超攻撃型にして超絶怒涛の最終決戦級”爆裂”縦シューティング、それが『GRAND CROSS: ReNOVATION』だ。

インディーゲーム,シューティング

「最強」という言葉にはときめく響きがある。
特にその言葉に相応しい「力」を会得し、それを駆使して様々な脅威を打ち払う”ヒーロー”の格好良さは色褪せず、衝動的に憧れてしまうものがある。
ゲームに限られるが、そのような力を実際に振るう時の快感も特筆すべきものがある。

そんな「最強」の「力」というものを存分に振るう面白さが詰まったシューティングゲームが2022年2月、「Steam」にて姿を現した。それが「超攻撃型シューティング」を名乗る『GRAND CROSS: ReNOVATION(グランドクロス リノベーション)』である。

ジャンル史上、空前絶後の最強武器で敵と弾幕を振り払え!

遥か古(いにしえ)より続く闇の勢力による侵攻は、絶望的な最終局面を迎えつつあった。闇の世界より流れ着いた戦士「ネグザルツ」は、太陽の力を宿した剣を手に闇の中枢へと突入。全てを覆すための決戦が幕を開ける。

いきなり最終決戦なオープニングと共に始まる本作『GRAND CROSS: ReNOVATION』は、縦スクロール形式のステージクリア型シューティングゲームとなる。プレイヤーは主人公ネグザルツを操作し、襲い来る闇の軍勢を撃滅しながらステージを進みつつ、最後に待ち受ける強大なボスの撃破を目指す。全6ステージ構成で、基本的な流れはジャンルの王道に則った一本道になっている。

システム上の特筆すべき点は単刀直入に言えば「最強」ぶりである。

具体的には自機ことネグザルツ自身。「太陽剣(サンブレード)」なる圧倒的な火力を秘めた武器をデフォルトで装備しており、シューティングゲーム史上最強(※Steamストアページより)と言わんばかりの超絶怒涛の攻撃を展開するのである。

どれほど「太陽剣」が強いのかは敵に大ダメージを与えるのはもちろん、対象を貫通するに加え、斜線上にある敵の弾を消滅させてしまうことにある。

しかも、特定のボタンを組み合わせれば、さらに威力の高い「大太陽剣」、広範囲に威力低めの攻撃を展開させる「拡散太陽剣」といったものも繰り出せる。
中でも「大太陽剣」は文字通りと言わんばかりに驚くべき火力で、強敵として現れる中ボス、大ボスにも致命的なダメージを与えるほどだ。

さらにこれは「太陽剣」も共通だが(※拡散太陽剣は除く)、この武器は基本的に直線状に照射。そこから(Xbox 360コントローラ使用時)LB、RBボタンを押すことによって、360度照射方向を変更できるようになっている。まさに剣を振り回す感覚で展開できるのだ。これで画面を覆い尽くす弾幕を一気に消し去ったり、安全なところから怒涛の一撃を加えるような(ある意味、文字通りとも言える)離れ業を繰り出すのも可能。

「強すぎだろ……」と、あまりの威力に引いてしまうほど驚異的な威力と利便性を持ち合わせた武器になっているのだ。とは言え、この武器は剣だけに「諸刃の剣」な一面もあり。発動のたびにネグザルツの体力(ライフ)を消耗する。

本作はダメージ制が採用されており、敵弾に1回当たってもミスとならない。しかも、その最大値は999で、ダメージを受けても自動的に回復するというおまけ付き。紹介が遅れたが、耐久力でも「最強」なのである。
しかし、体力は被弾以外に「太陽剣」の使用時にも消耗する。威力の高い「大太陽剣」であれば、さらにその消耗スピードは加速。長く照射しすぎれば、逆にネグザルツが撃ち落とされかねないほどの大ピンチに陥ってしまう。

「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という著名な格言が如く、本作も相応のデメリットを被る設計になっているのだ。しかも、本作はダメージ制を採用する一方、残機制は採用されていない。つまるところ、ネグザルツが撃ち落とされればゲームオーバー。最終決戦から始まるストーリーだけにある、イチかバチか仕様なのだ。(※厳密には残機制自体、コンティニュー回数の形で存在するのだが)

それもあって、力を使うにも状況を見極めたり、己の体力に意識を向けることが大事。「最強」という特徴から、直感の赴くままに暴れまわる設計を脳裏に浮かべるかもしれないが、実際はそうである部分と、そうではない部分が交互に行き交う形。「最強」なりの長所と短所を押さえたシステムにまとめられているのだ。

以上、最強たる所以に焦点を当てたが、それらが物語る通りに本作のシューティングゲームとしての方向性は攻撃重視。それも超が付くほどで、「攻撃は最大の防御」を地で行くような体験が詰まった作品に完成されている。

基本的な作りは王道のステージクリア型で、縦スクロールのシューティングゲームだが、戦術面はとてつもなく激しい。別の言い方で言うなれば、画面も演出も音も全てが(良い意味で)うるさくてたまらないシューティングと言ってもいいほどだ。

最終決戦!大爆発!映像の暴力!そして、易しさとマゾ!?

その特徴の通りに本作の秀逸な部分、魅力は”うるさいこと”だ。あくまでも筆者個人の主観になるが、こんなに最初から最後までうるさいシューティングは初めてかも……となるほど、圧倒される仕上がりになっている。

ある種、映像の暴力といってもいい。

実際、映像全般の迫力は桁違い。雑魚敵は大群を成してプレイヤーをへと襲い掛かってくる上、それを最強の力を用いて振り払うだけに爆発に次ぐ爆発が質感申し分ない効果音を鳴り響かせながら巻き起こる。

敵の弾もその大群に相応しい量が画面の8割近くを覆い、各々の特徴に関連付いたエフェクトが描写。そして、被弾しないように画面全体に影響を及ぼす(方向調整が必要だが)「太陽剣」でズバッと斬れば、敵も巻き込んでこれまた爆発に次ぐ爆発。

ステージが進めば手ごわい中ボスが現れ、ド派手な攻撃を展開したのち、倒せば相応に大爆発を起こして画面全体を爆風が覆う。それを乗り越えた後に現れる大ボスは中ボス以上に派手なエフェクト全開の攻撃を展開しては、拡大・縮小の演出も駆使しながらこちらに”圧”をかけつつ暴れ回り、「太陽剣」による攻撃を仕掛けるプレイヤー側と火花を散らせる。それを終えた後には相応の大爆発を起こし、ようやく一段落……と思ったら、新たな戦いが始まって以下の繰り返しだ。

単刀直入に言って「やかましい!」。しかも、序盤のプロローグからしてこの調子。静かで穏やかなひと時、というものが存在しない。最初から最後までこのノリなのである。それなので、うるさくてたまらないし、その模様を見ているだけでも退屈しない。人によっては、テンションがアゲアゲな状態になる。

シューティングゲームと言えば1に爆発、2に爆発、3と4が飛んで5に大爆発……という具合に、派手な演出に心ときめいてしまうプレイヤーなら、本作がいかに垂涎モノの作りをしているのかは言うまでもない話だ。本当に全ステージが最終決戦、と言わんばかりのテンションで展開し、相応の演出が画面全体を暴力的な勢いで覆い尽くすので、爽快感も高揚感も並外れている。何かスカッとできるゲームを求めているという欲求にも存分に応えてくれるので、そのようなものが好きならば、直ちに遊んで欲しいほどだ。

また本作は(意外にも?)シューティングゲームとしての難易度は易しめ。見た目、派手すぎることから難しそうに見えるかもしれないが、そうでもない。そもそも自機が「最強」だ。敵弾を「太陽剣」でかき消したり、避けるテクニックも要求され、「太陽剣」特有の体力を削る仕様にも気を向ける必要こそあるが、基本的には直感の赴くがまま力を振るえば、難なくステージクリアへと辿り着ける。

それに「太陽剣」のみならず、体力を消耗しない「ノーマルショット」もある。なので常に体力を消耗し続ける訳でもない。そのような力をどれだけ駆使するか否かは全てプレイヤーの判断次第。要は「勝てばよかろう」なのだ。

逆に易しいとなると、手練れなプレイヤーには物足りない作りなのかと言われれば違う。ハイスコアを狙うプレイを実践すると、ギリギリの攻防が連続する緊張感抜群のシューティングゲームへと化ける。

本作には体力を極限ギリギリまで追い込むことで、スコア倍率が増えるという仕掛けがあり、より高いスコアを目指すなら「太陽剣」を駆使するなりして常に自らを追い込み続けることが求められるのだ。言い方を変えれば、M(マゾ)な戦術に寄れば寄るほどドMなシューティングゲームになる。リスクに次ぐリスクを負い続け、莫大なリターンを得るという極上の快感を味わう中毒性抜群の戦いが楽しめるのだ。

そのような2面性があるのも本作の大きな魅力。並行して普通に遊んだ時には気付かないシステムの存在が明らかになるなど、見える世界が一変する体験も味わえるようになっている。なので、まず最初に遊んで「凄いけど何か物足りない……」みたいな思いを持ったのなら、自らを追い込みまくるこのスタイルで遊び直してみることをお薦めしたい。「最強」の名に相応しいスリルを味わうはずだ。

同時にM(マゾ)の真理を学ぶと同時に、性癖がそっちに寄る……かどうかは人それぞれ。そう、本作はもぐらゲームスお久しぶりのマゾ(M)な人におすすめできるゲームでもあるのだ。

もし、アナタが己を追い込む行為に快感を覚える真正も真正なマゾならば、『GRAND CROSS: ReNOVATION』はイチオシの縦スクロールシューティングゲームだ。
極上にして最強のヒリヒリ最終決戦をお約束する。

念のためだが、あくまでもこれはプレイスタイルのひとつ。クリア目的なら、そこまで己を追い込む必要はないので、安心していただきたい。難易度的にはシューティングをそれほど遊ばない人もクリアへと到達できるバランスだ。

ただ、そこからMの道へと足を踏み入れるかどうかは……これ以上は止めておこう。

普段シューティングゲームを遊ばない人にも強く推せる珠玉の1本

難易度に関してはもうひとつ見所があって、選択機能がない。ひとつの難易度に絞っていて、易しくするか否かは全て「太陽剣」という最強の力の使い方次第にかかってくる。難しさを制御するのはプレイヤーの考え方次第、とも言える手法で、ゲームの特徴に適したまとめ方になっているのにはなかなか唸らされるものがある。

また、本編のボリュームも1周およそ35分~40分程度と、気軽に楽しめる物量。物足りなく感じたプレイヤーに向けた一発勝負型の特別モード「BOSS RUSH」、前述の身を削るスコアアタックといったやり込み要素も網羅しているので、極めようとすれば末永く遊べるだろう。他にステージも「外部装甲」なるオプションと合体し、火力の高さを活かして暴れ回れたり、ボスに次ぐボス戦が連続する、怒涛の長期戦になるなど、工夫を凝らした構成になっているほか、演出的にも圧倒させられるような映像が展開されたりと退屈することがない。それぞれで描かれるストーリーも最終決戦感ほとばしる怒涛の展開の連続で、(いい意味で)呆気にとられ続けること請け合いだ。

ただ、最後の締め括りは人によっては消化不良に感じるかもしれない。
また、「太陽剣」を始め、各種システムはゲームプレイと並行して解説が挿入される反面、スコアアタックに関係する要素についてはほぼなく、プレイしながら確かめざるを得ないのは少々突き放し気味な感が否めない。


▲このままAボタンを押してしまうと、1文字しか入力していない時でも決定(承認)されてしまう。

他に気になったのがゲーム開始前、プレイヤーの名前を入力する画面。1文字ずつ確定させながら選んで決めていくのではなく、全文字を入力し終えた後に決定する仕組みで、1文字確定と間違え、名前自体を確定させてしまう操作ミスが誘発されやすい。実際に筆者は誤認してしまい、1文字入力しただけの状態でゲームを始めることになった。

後から直したくてもゲーム側からの再設定もできず、結果的に全ゲームデータ削除後の再インストールでやり直したのだが、これもできることなら、ゲーム側で再設定ができる作りにしてくれればと思ってしまった。

そのようなゲーム本編以外の部分に若干、不便に感じる箇所があるが、逆を言えばそれ以外の完成度は非常に高い。何より「最強」の2文字をこれ以上なく思い知らされるゲームプレイと、うるさいにも程がある映像は唯一無二だ。
難易度も遊び方次第で易しくも、難しくもできる良心的なバランスで、シューティングゲームを普段遊ばない人にも推せる仕上がり。申し分ない良作だ。

製品版とは別に無料の体験版も配信されているので、気になる方はまずそちらで体験し、合うか合わないかを確かめてみることを推奨する。

これは行けそう、そして「ナイス爆発!」な思いになったら……最強の力を存分に振るえ!

[基本情報]
タイトル:『GRAND CROSS: ReNOVATION』
発売・開発元:ES4 / Eternal Sphere 4、Henteko Doujin
クリア時間:40~50分
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):¥1,480

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