SMILE GAME BUILDERで楽しむゲーム制作 第9回:坂本昌一郎『たそがれのひ』③
※本記事は、1月7日より開始した「SMILE GAME BUILDER」制作実演の連載です。
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坂本昌一郎『たそがれのひ』制作連載 1 / 2
こんにちは! 「たそがれのひ」を制作しました、坂本昌一郎です。
前回までを振り返って
連載第一回ではゲームの公開と内容の紹介、第二回ではシナリオの作り方とカメラ演出について詳しく説明しました。作品のテーマは、「冒険」「プレイヤーごとに体験が変わる」「バッドエンド」。すべては最期に起きる悲劇を描くため、モブキャライベントひとつとっても仲間が会話し、プレイヤーに問いかけ、さりげなく伏線を散りばめ、2つのルート分岐を作り、たくさんの選択肢を用意することでプレイヤーがロールプレイできる。そんなゲームを目指しました。
今回はシステム的な工夫の解説と総まとめを行いますので、最後までどうぞよろしくお願いします。(以降、大きなネタバレを含みますのでご注意ください)
システム紹介
「たそがれのひ」の主なシステムから、工夫7点とその作り方を紹介します。
(1)ワープゾーン(イドの井戸)
大きな世界を探索するゲームなので、移動がおっくうになりがち。そのため、井戸を調べると専用のワープゾーンが開通する、フィールドを行き来するための世界「イドの井戸」を用意しました。これはフラグを立てて行き来できるようにするだけで、とても簡単な構造です。
(2)フィールドシンボルエンカウント
「SMILE GAME BUILDER」では限られた区間でエンカウントする敵を変えられないため、あえて固定シンボルエンカウントをあちこちに配置し、任意で戦えるという仕組みにしました。同じイベントをたくさん用意するとあとあとの修正が大変ですから、エンカウントパターン用スイッチを入れて自動イベントを呼び出す仕様に。
処理内容は、エンカウントエフェクトを表示後、変数ボックスに0~100の値をランダム代入。代入された値を参照して戦う敵グループを決定し、最後に同様の仕組みで戦闘後に入手するアイテム決定される……というもの。
(3)ランダム宝箱
フィールドにはランダム宝箱(ゲーム中では遺物と呼称)を隠してありますが、管理を容易にするためにスイッチを使って宝箱イベントを呼び出すことで実現しました。処理はエンカウントとほぼ同じ。この仕様でプレイヤー毎に手に入るアイテムが変わるので、プレイごとに遊び方も変わるでしょう。
(4)マップ毎の固定カメラ演出
「SMILE GAME BUILDER」は主人公がいる位置によって固定カメラを切り替える仕組みが搭載されてませんので、自作しました。まず、マップに来た瞬間に起動する自動イベントで固定カメラを設定します。その後、マップでカメラを切り替えたい位置にイベントを配置して切り替え。ここでカメラ状態を指定しないと、セーブ&ロードでカメラが元に戻ってしまいます。そのため、初期起動自動イベントにカメラ状態を見る仕組みも用意することで実現しました。
(5)戦闘バランス
せっかくのRPGですから、戦闘もガッツリ作りたいですよね。今回は戦闘バランスを取りやすくするためレベルを考慮せず、装備を集めて工夫すれば勝てる仕様にしました。具体的には「敵ランク」と「装備ランク」を対応させることで、敵ランクに合う装備さえ持ってれば倒せるように調整しています。
敵を倒すと確率でランク対応装備をドロップすることで、「敵を倒せば強くなる」と表現できます。ちなみにレベルアップで上昇するのはHPとSPのみですが、これは「全滅するまでにかかるターン数が増える」ことに繋がりますので、完全にレベルの意味がないというわけではありません。
(6)おまけダンジョン
やっぱりRPGを作るなら、思いっきり敵とドンパチしつつお宝を探してダンジョン深層へ潜るパートも作りたいと思い、ストーリーとは別個に遊べる「たそがれの迷宮(砂漠の遺跡)」を用意しました。全16階層の長大な高難度ダンジョンです。
ここでは最大6体の敵とランダムエンカウント、強敵とのシンボルエンカウント、複雑な迷路を乗り越えつつ、各地に配置された宝箱を探し、パーティを強化しながら4体の大ボス・4体の超強力な隠しボスを撃破して貴重なお宝を手に入れながら、最深層を目指すことになります。
シナリオ進行上、パーティ2名もしくは3名の状態で挑めますので、ぜひ腕に覚えがある方は2名(セロ・ヴィオラのみ)で挑戦してみてください。きっとスリル満点のハック&スラッシュが楽しめるでしょう。
(7)モンスターの行動パターン
戦闘中、敵キャラはランダム行動のほか、行動ターン数を指定することで確実に指定行動を行わせることが可能です。HPやSPも条件に加えられますので、組み合わせると「HP49%未満のときに行動パターンが変わる」などの行動が作れます。これはボス戦でとても役に立ちますから、ぜひ使ってみてください。
制作を終えて
紹介したいことはまだまだ山ほどありますが、このへんにして制作を終えての感想を。
RPGを完成させたのは実は初めてでして、今回はとても良い経験になりました。フィールドシンボルエンカウントや、ランダム宝箱などの変わった仕組みを取り入れつつ、シナリオもルート分岐を用意した上、別個に遊べるダンジョンもありますので、実質的に3本の短編RPGを作ったような気持ちです。制作時間は約600時間。
知人にテストプレイして貰った際は、とにかくフィールド探索の自由度が高いゲームなので、どのイベントがフラグになってるかわからない等の指摘がありました。なので、必須イベントは必ず通過するよう誘導するなどの修正を細かく行ったのが大きな変更点でしょうか。
本来はもう一人の仲間として、「お鈴(りん)」というキャラがいたのですが、キャラを描ききることができずに削ったのが心残り。セロ(Cello)、ヴィオラ(Viola)、トラバス(Contrabass)、お鈴(Violin)と、弦楽器でパーティの名前を揃えたかったのですが……。
シナリオ部分も、なるべく状況説明を嫌味にならない程度に入れたり、ルート別に相互補完するよう工夫しました。例えば、オープニングイベントで登場するレベックとシターンがその後どうなったのか……など。気付きましたか?
とくにシナリオは完成させると物語を俯瞰で眺めて全体バランスを取れるようになることに気付き、起承転結、序破急とはなんなのか――構成というものの一端に触れられた気持ちでいます。
また、「SMILE GAME BUILDER」で一番楽しかったのはカメラ演出です。カメラひとつでゲーム画面の印象が大きく変わる。これが面白くて、イベント毎にひとつひとつ、丁寧に手付けでカメラを動かしました。
ゲームを自分で実際に作ると、既製品に触れたときにより大きな感動を得られるようになります。今回はカメラ演出とシナリオ構成という視点が増えました。シナリオ、システム、画面デザイン、カメラ演出、キャラ演技、音声、音楽、効果音――まだまだありますが、こうしてより感動できる要素が増えると、ゲームの楽しさがどんどん倍増していきます。ちょっとした短編でも構いませんので、私の連載を通して「SMILE GAME BUILDER」に興味を持ち、かつゲームを作る楽しみに触れるきっかけになればそれ以上の喜びはありません。
ゲーム制作はすごく楽しい! これを読んだあなたも是非ゲームを作って、その感動に触れてみてくださいね。
おまけ
ここまで読んでくださったあなたに隠し要素をプレゼント。町の学校から右へ回り込んだところにある、階段を上がった奥にある木を10回調べてみてください。便利なアイテムがきっと見つかることでしょう。お読み頂き、ありがとうございました!