これぞ「混ぜても自然」を体現するツインシューティング&アクションアドベンチャー『Minishoot’ Adventures』だ

アクション,インディーゲーム,シューティング

1980年代初頭から1990年代に誕生した『ROBOTRON: 2084(ロボトロン2084)』『エイリアンシンドローム』『Smash T.V.(スマッシュT.V.)』という3つのシューティングゲーム。これらは見下ろし視点(トップビュー)を基本とした画面構成と、狙う方向を定めながら敵への射撃を実施する操作系および、ゲームデザインを共通の特徴としている。

いわゆる「見下ろし型シューティング」とも称されるこの種のシューティングゲームは、2000年代に入って操作系が進化。1本のスティックを狙いたい方向へと倒すだけで射撃できるスタイルが発案され、より直感的かつ手軽に戦闘が楽しめるようになった。

▲ツインスティックシューティングの象徴的作品『Geometry Wars: Retro Evolved』(Steamストアページより)

さらにもう1本のスティックで自機の移動をこなす仕組みから、「ツインスティックシューティング(シューター)」なる呼び名も誕生。同タイプの操作を採用したフォロワータイトルが続出したことは、ある意味、シューティングゲームの歴史をかたどる出来事のひとつといってもいいだろう。

ところで、見下ろし型シューティングゲームは、視点構成がロールプレイングゲーム(RPG)と一緒だ。厳密にはリアルタイム性を持つことからアクションRPG、アクションアドベンチャーゲームと特に共通している。

「じゃあ……その2つのゲームって、一緒にしちゃっていいんじゃないの?」との狙いがあったかは定かではないが、そんなお見合いから結婚へと至ってしまった「本当ですか?」なゲームがこのたび誕生した。『Minishoot’ Adventures』である。

戦闘機のような機械生命体になって、地下より現れし敵の軍勢から世界と仲間を救え!

飛行機や戦闘機の見た目をした、不思議な機械生命体が生活を営む世界。ある日、平和なこの世界の地下から「疎外されし者」とその手下の赤い機械生命体が出現。多くの者たちがその襲撃を受け、「腐敗のクリスタル」に侵されて身動きが取れない状態にされてしまった。

主人公「MINISHOOT」も腐敗のクリスタルに侵され、身動きが取れない状態にされていた。だが、謎の声の呼びかけにより、クリスタルによる拘束を打ち破ることに成功。かくして身動きが取れるようになったMINISHOOTは、同じくクリスタルに捕らわれた仲間たちと、「疎外されし者」によって支配された世界を救うための冒険に出るのである。

とても冒険活劇らしいオープニングと共に始まる本作は、ツインスティックシューティング&アクションアドベンチャーゲーム……やや強引に略してシューティングアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは主人公のMINISHOOTを操作し、舞台となるフィールドを駆けめぐりながら、仲間たちの救出と疎外されし者とその手下たちの撃退に挑む。

具体的には、疎外されし者の手下たちが現れた場所「ダンジョン」の攻略をメインにこなしていく。いかにもアクションアドベンチャーらしい、とりわけ“レジェンド”の言葉が脳裏をよぎりそうな流れで展開されていく内容となっている。

ダンジョンは4つあり、本編開始間もない段階で全体マップ画面からその位置を確認できる。ただし、最初からすべてのダンジョンに訪れることはできない。その時点での主人公ことMINISHOOTは、移動と射撃の最低限のアクションしかできないためだ。

よって、現時点の状態で行ける範囲にあるダンジョンから攻略していくのがセオリーとなる。では、残るダンジョンにはどのようにして向かうのか。アクションアドベンチャーゲーム、前述の“レジェンド”の経験者ならお察しだろう。アップグレードアイテムの獲得である。

本作は探索を進めていくにつれ、「原初の力」と称された水色のキューブが手に入る。これを手に入れると、MINISHOOTがパワーアップ。高速移動にダッシュ、壁や岩を破壊する「スーパーショット」といった新能力が宿って、行動範囲が広がるのだ。大半はダンジョン内に置かれているため、基本的にひとつのダンジョンに訪れることが、そのまま新能力の解禁に繋がる。

件の“レジェンド”を知る方なら「ああ、あれか」となったはずである。そんな具合に主人公を強化させながら行動範囲を広げ、ゆくゆくは4つのダンジョンすべての攻略を目指す感じとなっている。まさにアクションアドベンチャーの王道を地で行く構成だ。

なお、「原初の力」の獲得とは別に経験値によるレベルアップもある。本作では、赤いクリスタルや敵の機械生命体を倒すと「クリスタルのかけら」なるアイテムが手に入り、画面左上のクリスタルゲージへと蓄積されていく。そして、ゲージが満タンに達すると、カケラはクリスタルになって、そのまま1個獲得となる。このクリスタルの完成および獲得が、本作におけるレベルアップを指す。

クリスタルを1個獲得と書いたように、レベルアップで主人公のステータスが上昇することはない。基本的にステータスの上昇は6+4つある強化項目の中からひとつを選び、レベルアップで手に入れたクリスタルを割り当てる任意形式である。そのため、どんな風に強化させるかはプレイヤー次第。攻撃力優先か、射程距離優先かを好みに応じて決められる、自由度の高いシステムに設計されている。

また、各地には腐敗のクリスタルに捕らわれた仲間がいて、彼らを助けることで、ショット攻撃の範囲拡大、一部アイテムのドロップ率上昇などが図れるようになる。これらも強化するには専用の通貨などが必要で、それを探索を通して集めることが求められる。

以上のように、本編の流れにおいてはアクションアドベンチャーの王道に則りつつも、新能力の獲得を除く育成周りはアクションRPGのスタイルを採用。実質、いい所取りとも言えるまとめ方になっている。

そして、紹介が前後したが、敵との戦闘はバリバリのツインスティックシューティング。左スティックで主人公を動かし、右スティックで射撃というお馴染みのアレだ。それをアクションアドベンチャーな環境(ゲームシステム上)でこなす、というのが本作のゲームデザインにおける最大の特徴である。まさにそのまんまにして、文字通りのシューティングアドベンチャーゲームなのだ。

「そんなに相性よかったの!?」と驚かされる、2ジャンルの自然すぎる融合

そして、本作の魅力は「混ぜても自然」を体現したゲームシステムの出来栄えである。

冒頭で言及したように、アクションアドベンチャーとツインスティックシューティングは、視点構成がトップビューという共通点を持つ。だとなれば、2つを組み合わせても大丈夫なんじゃ……という発想があったかどうかは開発者のみぞ知る話として、実際にそれを試してしまった本作は、驚異的と言っても大げさではないほど、自然に混ざり合っている。

特に双方のジャンルが持つ醍醐味が相殺されないどころか、互いの魅力を慮った形にまとまっているのが凄い。具体的にはアクションアドベンチャーなら探索と謎解きの楽しさ、ツインスティックシューティングなら周囲から襲い来る敵の方向を見定めて対応していく戦術性のことだが、本作はそのどちらもが片方のジャンルに邪魔されることなく、面白さを保っている。

それでいて、お互いの魅力を持ち上げる配慮と工夫がされているのだ。アクションアドベンチャー部分に関しては進行周りのテンポ感。この手のジャンルは、パズル性の高い複雑な謎解きを設けると遊び応えが高まる一方で、思考による間延びが生じやすくなってテンポが悪化するデメリットがある。それはツインスティックシューティングとしては、主たる遊びである戦闘に割く時間が減ることに繋がってしまう。

そんなツインスティックシューティング側への悪影響を抑えるため、本作はパズル性の高い謎解きはなるべくカット。隠されたスイッチを見つけたり、別ルートを見つけるといった探索を前面に出したネタに特化し、テンポ感のある展開を作り出しているのだ。おかげで本編では探索と戦闘がホドよい間を挟みながら展開されていくようになっていて、ツインスティックシューティングとしての確かな遊び応えが得られる。

ツインスティックシューティング側も難易度の部分で、アクションアドベンチャー側を配慮すると同時にその力を借りている。正直なところ、本作の戦闘は、割と激しめの弾幕が襲い来る場面が多い。一応、ダメージ制を採用しているため、1発でも被弾すると即アウトみたいなシビアさはないが、シューティングゲームに不慣れな人には厳しさを感じてしまうバランスである。

戦闘が難しくて高い壁になってしまうと、アクションアドベンチャーの探索と謎解き部分が楽しみにくくなる。そこを本作は経験値によるレベルアップシステムでフォロー。実は本作、ミスしてもそれまで貯まった経験値は維持されるのに加え、倒した敵が復活するようになっている。そのため、ミスすればミスするほど、沢山経験値が稼げてレベルアップできる機会に恵まれる。

ダンジョンなどに登場するボスも同様。本作ではボスに一定量のダメージを与えると経験値に当たる「クリスタルのかけら」をまき散らすのだが、これがミスした後にも再び獲得できる。なので、繰り返せば繰り返すほどにレベルアップし、自機を強くできる。実質、ミスした方が得とも言える仕組みになっているのだ。

また、探索に時間を割けば、自機の体力の最大値を底上げするパワーアップアイテム「ハートのかけら」(原文ママ)や、特別な装備を獲得できるチャンスにも恵まれ、戦闘を有利にすることもできる。そのようなアクションアドベンチャー側の助力を得て、遊びやすいゲームバランスを確立。それでいて、そちらの要素に頼る意義も示すという尊重の思いが滲み出た工夫を凝らしているのだ。

このようなまとめ方もあって、本作は双方のジャンルが綺麗に融合した「混ぜても自然」な作りを実現させている。さながら、前々から相性が合いそうな2人が結ばれ、理想的な姿を獲得したとも言えるようなゲームデザインを成り立たせてしまっているのである。そんなに自然なのかと疑問に抱いたなら、迷わず本編を遊んでみていただきたい。その驚くほど互いを尊重したまとまり方に美しさすら抱いてしまうはずだ。

本編全体の構成も、双方のジャンルの魅力が活かされた山あり谷ありの仕上がりで飽きさせない。特にダンジョンは規模感のちょうどよさと、ガチシューティングなボス戦が色んな意味で強烈な印象を残すこと請け合い。アクションアドベンチャーなら、ボス戦はダンジョン内で手に入れた新装備が必勝の一手に……というパターンを思い浮かべてしまうかもしれないが、本作はあえてそのセオリーを崩している。

それゆえ、若干難易度が突き抜けている部分もあるのだが、そこもレベルアップなどのシステムがカバー。加えて本作には「アクセシビリティ」のオプションがあり、いざとなれば自機を無敵にさせる機能を使ってゴリ押すこともできる。

「そんなのってアリ!?」と思うかもしれないが、そうした遊び方も許容しているのも本作の面白いところであり、アクションアドベンチャー側の助力を得たからこそできた要素。それゆえ、本作はシューティングゲームやツインスティックシューティングに苦手意識があったり、体験したことのない人にも門戸が開かれている。

本作をそれらのジャンルのデビュー作にするのも凄く良いので、何か入門に最適なものはないかと探している方はぜひ、選択肢のひとつとして検討してみてほしいところだ。

初めて遊ぶシューティングゲームとしてもイチオシの傑作

シューティングゲーム初心者などへの配慮については「アクセシビリティ」のほかにも難易度選択、エイムアシストといったサポート機能を用意。どちらもゲーム中、好きなタイミングで切り替えられる設計となっている。

中でも「エイムアシスト」の「オート」は、シングルスティック(左スティック)による自機操作だけで楽しめてしまうという、超がつくほどにお手軽なモード。昨今のトレンドで例えるなら、サバイバー系ゲームと同じような感覚で楽しめる。狙いを定める操作はちょっと……と感じるプレイヤーに最適なので、もし気軽に楽しみたいとなればこちらを選んでプレイすることをオススメしたい。

本編のボリュームも大きめで、エンディングを目指すだけでも10時間以上。さらにその後の追加要素もあって、それらすべてをやり尽くすとなれば20時間以上は楽しめてしまうほど充実した内容になっている。最速クリアを目指すタイムアタックのやり込みも面白く、実際、その楽しさを引き立てる仕掛けやテクニックも用意されているので、腕に自信のある人はそちらも要チェックだ。

ほかにグラフィックは全編手描きのアニメ調で、絵本の世界のような雰囲気を醸し出しているのが特徴的。ツインスティックシューティングの要たる敵弾の視認性についてもバッチリで、見落としにくい色遣いになっているのが見事だ。演出に関しても、敵を撃破した際には岩を砕いたかのようなリアルな音が鳴り響くのだが、これがなかなか心地よくて爽快感を引き立てる。

反面、音楽は若干静かな感じで、場面によっては眠気を誘うものになってしまっているのは気になるところ。それ以外に気になる箇所では後半のボスの耐久力があり、いくらアクセシビリティや難易度選択機能によるフォローがあるとは言え、もう少し脆くしても良かったように思える。特に一連の機能に頼らない場合、「しつこい!」と不快感を覚える側面もあるので要注意だ。

ややもったいなく感じる難点もあるが、全体的な完成度は高い。これぞアクションアドベンチャーとツインスティックシューティングの完璧に等しい融合と言ってもいいほど、ゲームシステムからゲームバランスの高い完成度と「混ぜても自然」なまとめ方が光る。

双方のジャンル好きはもちろん、初めて遊ぶシューティングゲーム(ツインスティックシューティング)を探している人には強くオススメできる傑作だ。共通する特徴を持った2つのジャンルが相性抜群の融合を果たしたその仕上がりを存分に味わってみていただきたい。「混ぜても自然」の好例、ここにあり。

[基本情報]
タイトル:『Minishoot’ Adventures』
開発:SoulGame Studio
クリア時間:10~12時間
対応プラットフォーム:Windows、macOS
価格(税込):1,700円
備考:Steam Deck互換性あり

◇ダウンロードはこちら
・Steam

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