フリーホラーゲーム『無感無痛 [無痛少女]』。「物語の考察」と「視覚的な怖さ」を楽しむアドベンチャー

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今回は、フリーホラーゲーム『無感無痛 [無痛少女]』を紹介する。本作は、おどろおどろしい謎の世界にとつぜん放り出された少女が、そこで出会う怪異の存在から逃げつつ、世界を探索するというホラーアドベンチャーゲームとなっている。
本作の特徴としては、マルチエンディングであり、世界を探索していくうちに断片的に仄めかされる物語。そして視覚・聴覚にダイレクトに訴えてくる「不気味な恐ろしさ」が挙げられる。早速紹介したい。

少女を操作し、謎と恐怖に満ちた闇の世界を探索する。

本作は、横スクロール型の探索アドベンチャーとなっている。主人公である影のような少女を動かし、謎の世界を探索していくという形式だ。ジャンプで落とし穴や障害物を越えるというアクション要素もあるが、基本的には次のマップへと進む道を見つけ、謎解きを挟みつつ世界の奥へと進んでいく。探索中に特定の場所にたどり着くと、エンディングを迎えることができる。

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主人公の少女(画像左)。影のような身体をしているため、暗闇の部分では闇に溶け込んでしまう。

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ジャンプなどのアクション要素も少しあるが、難易度は高くないため、アクションが苦手な人も安心してプレイできる。基本的には謎解きをしつつ世界の奥へと向かっていく形となる。

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ゲーム内には謎解きのような場面もある。

本作は、結末が複数用意されているマルチエンディングとなっており、全てのエンディングを見るには、恐怖と謎に満ちた世界を隅々まで探索する必要がある。
ゲームの最終的な目的は提示されているわけではないが、世界の全てを探索し、用意された全てのエンディングを見ることで、少女のことをより深く知ることが出来る。そのため、エンディングのコンプリートがひとつの目的と言えるだろう。

そんな本作の特徴が、物語が直接的ではなく断片的に語られ、プレイヤーに解釈を委ねられるという部分だ。世界の中には、少女以外にも不気味な存在が出没するが、会話などを行うことは出来ない。

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世界を探索する中で、恐ろしい風貌をした謎の存在にも遭遇する。

そのためプレイヤーが本作の物語を知る手段は、マップ上に落ちている日記のようなアイテムを読むことや、エンディングで描かれるシーンを見ることだ。それでも、直接的な説明などがされるわけではないため、プレイヤーの想像力によって考察を行う必要がある。

果たして、少女は一体何者なのか?ゲームのタイトルにもなっている「無痛少女」の意味とは、そして、この不気味な世界とは…。世界を探索していくうちに、断片的に感じ取ることの出来る物語を考察する楽しみが、このゲームの魅力のひとつだろう。

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探索中に見つけることができる日記のようなもの。この内容から、主人公の少女が一体どういった子なのかを考察するヒントとなる。

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暗闇の中に顔のようなものが見え、不気味なひそひそ声が聞こえる部屋。日記の内容もふまえると、少女は周囲からは異質な存在として思われていたのだろうか…?

視覚と聴覚、ダイレクトに訴えかける「恐怖」の演出

まるで影絵のように真っ黒な主人公が、謎めいた雰囲気の世界を探索するというシチュエーションは、海外産のインディーゲーム『LIMBO』を彷彿とさせる。しかし、このゲームが『Limbo』と若干異なる部分は、少女を追いかけてくる不気味な顔などや、不安感を煽る音楽など、視覚、聴覚に訴える直接的なホラー描写の強さだろう。

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少女の背後からいきなり迫ってくる不気味な顔。この場面では、プレイヤーの不安を煽る音楽も相まって、さらに不気味さが増す。

視覚、聴覚に訴える直接的なホラー描写の強さについて、注目を浴びたフリーホラーゲームを振り返ってみると、直接的な表現というよりは「怖さを表現するための演出」が上手かったものが多い。例えば『青鬼』はあのブルーベリー色の身体をした「青鬼」のビジュアル以上に、画面演出の上手さが恐怖を感じさせられた。
例えば、ゲーム中のとあるギミックを解くために、いったん視点を別の場所に変えて、元の場所に視点を戻すと、何もいなかった場所にとつぜん青鬼が現れている…といった演出などだ。

一方、昨年人気を集めたUnity製の3Dホラーゲーム『Death Forest』は、演出以上に迫ってくる異形の顔が視覚に直接訴えかけてくるものだった。

『無痛少女』は「怖さを表現する演出」もありながら、視覚的に直接訴えかけてくるビジュアル面の怖さも大きな特徴だ。

さらに、このゲームはホラー要素に加え、ストーリーテリングの面も充実している。探索中の出来事や、エンディングごとに仄めかされる内容は、この世界や主人公の少女についてのプレイヤーの想像力をかきたててくれる。

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探索中に現れる謎の人影は一体…

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主人公の少女は、一体何者なのか?世界の探索やエンディングを迎えるごとに、それはうっすらと明らかになっていく。最後に少女を待ち受けるものは…

さいきん人気となっているホラーゲームは、物語や雰囲気面などの怖さもひとつの特徴となっているように思われるが、そういった中では「視覚的な恐ろしさ」と「ミステリアスな物語性」が合わさった、ワンポイントのある作品と言える。
そのため本作は、純粋に「怖い」フリーホラーゲームを楽しみたい人、そして断片的な情報から物語を考察していきたい人にオススメできる作品となっている。是非プレイしてはいかがだろうか。

また、文中でも言及した、背筋の凍るような3Dホラーゲーム『Death Forest』は、以前にもぐらゲームスで記事として紹介した。本当の恐怖を味わいたいプレイヤーは、合わせてこちらもプレイしてはどうだろう。

恐怖の森で迫り来る異形。『Death Forest』注目の3Dフリーホラーゲーム

[基本情報]
タイトル
無感無痛 [無痛少女]
制作者 Noriziro
クリア時間 2~4時間ほど(エンディングのフルコンプリートまで)
対応機種 Windows XP/VISTA/7/8
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/8643

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。