びっくりさせる快感――フリーゲーム「月光妖怪」レビュー
「誰かを怖がらせてやろう、びっくりさせてやろう」
そんなことを考えると楽しい気分になった経験はないだろうか。
お化け屋敷は怖い。
怖がらせるために、仕掛けも雰囲気も全てを整えた装置なのだから怖い。
でも、お化け屋敷をセッティングするときは楽しい。お化けとして驚かせるときもどう演出したらいいか考えるとワクワクする。高校の文化祭などでお化け役をやった人で女子高生を驚かせることに悦びを感じていた諸君も多いのではないか。
そんなことはさておき、筆者自身は怖いものが苦手だ。
ホラーゲームも苦手だし、お化け屋敷の類も避けたい。ホラー映画は目をつぶっていることも多い。
でも人をびっくりさせるのは好きだったりする。
そんな、怖がらせる、びっくりさせる側の快感をゲームにしてしまったのが、今回紹介する
逆ホラーゲーム「月光妖怪」だ。
このゲームではプレイヤーは妖怪になる。ターゲットがゴールに向かって一目散に歩いて行くところで、ステージにある仕掛けを使って怖がらせ、足止めをしていくゲームだ。
通常のゲームと視点を入れ替えてみたゲームは新鮮で面白い。
先日もぐらゲームスでも紹介した「ミミクリーマン」も、RPGの敵側(ミミック)になって勇者を倒すゲームだった。
わらしべ長者で勇者を倒せ―フリーゲーム「ミミクリーマン」レビュー – もぐらゲームス
さっそく紹介していこう。
逆ホラゲだから怖くないはz…いや、最初は怖かった
このゲームのストーリーは4編構成+クリア後のおまけだ。
一番最初の少女編では、少女と少年が月の光を見ようという約束を交わすところから始まる。
逆ホラーゲームってしつこいぐらい書いてあるし、最初はチュートリアルかな…。
そう思っていたら甘かった。
怖かった。
少女編の最初だけは、ホラーだった・・・。
そう、最初は少女視点=怖がる側の視点でスタートするのだ。
主人公の月光妖怪が誕生するまで、つまり逆ホラーゲームが始まるまでのストーリーがしっかり描かれている。
ネタバレになるので詳細は伏せるが、少女編とその次の少年編は逆ホラーゲームの世界に入っていくための舞台設定を整えるために存在している。
ちょっとせつないストーリーなので、感情移入してしまう。泣ける…。
そして舞台が整ったところで月光妖怪が登場して本格的に逆ホラーが始まるといった具合。
恋人と待ち合わせている男
特売セールに行こうとしているおじいさん
遅刻しそうな女の子
万引きをしようとしてる少年
お稽古のピアノに行きたがらないお嬢様
そんな街の人達に悪戯をして怖がらせる悪戯編、
吸血鬼が街を襲う再会編とストーリーが進んでいく。
病みつきになる快感
肝心の逆ホラーゲームについて少し詳しく説明しよう。
これがプレイ画面だ。
ターゲットはスタートからゴールまでテクテクと歩く。
タワーディフェンスのように、リアルタイムでターゲットが移動していく中、ツボを割ったり、ピアノを鳴らしたりして怖がらせていく。
ポイントならぬ「秒数」を稼いで、クリアに必要なだけの時間足止めできれば、ステージクリアだ。
連続でびっくりさせるとコンボボーナスがもらえたり、マップによっては配置されている障害物を上手く使ったりして足止めをする。
間髪入れずに3連続でびっくりさせるとgreat Horror!となりボーナスポイントがもらえる
勘の良い人は、ここまでで気づいたかもしれない。このゲームはパズルゲーム的なのだ。どのタイミングでなんの仕掛けを使うか考えてみる楽しさ。そして実際にコンボを決めて連続で怖がらせる快感がある。
考えている間にターゲットはどんどん移動していってしまうので、こちらも慌ただしく動くことになるし、ステージによっては難易度もそこそこ高い。
※ただし、詰まることがないように失敗するとクリアに必要な秒数が減るようにもなっている。
怖がらせる側も大忙しである。
クリア後のお楽しみ、仕事編
さてこのゲーム。ストーリーを終えるまでは1~2時間程度。あっという間にクリアできる。
「せっかく面白いシステムなのに、ステージが少ない!もっと怖がらせたい!」というプレイヤーの気持ちを汲み取ったかのように、クリア後のおまけが存在する。それが仕事編だ。
仕事編でできることは大きく分けると2つ。
・さらに色々な人を驚かせる追加ミッションのプレイ。本編よりも多くのミッションがあるので逆ホラーを楽しめる。
・街に出て、マップを移動しながら道を行き交う人達を驚かせていくプレイ
なんと街で歩いている人たちを驚かせてしまおうというまさに悪戯企画。人が大勢集まってきたところでガシャン…。通行人の頭上に一斉に出るビックリマークが小気味いい。
ここでRPG的なお金とレベルが導入されて、レベルが上がるにつれて町での歩数が広がったり、町の人達を驚かせながら、マップに隠されたイラストを探したり、と本編以上にやりこみ要素が多く、ボリューム満点だ。
手に入るイラスト。かわいい…。
ギミックの種類がもう少し多かったらさらに面白くなったかもしれない、というのは欲張りすぎだろうか。
ストーリーも一風変わったコンセプトのシステムも楽しめる。
ぜひプレイしていただきたい一作だ。
[タイトル]
『月光妖怪』
[ソフトウェアタイプ]
フリーゲーム
[対応OS]
Windows2000、XP、Vista、Windows7
(※遊ぶには"RPGツクールVX Ace RTP"(無料)が必要です)
[ダウンロード]
[制作者]
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[プレイ時間]
1~2時間(おまけを除く)