『NOSTALGIC TRAIN』古くも美しい昭和の村を歩く、ウォーキング・シミュレーター

アドベンチャー

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気がつけばあなたは、ホームのベンチに座っている。
今の日本ではほとんど見かけない古いつくりで、自動改札機もない無人駅だ。

あなたは自分の名前さえ覚えておらず、どうしてここにいるのかもわからない。

とにかく何かを思い出そうと、駅を一通り見ると「夏霧」と書かれた看板がある。

――やはり思い出せない。

手がかりがないとわかると、駅の外へと出る。

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そこは夏空の下に広がる、小さなメインストリートだ。古い白黒写真でしか見たことないような建物に、木製の電柱、円筒形のポスト、そしてオート三輪がある。

――そう。どうみても現代ではない。何かがおかしい。やがてあなたは気づく。

無人なのは駅だけではなく、村そのものであることを・・・

 

『NOSTALGIC TRAIN』は、美しくもどこかさみしい日本の山あいの村を歩く作品だ。

あなたはかつて住んでいた村人の「記憶」にふれつつ、少しだけ「現世」に介入し、自分が何者であるかをたどっていく。

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この作品を語るうえでかかせないのは、なんといっても風景の見事さだろう。

木々や川などの自然物も、神社やかやぶき屋根の民家も、「風景」と呼んで遜色のないレベルにまで高められている。

また、村を歩くことによって明らかになる村人のエピソードも、重く切なく、当時の時代をうかがえるものだ。

そしてこれらを、印象的なBGMと、セミや雨、川の音が彩る。

 

さて、『NOSTALGIC TRAIN』という限りは、この作品はTRAIN(鉄道)が重要なキーワードになる。

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この村の線路をたどってもらえればすぐに明らかになることだが、「夏霧駅」の終着駅は「夏霧駅」だ。

つまり、鉄道模型のように、村を走る線路がまた村へと戻ってくる仕組みなのだ。

だが、到着した「夏霧」は、以前のものとは違っている。

あなたが現世に介入したことによって、村人の「人生」が、変わっているのだ。

ある者は生き残り、またある者は外の世界へと飛び出す。

村人の姿こそ、最後まで見えないものの、あなたが少しの行動をし、鉄道にのるたびに、悲劇が回避された「夏霧」へとたどり着く。

この鉄道はいわば、一種のタイムマシーンであり、そして「輪廻転生」の象徴なのだ。

小さな出来事を積み重ね、過去からの「因果」を徐々に変え、プレイヤー自身が何者かであるのを知る。

ぜひこの村を、すみずみまで探索してほしい。

ただよう記憶の断片を、丁寧に拾い集めていった先に、夏霧の歴史とあなたとの関係が、明らかになるだろう。

 

と、ここまで書いたが、とくに目的なくうろついても、村は十分に楽しめる。

この作品は「ストーリーモード」の他に「フリーモード」があって、自由に村を歩き回ることも可能なのだ。

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ところどころに「昭和」の山村の豆知識が散らばっていて、しっかりした時代考証を感じさせる。

置いてあるオート三輪を見て「これはたぶん、マツダのK360だな」とか、「鉄道はキハ20系かな」などと、情景から大まかな時代を推定してみるのも、おもしろいだろう。

 

また、実際に田舎に旅行に来て写真を撮るみたいに、スクリーンショットを撮る楽しみも見いだせる。

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これも、「夏霧」の精緻ながらどこか郷愁を感じる情景ゆえの、遊び方だ。

 

この物語は、タイトルに「NOSTALGIC」とついているだけあって、昭和30~40年代に、田舎で子ども時代を過ごした人は楽しめるだろう。

だけど個人的には、このような風景をまったく見る機会がなかった若い世代にもやってほしいと思う。

 

「夏霧」は確かに、現代の日本人の「原風景」を、再現しているからだ。

 

[基本情報]
タイトル:『NOSTALGIC TRAIN』
ジャンル:ウォーキングシミュレータ―
制作者:Tatamibeya 畳部屋 (制作者様ツイッターはこちら)
クリア時間:3~5時間
対応OS:Windows
推奨グラフィック:Nvidia GeForce GTX1050Ti or AMD Radeon RX560
価格:2000円

ダウンロードはこちらから

  • 加古台

    「ポケモン」と「遊戯王」が発売されたとき小学生だった世代。日本全国のいろんなところに住んだことがあり、名前もその地名から取った。フリーゲームは「VIPRPG」から入った。友人の数は極端に少ないが、TRPGもたまにやる。