“女性野球選手VSエイリアン” 地球存亡をかけた壮絶なる死闘がここに!?ご意見無用・突っ込み上等の破天荒アクション『Aliens Go Home Run』
圧倒的な点差からの大逆転に激しい延長戦、通算68本塁打という新記録が叩き出されるなど、夏の風物詩である甲子園は、今年も熱狂の末に幕を下ろした。そんな甲子園から半年以上も前、ある女性の野球選手が地球存亡をかけた戦いに身を投じていたのをご存じだろうか。今回紹介するのは、そんな女性野球選手の死闘の軌跡を綴った『Aliens Go Home Run』である。
全ての始まりは、ある快晴の日。
街外れのグラウンドで、女性野球チームの試合が行われていた。
ピッチャー、勢いよく投げた!
バッター、クリーンヒット!
素晴らしい当たりだ!
伸びる、伸びる、伸びるーッ!
これはホームラン間違いなし!
……って、ボールが大気圏を突き抜けたぞ!
どこまで伸びるぅーーッ!?
「!?」
「んほーーーーー!!」
「おどりゃ、地球人ッ!!!
こっちがのんのん過ごしてる所に奇襲たあ、
上等じゃねえか、オラァッ!」
「てめえら全員、整理してやらぁーーッ!」
……ということで、エイリアンの軍勢が宇宙より襲来。
試合どころではなくなり、地球存亡の危機が訪れた。
そして、この事態にホームランを放った女性選手はバットとボール片手に迫りくるエイリアン軍に単身立ち向かう。自らのせきに…じゃない!地球を守る為に!
かくして2017年1月28日、配給Steam、スポンサー「ANIM・ACE(インディーデベロッパー)」の提供による、野球選手とエイリアンの壮絶な死闘の幕が開いたのである。
バットとボールでエイリアン…ではなく、ブロックをぶっ壊せ!
そんな訳で、地球外ホームランを引き金に侵略してきたエイリアン達を母星に「Go Home」させるべく、女性の野球選手となって戦うアクションゲームというのが本作の大まかな内容だ。
「野球」の単語から、スポーツゲームを連想したかもしれないが、そんなものではない。そもそも、エイリアン達は地球人の奇襲に憤慨し、侵略してきたのだ。9イニングに渡る試合を正々堂々行おうとするスポーツマンシップの精神など、欠片も持ち合わせていない。彼らは生存の為、良心や後悔などに影響されない究極生物なのだ。よって、我々地球人はあらゆる手を尽くし、母なる大地・広い世界の私達の地球(ほし)を守るべく、インディペンデント精神で立ち上がらなければならない。
それでは、どのようにしてエイリアンと戦っていくかを解説していこう。
武器は木製バットとボールだ。これを手にした選手をキーボード、或いはゲームパッドで動かす。そして、バットでボールを打ち飛ばし、上空に浮かぶブロックを壊していく。
壊している最中には、エイリアン達が選手を消し炭にするべく攻撃を仕掛けてくる。彼らの攻撃を浴びてしまうとダメージとなり、三回喰らってしまうとゲームオーバーだ。また、打ち飛ばしたボールが地面に落ちてもペナルティはない。なので、仮に打ち漏らしても、落下した場所から再度飛ばすことができる。我々はエイリアンとの地球存亡をかけた戦いに臨んでいるのであって、球遊びをしているのではない。なので、注視すべき対象はエイリアンただ一つ。ボールがどうなろうと気にする必要はないのだ。球は球でも、地”球”の方を気にするべし。
なお、ボールがエイリアンに命中するとダメージを与えられ、一時的に彼らの動きを止めることができる。何回かボールを当てると、エイリアンは爆発四散。その場から退場する。
だが、退場してから数秒後、エイリアンは増援という形で復活する。彼らは地球人の奇襲攻撃に憤慨し、侵略してきた者達だ。例え一匹倒しても、その三十倍が補欠で控えているのである。よって、倒した所で訪れるのは一時の平和。彼らの攻撃はエンドレスサマーなのだ。
完全に黙らせる手はただ一つ、ブロックの全破壊である。理屈は分からないが、ブロックを全て破壊するとエイリアン達は連鎖的に爆発四散。そのまま脅威が消え去って、戦闘終了となるのだ。よって、我々地球人はこれを成し遂げる為にボールを打ってブロックを壊し、エイリアン達をまとめて「Home Run」で「Go Home」させる。その繰り返しに終始するのだ。
以上が戦いのあらましである。野球の要素が申し訳程度すぎると思ったかもしれないが、そういうものである。気にしてはいけない。何故、バットとボールの野球用品でブロック崩しをするのかも考えてはダメだ。テニスでも成り立つじゃないか、なんてのはもっと禁句である。仮にそんな事を口走れば、”しゅう”なんとかチャレンジという名の地獄の修練を体験することになるだろう。
ちなみに解説から漏れたが、戦闘中には壊したブロックから「アイテム」が落ちてくることがある。「アイテム」は一つ取る度にレベルアップし、最大四段階までその効果を変化させる。レベル1ならば「体力回復」、レベル2ならば「バリア」と言った具合だ。
エイリアンとの戦いは熾烈を極める。その困難を乗り切るのに当たり、アイテムは大きな助けになってくれる。特に最大のレベル4になれば、バットから最大30発の「バットビーム」を放てるようになり、より確実なブロックの破壊とエイリアンへの誅伐をこなせるようにもなる。
更にアイテムは戦闘終了時のレベルが次の戦いにも継承される。なので、エイリアンの攻撃が激しく、勝利できない時は前の戦闘へと立ち返り、そこでアイテムのレベルを「バットビーム」を撃てるレベル4にまで上げてから挑戦し直すということも可能だ。スポーツマンシップの精神に則らない究極生物に真っ向勝負する必要など無し。慈悲もいらない。そんな手段でも彼らを打倒できるなど、戦術の幅は広く、この戦いがエイリアンとの本気のぶつかり合いであることを地球人一人一人に思い知らせるのだ。行きすぎた広さになんの為の野球だ、ブロック崩しだと言いたくなるかもしれないが、地球存亡をかけた戦いなのだから仕方がない。
なので、厳しい時はフル活用してみることをお薦めする。
抵抗するか、侵略されるか
エイリアン達も三十倍の補欠が控えているに留まらず、種類も豊富と大変に侮り難い。上空を左右に動き、拡散弾を発射してくるタイプは序の口。戦いが進むにつれ、身体にまとわりついて一定時間動けなくするアメーバ、ブロックに紛れ込む形でその場に待機し、選手が真下を通過すると同時に落下してくるトラップ型、更には選手が動くフィールドに介入して遠距離攻撃を仕掛けてくる小人と言った特殊なエイリアンが参戦するようになっていく。
無論、倒すのにもボールを当てるのではなく、トラップ型なら、落ちてきた瞬間を狙って選手のアクションの一つ「スライディング」で蹴り込むなど、対処法もそれぞれ異なる。
基本的にこの戦いはエイリアンの攻撃を避けつつ、ブロックを破壊していく事に終始するが、実に色んなエイリアンが地球人の奇襲に激怒して参戦しているのか、地球人優勢の一方的な展開にはならない。その攻撃の激しさには、この戦いがどれほど深刻なぶつかり合いであるのかを痛感させられるだろう。
また、エイリアンにはボスタイプも存在。戦いを5つ乗り越える度に戦闘が挟まれる。その内容も相手の攻撃を回避しながら、隙を付いてボールによる攻撃を当てていく、普通の直接対決。目前の脅威を退けることに両者が火花を散らす展開となる。
更にボスも複数の種類が存在し、それぞれ攻撃パターンも多彩。火炎放射器を放ってにじり寄って来たり、プレイヤーを追尾するロケットパンチを撃ってきたりなど、エイリアンならではの血も涙もない攻撃で翻弄してくる。こちらが下せる手はボール、或いは「バットビーム」を当てるしかないので、力押しも一切効かず。まさに一進一退の攻防が繰り広げられる戦闘となるのである。
野球もブロック崩しも関係ない。もはやバットとボールはただの武器。それでいいのかと思ったかもしれないが、それでいいのだ。地球存亡をかけた戦いなのだから。
地球存亡をかけた戦いであることは、中盤を越えた後の展開でも思い知らされる。エイリアン達は追い込めば追い込むほど「数の暴力」という名の戦術へ転換していき、次第に一体倒した所で一時の平和すら訪れぬ、持久戦の様相が濃くなっていく。
終盤になれば、「抵抗するか、侵略されるか」の瀬戸際の連続。スコールの如く降り注ぐ弾幕を、実は発動中は無敵な「スライディング」で潜り抜けてボールを打ち返し、エイリアンを黙らせながらブロックを壊していく超人的行動を繰り返す、熾烈の極致となる。そこまで辿り着き、彼らとの戦いに直面すればきっとこう思うだろう。「野球とブロック崩し、どこ行った」…と。
しかし、そういうものなのだから仕方がないのだ。地球存亡をかけた戦いなんですから。
汝、野球選手VS究極生物の死闘の目撃者となれ。
戦闘(ステージ)総数も70以上と激怒したエイリアン達の気持ちを現すが如き多さ。また、一つの戦闘を終えるのにかかる時間は3~5分程度と短めで、物語らしい物語は冒頭でしか語られないので、スピーディに展開していく。
エイリアンを徹底的に狩り倒す、ハンター精神が覚醒した者へのフォローも万全。本編無関係の過激な戦闘が繰り広げられる「エキストラ」が用意されているほか、無事に彼らの親玉も「Home Run」で「Go Home」できれば、ボスエイリアンとの戦いだけに明け暮れるボスラッシュモードも解禁。気の済むまで、究極生物達との戦いに身を投じられる。
戦いはコリゴリだという者に向けた「レベルエディター」も搭載。
オリジナルのステージを作成できるほか、Steamワークショップへの投稿にも対応しており、世界中のプレイヤーに珍妙なものから、厳酷苛烈なものまでお披露目できる。もちろん、逆に他のプレイヤーが作成したステージをダウンロードして遊ぶのも可能。やり方次第では、延々とエイリアン達の「Go Home」に付き合わされることになるかもしれない。
野球が申し訳程度、何故にブロック崩し、エイリアン達って被害者じゃん、なんでボールが効くのか、「バットビーム」反則すぎ、中盤から終盤はただのアクションシューティングだ、そこでアメーバ登場しなくていいだろ、そもそも地球防衛軍どこ行った、という具合に掘れば掘るほどに突っ込み所が噴出するが、本作はそういうものなのだ。地球存亡の危機なのだから仕方がない。
ただ一つ言うと、難易度は高め。特に後半は先の通り、非常に激しく、精密な回避術が要求されてくるので、アクションゲーム、シューティングゲームが苦手なプレイヤーには安易にお薦めできないところがある。
逆にその手のジャンルが好きなプレイヤーなら、挑戦する価値のある一本である。アクションゲームとシューティングゲームをブロック崩しと絡め合わせた野心的なゲームデザイン、軽快な操作性、そして突っ込みが追いつかない設定を持つ本作。どことなく90年代のアーケードゲームを感じさせる懐かしさも秘めた、場外ホームランな面白さと手ごわさに満ちた怪作だ。前代未聞の野球選手VSエイリアンの壮絶なる死闘を見届けるべし。
なお、戦いに挑むに当たっては、彼らに侵略のきっかけを与えたのは我々地球人であることをお忘れなきよう。さすれば、親玉を「Home Run」で「Go Home」した時、エイリアンより恐ろしいのは地球人という真理が分かる…かどうかは十人十色だ。
[基本情報]
タイトル: 『Aliens Go Home Run』
制作者:ANIM•ACE
クリア時間: 3~4時間(※実績コンプリートを除く)
対応OS: PC(Windows)
価格: ¥398
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