兵庫発のインディーゲーム展示会!神戸ゲームラビリンスで見つけた注目インディーゲーム7選

イベントレポート

2024年10月26日、インディーゲーム展示会「神戸ゲームラビリンス」が神戸・三ノ宮の神戸電子専門学校 学生会館4階を会場として開催された。主催は神戸電子専門学校の学内インディーゲーム開発スタジオであるKIC Gamesで、今回が初めての開催となる。展示・入場は共に無料で、当日はのべ50組が展示を行っていた。

本イベントの会場となっている「神戸電子専門学校」といえば、ダウンロードサイトVectorにてゲームソフト分野の学生の作品をフリーゲームとして公開してきたことから、フリーゲームファンの中にはその名前に見覚えがあるという人もいることだろう。(※2024年現在は学生作品の公開はitch.ioに場所を移して行われている)
会場こそ学内ではあるが、展示作品は学生作品が主体というわけではなく公募から広く出展されている傾向が伺えた。初開催でありながら大きな賑わいを見せており、地方発の本イベントが今後どのような発展を見せるのか、その動向に注目していきたいところだ。

本記事では取材陣が気になった作品を7点紹介するので、気になった作品があればチェックしてみてほしい。

Leapers『SHADOW LEAP』

神戸電子専門学校の学生チームLeapersによる『SHADOW LEAP』は、影を操る力をもつ主人公が夜の街を駆け抜ける3Dアクションゲーム。本作は2025年にSteamでの配信が予定されている。ネオンサインが輝く看板を壁走りで駆け抜けるパルクールや瞬間移動などのアクロバティックなアクションが特徴だ。

街を進むと敵が現れ、連続攻撃やチャージ攻撃、回避アクションなどを駆使して敵と戦うことになる。敵を全滅させることで報酬としてスキルを3種のうちから1つ獲得できる。スキルの中には空中から急降下し着地の衝撃波で敵を一掃する、刀から衝撃波を連続で飛ばして遠距離攻撃するといったものがあり、次の戦闘を優位に進められるようになる。

実際に試遊してみると、主人公を操作している自分が翻弄されてしまいそうなほどにスピーディで、そのハイテンポさに圧倒されるとともに興奮し通しだった。また印象的だったのが空中から敵にキックを仕掛けるダッシュ攻撃の存在で、自分自身の手で狙いすまして急降下キックを放ち、敵を吹き飛ばす『仮面ライダー』ばりのけれん味溢れるアクションの虜になってしまった。
(真野 崇)

Website: https://x.com/LeapersKD

Forever Time『Forever Time』

『Forever Time』は橋本英征氏が中心となって制作されたノベルゲーム。本イベントの開催地である兵庫県を舞台に、職を追われた青年「羽生ユウト」と写真家志望の少女「深町なずな」の交流を描く物語となっている。展示では試遊の他にもパンフレットやサウンドトラック、トートバッグなどが豊富に用意されており、そうしたノベルティからも強い気概が感じられた。

試遊ではユウトが職を追われたその日、橋の上で傷心のユウトをなずながシャッターに収めたことから物語は展開していき、なずながユウトを被写体にコンテストでの優勝を決意するまでを体験することができた。背景には撮り溜められた写真の数々がふんだんに使用されており、カメラを握るなずなにシンクロすると共に映画のような空気感が味わえる。

本作は現在ノベルゲームコレクションにて公開中のほか、Steamでも2025年春を目標に配信予定でストアページが公開されている。Steam版には追加要素が含まれるとのことだ。
(真野 崇)

Website: https://forever-time.studio.site/

HesoGames『ストマックシューター』

鳥取在住のヘソライダー氏による『ストマックシューター』は、タイトルの通りストマック、すなわち「胃」の中を舞台とした縦スクロール型シューティングゲーム。ヘソライダー氏は代表作『闘う受験生 Entrance Exam』に見られるように現代人にとって身近なテーマを2DSTGに乗せて届けることを持ち味としており、本作もそれに連なる作品と言える。

胃薬戦士「マモル」「ショウガ」から1人を選択し、胃もたれの原因となるものを司る「ディスペプシアン」達を相手に立ち向かう。ディスペプシアンからの攻撃は「トンカツ」や「麻婆豆腐」など胃に重い料理の数々をモチーフとしている。また、自機の武器として近接攻撃がある点や、ライフを全て失いコンティニューを行う際にはボムを消費するというシステムも独特だ。

本作はふりーむ!にて試遊版がダウンロード可能となっている。開幕から打ち返し弾(敵を撃破した際に反撃として飛んでくる弾)が登場するなど、全体的に2DSTG慣れしたプレイヤー向けのストマックならぬストイックな難易度調整となっているので、腕前に自信のある人に挑戦してほしい作品だ。
(真野 崇)

Website: https://sns.freegame-contest.com/author/%E3%83%98%E3%82%BD%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC/

セイテイシレズ『Out of Skull』

セイテイシレズが開発中の『Out of Skull』は、事故で亡くなりガイコツとなった主人公が恋人に会うために生き返ることを目指す、”頭を使う”パズルアクションゲーム。itch.ioで英語版、ゲームクリエイターズギルド「みんなのゲームパレード」で日本語版がそれぞれα版として公開中で、英語版と日本語版では一部ステージ構成が異なっている。

ガイコツは頭を投げ飛ばすことができ、別の体に当てることでその体を乗っ取って動くことができる。これを活用し、時には針山を頭だけで飛び越えて体を乗り継いでゴールを目指し、また時には残された体をスイッチの重石として活用するなどして道を作っていく。投げ飛ばした頭が地面などに落下してしまうとミスとなりステージをやり直しとなる。

頭をうっかり落としてしまったときの悔しさや、頭を飛ばす際の順序や飛距離の考慮など、シンプルでありつつも”骨のある”パズルが楽しめる。2025年にはSteamでの配信も予定しているとのことで、更なるパワーアップにも期待したい一本だ。
(真野 崇)

Website: https://x.com/JanpFrog_Well

讃岐GameN『湯斬忍者』&スタジオぽんず『レッツカチコミ!!のおかちゃん』

瀬戸内海を渡ってやってきた香川からの刺客・一般社団法人讃岐GameNのブースでは、抜け忍であるうどん屋店主が追っ手を撃退しながら店のお客さんにうどんを提供するショートアクションゲーム『湯斬忍者』が展示されていた。お客さんにうどんを提供したあとは中央の鍋でうどんを補充する必要があり、的確な操作が要求される作品となっていた。

また讃岐GameNは商店街を会場にしたゲームのお祭り「SANUKI X GAME」の開催や、ゲーム制作講座の実施といったゲーム制作を通じた地方創生の活動を行っている。その制作講座からの出身となるスタジオぽんずの2Dジャンプアクションゲーム『レッツカチコミ!!のおかちゃん』も隣接するブースで展示を行っていた。

『レッツカチコミ!!のおかちゃん』は、香川でゲームを禁止しようとする集団「デジタルマフィア」を相手に、ゲームを愛する「のおかちゃん」がジャンプ踏みつけやタックルで暴れまわるといった内容の作品。

キャラクターのアニメーションを全て手書きで制作しているほか、タックルを敵の頭部に命中させるとそのままジャンプとなり踏みつけにつなげられるテクニックが存在するなど、細やかな作り込みが光る作品となっていた。
(真野 崇)

Website(一般社団法人讃岐GameN): https://www.sanukigamen.com/
Website(スタジオぽんず): https://x.com/ponzu08268

巡るアトリエ棟開発チーム『巡るアトリエ棟』

『巡るアトリエ棟』は京都市立芸術大学の旧校舎「沓掛キャンパス」を舞台とした謎解き探索ゲーム。制作チームは同大学の学生達であり、閉鎖される旧校舎のメモリアルとして本作を作成したとのこと。プレイヤーは新任の守衛として沓掛キャンパス内を巡回し、そこで発生する学生達のトラブルに対応していくこととなる。

ブースの試遊では部屋の鍵を紛失した学生達から事情を聴いて鍵のありかを推理するパートをプレイできたほか、ムービーでは証言メモを並び替えて時系列をまとめあげるシーンが確認でき、推理要素が多めの構成となっている。建物内は雑多な物品やペイントであふれかえっているうえにとても入り組んだ複雑な構造をしており、初見ではまず間違いなく迷うことだろう。

制作陣に話を聞くと沓掛キャンパスは誇張ではなく複雑怪奇で、生徒達もどこに何があるかわからないまま通っていたという。ビジュアル面ではピクセルアートを採用しているが、階段の表現に独特さが感じられるのも印象的だった。本作はunityroomにて無料公開中となっている。
(真野 崇)

Website: https://x.com/KyogeiGame

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。