巡る悪夢のツインスティックシューター『NeverAwake』

インディーゲーム,シューティング

18世紀のさる画家が描いた「悪夢」という絵画がある。悪夢を枕元にたたずむ黒い馬の怪物の姿で描き表した物だが、これは悪夢(nightmare)という単語を夜(night)の牝馬(mare)というように解釈したことから生み出されたものであるという。しかしある種の言葉遊びのようにして生み出された馬の怪物は、いつしか本当に悪夢を象徴する伝承として語られるようになっていった。悪夢の姿、というものは一体何から形作られるものなのだろうか?

『NeverAwake』は株式会社ネオトロの開発による「悪夢」を題材としたホラーテイストの2Dシューティングゲーム。STEAMにて2022年9月28日より配信が開始されている。また、家庭用ゲーム機版は2023年1月19日からの配信が予定されている。

「終わらない悪夢」という名のステージを進め

本作『NeverAwake』は左スティックを移動、右スティックを照準に割り当てた、いわゆるツインスティックタイプの操作方法を持つ2Dシューティングゲームとなっている。自機を操作して敵からの攻撃を避けつつ敵を倒していき、自機が攻撃を受けて耐久力が無くなるとゲームオーバー。自機は移動と射撃のほか、敵の攻撃をすり抜けることができる「ダッシュ」と、弾数制限のある「特殊武器」を使用することができる。照準を定めるのが苦手な人のために敵に自動で狙いを定めてくれる「オートエイム」のオプションも搭載されている。

2Dシューティングゲームというゲームジャンルでは、下から上、もしくは左から右の進行方向に対して攻撃を繰り出しながらステージを進んでいき、ステージの最後に待ち受けるボスキャラクターと対決してクリア、という構成が一般的である。しかし本作はステージの内容に応じて上下左右あらゆる方向にスクロールしつつ、かつ360度全方位に攻撃できるという形態を取っている。敵もあらゆる方向から襲ってくるため、画面の端に逃げ込むと予期せぬ衝突を起こしやすい。なるべく画面の中央に陣取って戦うようにするとよいだろう。

また、ステージ中には終着点が存在せず、敵を倒すことで入手できる「ソウル」を100%まで集めることでステージクリアとなる。逆のことを言えばソウルを集めきらなけらばクリアとはならず、同じステージの中をずっとループして巡り回ることになる。ループ回数が増えるごとに徐々に敵が強化されていくため、2周目3周目と周回を重ねることになった際は気を引き締めて進んでいこう。

リトライするほどにパワーアップ

ステージ中で入手したソウルは、特殊武器や様々な効果を持つアクセサリーを購入するのに使うことができる。商品のラインナップはステージクリアやリトライなどで増えていく。
アクセサリーにはコストが設定されており、限りあるコスト内でアクセサリーの装備をどのようにやりくりしていくかが悩ましい。

また、本作の特色のひとつとして「オーバーソウル」がある。オーバーソウルは、ステージ進行中に倒されてしまった際に集めたソウルを使うことで自機を強化した状態でリスタートできるシステムとなっており、アイテムの購入と合わせて繰り返しリトライしていくことでパワーアップし、先に進みやすくなるという点に力が入れられている。じっくりと挑み続ければいずれは先のステージへと進めるという遊びやすさがあるといえる。

一方、一度オーバーソウルを重ねた攻撃力の高い状態を体感してしまうと、攻撃力の低い初期状態がただ我慢を強いられるだけになってしまい、本来は避けたいものであるはずのミスをわざとした方が爽快に遊べてしまうという矛盾もはらんでいる。とにかくクリアしたいというだけならばそれで良いには良いのだが、ミスを減らすことによるご褒美も特に見当たらず、再挑戦を繰り返した先にあるはずの「上達するという快感」は味わいにくいようにも感じられた。そのためそれ以外の部分、すなわち「先を見たいかどうか」という点が本作を楽しむうえでのポイントとなるだろう。

わたしの”嫌い”は、みんなの”嫌い”?

本作は昏睡状態の少女レムの悪夢の中が舞台となっている。ループするステージ構成で「終わらない悪夢」が表現されるとともに、レムの心象を表すかの如くステージの風景やボスとして「嫌いなもの」が次々と現れる。しかしそうした「嫌いなもの」はおどろおどろしさの中にも思わず同意してしまいたくなる身近さが感じられ、見る者の目を楽しませてくれる。最初のボスとして現れる「ワサビ」は筆者も今に至るまで苦手としているため首がもげそうになるほど頷きたくなるし、「歯医者」などは攻撃パターンの展開も相まってとりわけ秀逸。先のステージにどんな敵が待ち構えているのか?というのを見たくなる。

ゲームを進めることでレムの日記の断片を読むことができる。入手できる日記の日付はバラバラで、時系列を読み取ることでレムがどのような境遇に置かれていたのかを推察することができる。中盤以降は「OMOIDE CHALLENGE」と呼ばれるモードが解禁され、ステージごとに定められた条件を達成することでレムと家族とのアルバム写真を入手でき、更に想像を掻き立たせてくれるだろう。

果たしてレムに目覚めの時は訪れるのか。もし「悪夢の世界」に興味を引かれたなら手に取ってみてほしい。

[基本情報]
タイトル: 『NeverAwake
制作者:株式会社ネオトロ
クリア時間:  4時間~
対応OS: Windows
価格: ¥1980

↓ダウンロードはこちらから
(STEAM)

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。