたい。
また、ハイスコアアタック用のオプションルールとして、アクションを超越したアクション、エクストリーム・アーツ「ゴリラファイブ」や「バナスタシア」が存在する。その効果は君の目で確かめよう。はっきり言って超スンゴイ。
アクションのためにゴリラを横にして寝かせた図。全然寝てない。というかたくさん出ると顔が怖い。
アクションの説明はこの辺にしておいて、残り半分の紹介に入っていこう。
次の【食事】フェイズでは「場に出ているゴリラの数だけ手札からバナナを捨てるか、仮想バナナを消費する」。このバナナが払えないと群れが崩壊してゲームオーバーだ。要するにゴリラの群れを維持するために飯を食わせる必要がある。
この場合はゴリラが4体なのでバナナが4つ要る。アクションを駆使してやりくりしたいところ
ちなみに「仮想バナナ」というのは主にアクションによってのみ発生し、カードとしての実体は無いが、バナナとしてゴリラたちに与えることができる、というものだ。手札にあるバナナカードとは異なり、仮想バナナは次のターンに持ち越せない。もし仮想バナナがあるならありったけゴリラたちに食べさせてやるといい。
また、仮想バナナは実体バナナ(手札のバナナカード)と組み合わせて消費することもできる。どちらか一方だけでしか払えないというわけではないので、安心して仮想バナナを与えていこう。
続けて【手札調整】フェイズ。これはかなり分かりやすい。「手札が7枚を越えていた場合、このフェイズで7枚になるまで捨て札にする」。他のTCGでも散見される、手札の上限枚数を制限するためのフェイズだ。
最後に【ターン終了】フェイズ。普通ならターンを終了して【目覚め】フェイズに戻るところだが、このフェイズの時点でゴリラが一番下の段(=地面)に7匹以上並んでいればその時点で勝利だ!
もちろん、ハイスコアアタック(地面に並んでいるゴリラの数がスコアとなる)を行う場合、ここで勝利を宣言せずそのまま次のターンを続けてもよい。
そうそう、地面に一匹もゴリラがいない場合、このフェイズでゲームオーバーになってしまうので注意が必要だ。決してバナナ7枚の初手をキープしてはいけない。
ジャングルに覇を唱えるゴリラ。見事勝利だ!(※見栄えがするよう全て起こしました)
Part 4:まとめ編
さて、『ゴリティア』のルール紹介はここまで。
終わりに、簡潔に1ターンの流れをまとめておこう。
1、【目覚め】フェイズで寝ているゴリラを起こし、
2、【ドロー】フェイズでカードを1枚引き、
3、【アクション】フェイズでゴリラを場に出したりアクションを使って展開し、
4、【食事】フェイズでバナナを消費してゴリラの群れを維持し、
5、【手札調整】フェイズで手札が7枚以下になるように捨て、
6、【ターン終了】フェイズでの勝利宣言(ゴリラ7体)を狙う。
といった流れになる。要するに、「ゴリラを7体並べてターン終了時まで耐えれば勝ち」というわけだ。これが単純に見えてなかなか難しい。
『ゴリティア』では36枚という山札の制限が存在するため、必然的に使えるリソースには上限がある。しかも『シェフィ』等とは異なり、一度捨て札にしたゴリラやバナナは基本的に戻ってこない。そのため、プレイスタイルにもよるがリソースがかなりカツカツになりがちで、かなりギリギリの判断を求められるような状況になることも少なくない。一手誤れば即敗北、なんてこともある。ジャングルは厳しい。もちろんそこを潜り抜けることが何より楽しいのだが。
ストイックなゴリラの美学
さて、ジャングルの王者たるゴリラは『シェフィ』のか弱いひつじたちとは違い、外敵は存在しない。しかしと言うか、やはりと言うか、それでも自然は厳しい。ダメな時はすぐにゲームオーバーになってしまう。
筆者は最初の一回目を達成するまでがなかなか長かった。それもそのはず、安直に「守り」に入ったプレイが多かったのだ。どうやら勝負を仕掛けるタイミングを見誤ると一気にジリ貧になってしまうらしい。ということは、どこかで「攻め」に転ずる必要がある。デッキを組み立て、先を予測し、慎重に・時には大胆にカードをプレイする。そこには、ストラテジックでストイックな一人用カードゲームの楽しみが凝縮されていたように感じた。要するにある種の美学のようなものである。コレは他ではなかなか代替できないもので、じらじらとした焦燥感とそれを突破したときの喜びがある。ゴリラは奥深いのだ。
さてさて、今日の記事はここまで。今回は一人用カードゲーム『ゴリティア』を紹介した。一人用とは言えど、知人友人と卓を囲んで代わる代わる遊ぶのも楽しい本作。一度と言わず二度三度、気がつけばどっぷりとプレイしていること請け合いの作品だ。
[基本情報]
タイトル ゴリティア
制作者 ステッパーズ・ストップ
プレイ人数 1人
プレイ時間 1回あたり5〜10分程度
購入関連 すごろくや、Roll&Roll Station秋葉原、それからAmazon
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