少女と妖精の小さな大冒険がリメイクでさらに楽しく、可愛らしく!サクサク進行とユニークな戦闘が魅力の中編RPG『リリアン・クー』
今回紹介するRPG『リリアン・クー』は、2016年にフリーゲームとして公開された同名作品の有償リメイク版だ。リメイクにあたり制作ツールはRPGツクール2000からRPGツクールMVへと変更。少女と妖精のコンビが魔法の種を集めて育てるというメルヘンチックな世界観や独自の戦闘システムなどを受け継ぎつつ、グラフィックが完全に一新、サブキャラクターも追加されるなど、制作ツールの世代が一気に上がったこともあり大幅に進化した内容となっている。
本作の大きな特徴は、比較的コンパクトにまとめられたマップ構成の中にイベントが豊富に詰まっていること。非常にテンポよくサクサク進行し、RPGを攻略していく達成感を気軽に味わえる中編作品に仕上がっている。この長所はリメイクでも損なわれておらず、「最近RPGらしいRPGをプレイする暇がなかなか無いな」という方にもぜひお勧めしたい作品だ。
少女と妖精のコンビが身近な世界を冒険していくほのぼのRPG
本作の主人公は、果樹園で暮らす少女「リリアン」と、その相棒の妖精「クー」。彼女たちのもとに「レヴァリー」と名乗る青年が訪れることから物語は始まる。レヴァリーによると果樹園の近くの遺跡に封印されていた魔王が解放されてしまったため、再封印のため果樹園に「魔法の種」を植えて「マナ」を増やす必要があるとのこと。魔王の力を抑えるため遺跡に残るレヴァリーの頼みにより、リリアンとクーは各地で魔法の種を集める冒険に旅立つ。
魔王封印のため、という大目標は結構シリアスだが、魔法の種集め自体はピクニックの延長といった雰囲気。旅先で出会う人々も牧歌的で、敵もどこかゆるかったり、コミカルなモンスターが中心だ。ダンジョンも含めマップもいい意味でコンパクトにまとまっており、その中にイベントがたくさん詰まっている。
これらをクリアすることで魔法の種を入手し、果樹園に帰還。植えた種が実ることでリリアンとクーの能力強化に繋がるほか、行動範囲が増えるようなアイテムが手に入ることもあり、さらなる種探しの冒険へ……というサイクルでゲームは進む。ちょっとした達成感を得られるイベントがテンポよく続いていく、サクサク進行が本作の魅力。どのイベントから進めるかの自由度が高い一方で、次にやることに迷ったら教えてくれるキャラクターも居るため、まとまったプレイ時間を取りにくいという場合も気軽に少しずつ取り組める作品となっている。
“防御力を削り合う”独特な戦闘システム
全体的なプレイ感はライトだが、戦闘システムは独自に作り込まれた本格派。といっても基本的な仕様自体は、リリアンまたはクーの行動と1体の敵の行動が交互に行われる、シンプルなターン制だ。ステータスの種類もHP・MP・ATK(攻撃力)・DEF(防御力)のみとシンプル。
ただしステータスには1点大きな特徴があり、それはDEFが一般的な意味での防御力とは全く異なるステータスであること。どちらかというと装甲値・バリアといった概念に類するもので、敵味方ともにダメージによってまずはDEFが減り、DEFが0になると超過した分がHPへ通る仕組みになっている。DEFを増加させる手段も色々と用意されており、ステータスのDEFは「戦闘開始時の初期値」に過ぎず、上限があるHPとは違って初期値以上に増やしていくことも可能。この特殊なDEFをもとにした駆け引きが本作の戦闘の要だ。
もう一つ特徴的なのが、“インベントリ”という消費型の武器を使う要素。インベントリはターン経過で溜まる「IP」を消費して使用でき、強力なものほど消費IPも高い。インベントリの種類はシンプルに攻撃の威力を上げる剣、攻撃の威力を上げつつDEFを上昇させる弓、DEF上昇に特化した盾などさまざまだ。
消費型というと節約したくなってしまうかもしれないが、本作の戦闘バランスはザコ戦も含めインベントリの使用が前提とみられる調整だ。インベントリは店での購入のほかに敵を倒したり探索での入手、また鉱石アイテムからの生成と入手機会は多いので、惜しまず使っていっても大丈夫。そのほか、クーが覚える多彩な魔法も活用しながら戦っていく。
こうしたシステムのもと、敵ごとのユニークな行動などによって程よく頭を捻る戦闘が味わえる。RPG慣れした人ならお察しかと思うが、「DEFを無視してHPに直接ダメージを与える攻撃」は当然のように存在。それに留まらず一部のボスなどはさらにトリッキーな攻撃を仕掛けてくることも。攻撃を受けたときはダメージ算出方法も表示されるが、「そんなんアリ!?」と言いたくなるようなものもあったりと、特殊ギミックのびっくり箱のような戦闘も待ち受けている。
敵のステータスは開示されており、敵の次の行動とそのターゲットも最初のターン以外は明示され、ダメージ計算にランダム要素はない。敵の行動が実際にどのような効果やダメージ計算式を持つかは一度受けてみるまでわからないが、ボスなど強敵との戦いでは、そうして敵の出方を把握した上でどう対処していくかを考えるのが醍醐味だ。
気軽にサクサク遊べるRPGを探している人にもお勧め!
リリアンとクーの冒険においては、行く先々で出会う人々との交流も楽しみのひとつ。とくにリメイク版では立ち絵のあるサブキャラクターが大幅に増えており、賑やかなやり取りが朗らかな気持ちにさせてくれる。結構ちゃっかりしているクーにリリアンが突っ込んだり、そんなリリアンも意外とアグレッシブな所があったりと、主人公コンビの掛け合いも微笑ましい。
一方、各地で手に入る「メモリーストーン」というアイテムを使うと、回想シーンのような形で本編より前の過去の出来事を垣間見ることが可能。怪しい言動でリリアンから胡散臭がられているレヴァリーの真意や、クーが抱えている想いなどに触れることができる。現在の冒険と過去の物語が、終盤で収束していく展開も見どころだ。
攻略にあたり決まった道筋のない本作は、いつでも好きなタイミングで魔王の再封印に向かうことが可能。流石に最初からいきなり向かうのは現実的ではないが、必ずしもすべての魔法の種を集めきる必要はない。一方で集めるにはそこそこ入念な探索が必要となる「シンボル」をすべて集めると裏ボスと戦えるというやり込み要素もあり、気軽に楽しむのも隅々までじっくり堪能し尽くすのもプレイヤーの自由だ。
戦闘の難易度も5段階で変更可能で、主に探索やストーリーを楽しみたい人から、独自システムでのバトルを極めたい人まで対応。セーブデータを製品版に引き継げる体験版も用意されているので、システムに凝ったRPGが好きな人はもちろん、気軽にサクサク遊べるRPGを探しているという人にも、ぜひ触れてみてほしい作品だ。
[基本情報]
タイトル:リリアン・クー
制作者:T-FTA氏(えふたらぼ)
公称プレイ時間:7~12時間ほど
対応OS:Windows
価格:1,430円
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