フリゲRPG『Hero and Daughter』がアップデートで完結。半年かけて深まったゲームデザインを紹介
2014年7月に公開以来、もぐらゲームスでも何度か紹介してきたtachi氏制作のフリゲRPG『Hero and Daughter』(以下、『HaD』)。1月24日のver2.0.0アップデートでついに本編が完結した。
レベル1に戻されて上がらなくなった主人公が、性格も見た目もスキルも様々な女の子を召喚し一緒に魔王を倒す旅にでる作品。魅力的な女の子たち、テンポが良くサクサク進みつつも強敵はやりごたえのある緩急のついたハクスラ風の戦闘が非常に特徴的なRPGだ。
レベル1の勇者がハーレムなメンバーと一緒に戦う『Hero and Daughter』をプレイしてハクスラについて考える
昨年秋に開催されたニコニコ自作ゲームフェス4でも、大賞を始めとする複数賞を受賞し、審査員であるドラクエなどの開発に携わった・中村光一氏に「一緒に仕事をしたい」と言わしめた作品だ。
そんな本作には頻繁にアップデートが行われている、という非常に大きな特徴がある。詳細は制作者のtachi氏のブログでご覧いただきたいが、バランス調整やバグ修正だけでなくキャラクターや新たなダンジョン、やりこみ要素の追加など1~2週間間隔でアップデートが行われ、2015年1月31日現在までに21回更新されている。その内容もコメント欄に寄せられたユーザーからの意見を取り入れていることも多く、まさにユーザーととともに進化してきたフリーゲームだ。
筆者がレビューを書いたver1.0.0当時と比べるとかなりの差が見られる。今回の記事では、『HaD』がどのように進化してきたのか注目すべきアップデートを振り返って紹介したい。
戦略性が求められる中盤以降
公開当初4つしかなかったメインシナリオのダンジョンは、計11ダンジョンに増加。舞台となる島も非常に小さかったが、拡張された。
1回目のメインシナリオの追加では、ラスボスだった魔王の娘を名乗るアルエが登場し、勇者は彼女のいる真・魔王城を目指す。追加されたダンジョンの難易度は高く、雑魚敵すらそれまでとは比べ物にならないくらい強くなった。装備の種類も一気に増えることになり、ボリュームは倍増。
2回目の追加では、2体目のラスボス(?)を倒したはずの勇者の前に、全ての元凶であるあのキャラが現れ……。主人公は最後の魔王を倒す旅に出る。やりこみ要素が目立つ本作ではあるが、ストーリーが完結し、ついに感動のエンディングを迎えることができる。
なお、中盤以降では、戦闘に戦略性が必要になる。敵の強さが格段に上がるため、よく考えながら戦闘をこなしていかなければいけないのだ。各キャラのスキルをうまく使い、敵の行動を封じたり、バフ(強化)、デバフ(弱体化)を上手く使いこなしながら戦っていかないと、ボスだけでなく、雑魚敵に全滅させられる展開もある。
やり込みにやり込みを重ねさせる2つの高難度ダンジョン
本編とは別に、高難度ダンジョンが2つ実装されている。
1つ目が「チャレンジタワー」。1人目の魔王を倒すと行けるようになる。通常のダンジョンと異なり、タワー内での戦闘、宝箱を開ける、などのあらゆる行動に応じてCPというポイントがたまっていき、交換することで強力な装備・アイテムが手に入るという仕様。(足手まといになりがちな)レベル1の主人公は参加できず、女の子4人パーティで戦えるのでサクサクとテンポよく進み戦闘で連続で勝つことで経験値を得られるため、経験値稼ぎにもなる。一方で、100階以上も存在するという非常にボリュームのあるダンジョンになっているため、上層はやりこんだ人向けの難易度になっている。次からは10階ごとに飛んでこれるようになっている親切設計。
もう一つは「魔物の巣窟」だ。一部の階層は推奨レベル400以上という、まさにこのゲームをやり込みまくった人向けの高難易度ダンジョンが追加。メインシナリオのダンジョンはマップがランダムだったが、こちらは固定。作者のtachi氏が描いた絵を集めていくことができ、アップデートの度にフロアが追加されていく予定とのこと。
増え続けるキャラと愛着の湧くシステム
もう一つ、注目したいのがこちらの新キャラの追加だ。当初は19名だった女の子たちも現在では33名へ。アップデートの度に新キャラが追加されていると言っても過言ではない。
例えば、「赤の魔女」は制作者のtachi氏の過去作品に登場するキャラクター。他にも数多くの過去キャラを登場させており、過去キャラ同士のかけ合いがあるなど、tachi氏の自分が作ったキャラへの愛を感じる。
本作のキャラクターは、召喚されて一緒に戦うだけの存在ではない。キャラ同士の掛け合いや好感度システムで好感度が上がると特殊な会話が発生するなど、イベントが豊富に用意されており、キャラの個性がしっかりと際立つようになっている。
また、スキルは各キャラに固有、かつステータスの傾向も異なっている上に、強さのバランスが良くとれている。ゲームでただパーティの一員として戦うだけでなく、数多く実装された会話イベントや戦闘を通じて、キャラの個性が引き立ち、お気に入りのキャラへの愛着がさらに湧くゲームシステムになっている。
昨年末には制作者tachi氏の主催で、登場するキャラの人気投票が行われた。結果はこちら。さらに人気投票の結果をキャラに伝えて、その反応が見られるアップデートも行われている。
拠点となる村の拡張
冒険の拠点になる「村」には村レベルが設定されている。勇者がダンジョンに向かっている最中に、パーティに入れていない女の子たちが働いたり、襲ってくる敵を撃退したりすることで村に経験値が入る仕組みだ。レベルが上がると、村で売っているアイテムや装備、魔法書のラインナップが豊富になる。このアップデートでは、村レベルの上限が開放され、高レベルで売られる上位魔法の追加や、村レベルをあげるための「村経験値」が溜まりにくいという点を改善すべく、村の施設を利用しても経験値が溜まっていくシステムが追加された。
また様々な機能を持つ施設が追加された。例えば、「異界屋」。ダンジョン内に点在している強敵「賞金首」はそれぞれユニークな戦い方を仕掛けてくる。ダンジョンの攻略当初は倒せないくらい強いものも多く、何度もダンジョンにもぐりながら、レベルが相当上がった後に倒すことになる。その賞金首たちと再度戦える「異界屋」が村にあり、倒すとポイントを手に入れて強力なアイテムと交換できる。強敵との熱い闘いを再び味わえるというわけだ。
もう一つ追加された施設『モンスターハウス』を紹介しよう。ここでは、各ダンジョンに出現するようになった特殊モンスターを倒すとモンスターが飼えるようになり、娘の経験値などをモンスターに渡すことができる。普通にプレイしている限りは使わない機能だが、自分のパーティの強さを敢えて下げることで、縛りプレイなどの高難度のプレイを楽しみやすくなった。非常にユニークな仕様だ。
半年を経て深化したゲームシステム
ここまで、注目すべきアップデートを紹介してきたが、こうしたアップデートを通してゲーム全体のプレイ感がどう変化したかを述べておきたい。
最も特徴的なのは、難易度の幅広さだ。
高難度ダンジョンや新たな敵の追加などによって、難易度の上限は格段に上がり、かなり高レベルまで上げたプレイヤーでも満足できる仕様になったといえる。一方、単に難易度を上げていっただけではなく、上で紹介したおまけ要素である「チャレンジタワー」は、非常に簡単な階層から、高難易度まで幅広く設定されており、どの段階のプレイヤーでも楽しめるようになっている。また、モンスターハウスでのレベルダウンや公開当初から多数入手できるステータスアップアイテムを使うことで自分のキャラクターの強弱をある程度調整できるカスタマイズ性も醍醐味の一つになっている。
このように、オンラインゲームの運営も顔負けのアップデートで、シナリオクリアまでにかかるプレイ時間も当初の5時間もかからないところから10時間以上はかかる大作RPGに仕上がった。
未プレイの人も、しばらくプレイしていない人も、アップデートでさらに洗練された『Hero and Daughter』をぜひ一度遊んでみてほしい。
[基本情報]
タイトル Hero and Daughter
制作者 tachi
クリア時間 本編10時間以上
対応OS win (RPGツクールVX Ace RTPが必要)
価格 フリーソフト
ダウンロードはこちらから
ふりーむ!→http://www.freem.ne.jp/win/game/7195