人生を充実させる、世紀末悪党”お掃除”アクション『HUNTDOWN』全ては賞金と島本のために!
大言壮語が過ぎる見出しを失礼つかまつる。
だが、これは(意外にも)公式の売り文句なのだ。
詳細は上記のゴキゲンな紹介映像をご覧いただければと思う。
だが、これより紹介する『HUNTDOWN(ハントダウン)』は、その売り文句に恥じぬ傑作。実際に横スクロール型アクションゲーム好きの心と人生を充実させる、沢山の魅力が詰まった逸品である。
本作は2020年5月、海外先行でNintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、Windows PC向けに発売。日本国内ではWindows PC版とXbox One版が同時期に発売された(※前者はEpic Gamesストアのみ)。翌2021年3月には、Nintendo Switch版がマイニンテンドーストア(ニンテンドーeショップ)にて販売開始。PlayStation 4版は執筆時点で未発売となっている。
また今後、Windows PC版はSteamでも発売予定だ。
乱立したギャング組織どもをHUNTDOWN(追い詰めろ)
時は21世紀。大規模な戦争によって国家は崩壊した。
そして、その廃墟より欲望に満ちた社会が誕生する。
新たな社会では不当な利益を得る巨大企業が台頭し、その規則に従う者たちに限り市民権が与えられた。それ以外の者たちは、犯罪に手を染める以外の選択肢は残されず。しかし、それが元でギャング組織が乱立する事態を招き、やがては警察も手に負えないほどの脅威になってしまった。
巨大企業「島本(SHIMAMOTO)」は平和と秩序のため、市民権にも犯罪にも興味を持たず、ただ賞金のためだけに戦うバウンティーハンター(賞金稼ぎ、以下ハンター)たちにギャングの打倒を依頼。
かくして、彼らを追い詰める(HUNTDOWN)時間が始まりを告げる。
あらすじからして世紀末臭がすぎる本作のジャンルは前述の通り。横スクロールのステージクリア型アクションゲームだ。ハンターたちを操作し、襲い来る悪党たちを銃火器で”お掃除”しながら、各地を占拠する組織の壊滅に挑む。
ハンターは以下、3名の中から1人をゲームスタート時に選択。いずれも移動速度を始めとする身体的な特徴は共通だが、初期装備の銃火器、投てき型の武器が異なる特徴を持つ。
アナ・コンダ
標的の抹殺に悦び(ハイ・セレブレーション)を感じる元特殊部隊員の女性。年齢32歳。初期装備は単発3連射のハンドガン、放物線を描くハンドアックス。
ジョン・ソーヤー
法律(ギルティ)なんぞ知ったことかのサイボーグ警察官(ダイ・ハーデスト)。年齢148歳。血液型AK-47(との噂)。
初期装備は連射力に劣るも、1発の威力高めのスコープ付きハンドガンとブーメラン。
モウ・マン
”死神”の呼び名を持つ7歳の対人天誅殺戦偶(マーダーボット)。
初期装備は圧倒的な連射力を誇るハンドガン、殺傷力高めのNINJAなクナイ。
なお、選ばなかったハンターは後からポーズメニュー画面にて切り替えられる。ただ、切り替えると現在攻略中のステージの進行状況がリセット。最初からやり直しになるので注意。主に今のハンターだと苦しい、と感じた際に実施するのがおすすめだ。
このいずれかのハンターを選ぶと本編開始。基本的にエリアごとに用意されたステージを順に攻略していく。それぞれのクリア条件は単純明快。各ステージのターゲットこと、最後に待ち受けるボスを”HUNTDOWN”。要はぶっ殺すだけである。
ステージの構成も基本、襲い来る悪党たちに鉛弾をプレゼントして昇天させていく、アクションゲームの王道に準じたもの。ただ、いわゆる「ラン&ガン」(参考記事)ではない。銃火器で戦うスタイルからそれが想像されるが、初期装備以外の銃火器には弾数制限があり、無限に撃ち続けられない。悪党たちこと、雑魚敵の耐久力も若干高め。加えて、彼らも銃火器で応戦してくるため、走りながら撃って突貫するやり方だとかえって甚大な被害(という名の大ダメージ)を受けてしまう。
このため、戦闘では彼らとの距離を取りつつ、時には遮へい物の影を利用して銃撃を防いで迎撃していくのが基本。いわゆるファーストパーソンシューター(FPS)、サードパーソンシューター(TPS)の立ち回りが試される横スクロールアクションゲームになっているのだ。それらの2つを3Dから2Dにした感じの作りとも言える。
一応、初期装備のハンドガンは無限に撃てる点は「ラン&ガン」らしいが、マシンガンのような連射はできないため、触り心地は似て非なる。ある意味、本来の銃火器の仕組みなどを用い、仕上げた横スクロールアクションゲームなのである。
現に銃火器類の使い勝手を除けば、核となる遊びそのものは驚くほど王道。ボスを倒すという名のゴールを目指し、ステージを駆け抜けることに終始する、安定感と安心感に満ちあふれる内容になっている。
見た目は世紀末でヒャッハーだが、もの凄く親しみやすい。
横スクロールアクションとして盤石すぎる完成度に唸れ!
そして、その親しみやすさと横スクロールアクションとしての盤石の出来栄えが本作の魅力だ。
厳密にはゲームバランスが素晴らしい。全編(ステージ、ボス戦を含め)、易しすぎず難しすぎずの絶妙な調整でまとめられている。最もその良さが現れているのが悪党(雑魚敵)たちとの戦闘だ。近接攻撃タイプ、遠距離攻撃タイプが適度な数と比率で出現しては襲い掛かってくるため、こちらが取る立ち回りが単調になりにくい。
さらにテンポが落ちない。遮へい物の影を利用して銃撃を防ぐ、いわゆる「カバーアクション」と言えば、その場に留まり、相手がやられるまで前に出ないのが基本となる。要はステージの進行を止めるアクションな訳だが、本作は流れが滞ることのないよう、その手のタイプとの戦闘場面を控え目にしている。
さらにグレネード(手りゅう弾)、接近時のみ発動するふっ飛ばし効果のある近接攻撃など、身を隠す相手に致命傷を与えたり、さらけ出す武器、攻撃手段も用意。意外に楽々と早期決着が付けられるようになっているのだ。
また前述の通り、敵の耐久力は若干高めなのだが、”若干”というのがミソ。何十発も撃ち込まないと倒せないほどでないほか、威力の高い武器なら一撃必殺も可能な程度に落ち着かせているのである。なので、一向に倒せなくてストレスを抱くこともなし。
それでいて、窮地に陥りにくい。本作はライフが空になるとやられるダメージ制を採用しているのだが、回復アイテムが手に入りやすい。敵が倒される度によく落とすのだ。そのため、無理に力押しで突撃してしまって、ライフが空寸前にまで減ったとしても、意外に後の展開を挽回しやすい。多少、運(確率)に左右されもするが、九死に一生を得ることが割と多いのだ。なので、実は突撃も状況によっては使い道あり。もちろん、無計画に突っ込めば地獄行きだが、加減を踏まえて動けば効果的な一手になる。
こんな具合に細かい部分の調整が凄く絶妙。職人芸の域と言っても過言ではないほど、バランスの取れた仕上がりになっている。しかも、これに限らない。各ステージの構成、ボス戦、銃火器別の性能なども丁寧に作り込まれている。
中でもボス戦はストーリー設定も踏まえ、大半の相手は人間なのだが、いずれも個性豊かな攻撃パターンと意表を突いた仕掛けの数々で楽しませてくれる。
驚くべきはステージ総数に合致した計20体のボスが居ながら、使い回しの個体が皆無なこと。人間縛りだとネタに限界があるのでは、との心配を吹き飛ばすほど、個性的なボスたちとの戦いが楽しめるのだ。中には人間縛りの設定を無視したタイプもいるのだが、それもマーダーボットが居るような世界観なら仕方がないと思わせてくれる納得感の高さ。隙が無い。アクションゲームはボス戦の面白さが重要と考える人なら、本作の仕上がりには大満足を通り越して感動すら覚えること間違いなし。まさに丁寧な作り込みの極致を見るだろう。
他にステージも驚くほど仕掛けに富んでいるほか、後半に行く度に新種の敵が登場するのもあって刺激に欠けない。銃火器の性能も突き抜けて強力なものもなければ、初期装備も十分戦える程度に弱くなく、ストレスを感じさせない調整が光る。
FPSやTPS由来の要素を除けば、アクションゲームとしては本当に王道である。だが、それゆえに基礎部分の作り込みが盤石。横スクロールアクションゲームの勘所を押さえた内容に完成されている。操作性も抜群で、キビキビ動く。Nintendo Switch版限定だが、銃火器を放つたびに重みのある振動が伝わってくる仕掛けがあるのも秀逸だ。
これらの魅力が遊んでみないと分からないのがもどかしい所。その点では、アクションゲームらしい伝わりにくさがあるのだが、あえて言い切ろう。本作は盤石な出来の横スクロールアクションゲームであることを。ヒャッハーな世界観とは裏腹の丁寧な仕事が炸裂している仕上がりである、と。騙されたと思って触れてみて欲しい。最初のステージ開始の瞬間、その意味を思い知らされるはずだ。
情けは必要ない。悪党たちを狩り尽くし、人生を充実させよう。
「でも自分、アクションゲームは苦手なんだよな……」という人もご安心あれ。「イージー」から絶望感溢れる「スゴ腕」の4種類の難易度が用意されているので、腕前に応じた遊び方が可能だ。
さらに本作は出血・暴力表現が苛烈なのだが、これも設定機能を実装。血をほとんど出なくするのも可能で、その手の表現が苦手、嫌いな人もフォローしている。なので、面白そうだけど過激そうなのが……という方はぜひ、こちらをいじっていただきたい。さすれば、あまり表現面を気にすることなく、盤石の完成度に満ちた本編を堪能できるはずだ。
ボリュームもエンディングまで大よそ5~6時間、ノーミスクリアや隠された現金入りアタッシュケースの発見などのやり込み・収集要素もあって申し分なし。重厚なドット絵で表現されたグラフィックもむせ返るほどの出来。音楽も1980年代のサイバーパンク映画を意識した作風の楽曲が多く、雰囲気を大いに引き立てる。直撃世代なら、思わず顔が緩んでしまうかもしれない。
一部のテキストが途切れていたり、会話の流れが分かりにくくなっているなど、日本語のローカライズと翻訳にはやや難がある。また、後半に登場するロケットベルトを背負った敵は、倒した後の暴走からの墜落位置の推測がしにくく、意図しないダメージを受けやすくなっているのが気になるところ(※暴走時と墜落時の爆発にはダメージ判定がある)。他にボス戦だけを楽しめる、「ボスラッシュモード」がないのも惜しい限りだ。
だが、いずれも些細なもの。横スクロールアクションゲームとしての完成度は指折りどころか、2020~2021年に発売された同ジャンル作品の中でも余裕で3本の指に入る傑作中の傑作と言える。もし、アクションゲームが好きで本作をまだプレイしていないのなら、言うことはただひとつだ。可及的速やかに遊ぶべし!
これは、アクションゲーム好きならば見逃すことは決して許されない逸品だ。サイバーパンク好きにもおすすめできるので、映像に惹かれた場合もぜひ。
サイバーパンク好きなら、これと一緒に2021年3月、Nintendo Switch版が発売された見下ろし型アクションゲーム『アカネ』を付け加えれば、さらなる”HUNTDOWN”を満喫できる。価格もお手頃なので、過度に財布を痛める心配もなし。この「人生充実(アメイジング)サイパンセット」で、あらゆる悪党を追い詰めては狩って狩って狩りまくり、人生を充実させよう。
[基本情報]
タイトル:『HUNTDOWN(ハントダウン)』
発売・開発元:Coffee Stain Publishing / Easy Trigger Games
クリア時間:4~5時間
対応プラットフォーム:Nintendo Switch、Xbox One、Xbox Series X|S、PC(Windows)、PlayStation 4/5(※海外のみ)
価格(税込):¥1,999(Nintendo Switch)、¥2,350(Xbox)、¥2,080(PC)
備考:16歳以上対象(※激しい暴力・出血表現あり)
購入はこちら
※Nintendo Switch版
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000037029.html
※Xbox One / Xbox Series X|S版
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/huntdown/9msr27kf1q22
※PC(Windows)版(Epic Gamesストア)
https://www.epicgames.com/store/ja/p/huntdown