『NOT A HERO』銃弾と血の中を駆け抜けるバイオレンスな2Dアクションシューター
『NOT A HERO』は弾丸と爆薬で悪党たち倒すを2Dアクションシューター。2Dスケボーアクション『OlliOlli』を手掛けたRoll7による新作です。Roll7曰く、2Dならぬ「2¼D」とのことで、2Dよりは、ほんの少しだけ3D寄り。やや立体的なピクセルアートスタイルが特徴的ですね。
かわいらしいビジュアルとは裏腹に、ヒーロー”ではない”(NOT A HERO)人々による犯罪撲滅は残虐かつバイオレンス。チップチューンサウンドにのって軽い引き金で軽い頭を吹き飛ばす、血みどろのクライムアクションなのです。
ゲームのノリと雰囲気はローンチトレイラーを見ればわかりやすいでしょう。ちょっとグロテクスなところもありますが、ギャングの血なんてトマトか何かだと思っておけばOK。
鉛弾で悪党を倒すのにややこしい理由など必要ないと思うかもしれませんが、実はちょっと変わったストーリーになっています。そもそも、この紫のウサギみたいなおっさんは何だ?って話ですよね。
未来を救うのは英雄ではない
遠い未来からやってきた紫のウサギ、BunnyLoad。荒廃した未来は、彼が201X年の市長選で当選することによってのみ、変えられる。銀河評議会は12,000回以上に渡ってタイムトラベルと当選を繰り返したが、すべて失敗。
スーパーコンピューター・ApfelSoft4000は、残されたたった2つの成功ルートを示した。すべての人類にズッキーニを与えるか、すべての犯罪を撲滅するか。彼らは、犯罪の撲滅を選んだ。
市長選の投票日までは21日。街にはびこる犯罪…暴力にドラッグにスシ・ビジネスを根絶やしにしなければならない。市長であれば鉄パイプとパイルドライバーで治安を守るべきかもしれないが、まだ候補者であるBunnyLoadには無理な話。
犯罪に対抗できる力を求めて彼が集めた9人のメンバーはいずれも札付きのアウトローばかり。彼らは殺しのエキスパートであって英雄ではないが、未来のために必要な正義である。街のために、未来のために、21日間の戦いが今、はじまる。
BunnyLoadの名に誓い、すべての不義に鉄槌を。
投票日までの21日間を血で染め上げよ
犯罪者たちが犯罪を撲滅するためにとるべき手段は、デストロイ・ゼム・オール。マフィアどものアジトに単身で侵入して、悪党どもをすべて狩り尽すのみ。とはいえ、選挙に勝つためには悪党を倒すだけではいけません。やらなければいけないことは山積みなのです。
市長選挙の投票日までの21日間にあわせて全21ステージ。それとシークレットが数ステージという構成で、クリアするだけなら2~3時間程度のボリュームになっています。ステージごとに設定された3つのチャレンジをコンプリートしようとすれば10時間前後。といいますか、ボクは10時間かかってしまったのですが、うまい人ならもっと早くクリアできるかも。
各ステージの冒頭にはBunnyLordによるブリーフィングが行われ、ミッションの内容が説明されます。ミッションの内容は、人質の救出とかロシアンマフィアの麻薬プラントの破壊とか、ジャパニーズヤクザのスシ・ビジネスの妨害とか。ナンデ?
ブリーフィング中のBGMはのどかなものですが、言っていることに容赦はありません。なにせ敵はライフルにショットガンにカタナとジツで武装している悪党ですからね。慈悲はないのです。
弾丸の中を駆け抜けるハイスピードアクション
本作は2Dで描かれたビルの中で戦うアクションシューター。銃とグレネード、刃物その他でギャングたちを殺しまくるバイオレンスな内容です。弾が当たれば血が出るし、カタナで斬れば真っ二つ。ショットガンならミンチより酷いこと有様。かわいらしいピクセルアートスタイルとは裏腹に、血がドバドバの残虐バトルです。その様相はまさにブラッド・バス。
戦いの基本は銃です。ハンドガンやサブマシンガン、ショットガンなどキャラクターによって性能は異なりますが、接近して撃てばクリティカル、1発で頭と体がサヨナラすることになります。というか、頭がなくなります。
メインウェポンに弾数の制限はないので撃ちまくれますが、リロードは必要なので弾は大事に使いましょう。弾倉が空になったタイミングに攻め込まれるとカンタンに死ねます。時間で自然に回復する体力制ですが、死ぬときはあっという間です。彼らの命は菓子の包み紙のように軽いのです。
2Dのアクションですが、ジャンプはありません。代わりにスライディングやテイクカバーがあります。敵の銃弾をくぐりながらスピーディに移動できるスライディングは、障害物があればそのまま物陰に隠れて攻撃をやりすごせるテイクカバー状態に。1つのボタンに回避アクションが統合された操作感は、『Gears of War』のような3DのTPSを彷彿とさせます。実際、『NOT A HERO』はTPSを2Dに落とし込んだような印象もあります。
しかし、そういったTPSと大きく異なるのは独特のスピード感。ゲームに慣れないうちは、慎重にカバーしながら進めればOKですが、慣れてくればどんどんスピードアップしていけます。といいますか、チャレンジ達成を狙い始めると、スピードアップせざるを得ません。
高速な移動手段としても使えるスライディングは、敵を転ばして気絶させることもできます。気絶してダウンした敵の上で攻撃ボタンを押せば「Execution」(処刑)が発動。即死の必殺攻撃になります。これにより、床を滑るように銃弾の中を駆け抜けるハイテンポなアクションになっていくのです。そうなると血もアップしてテンションもアップ。さぁ、悪党の山を血の海に変えてやりましょう。
性能も楽しさも違う9人のキャラクター
9人のキャラクターをアンロックしていくシステムになっています。メイド型のターミネーターはいませんが、武器や移動速度、特殊なアクションなど、それぞれ性能が異なる個性的なメンツが揃っています。
たとえば、初期キャラクターのSteveは正確な射撃とすばやいリロードがウリですが、セクシーに腰を振るメキシカン・Jesusはいい加減なエイムで呆れるほど弾が前に飛びません。代わりに、Jesusはスライディング中にも弾が撃てる能力があり、敵陣を一気に突破する性能が高くなっています。
処刑アクションもキャラクターごとに性能が異なります。ナイフを持つMikeは静かに手早くトドメを刺せますが、日本刀を持つサムライガール・Kimmyは処刑のたびにイチイチ「フォー!」とか「ハァー!」とか奇声を発するのでアクションが遅かったりします。といっても、彼女は処刑アクション中も弾を撃てるという能力持ちでもあります。正義の覆面マント・Ronaldに至ってはハンマーで文字通り鉄槌を下して悪党たちを挽き肉に変えるジャスティスっぷり。
個人的にイチオシのキャラクターはClive。彼はブラックなスーツに身を包んだチェインスモーカーな二挺拳銃のジェントルマンです。グレネードや地雷などのスペシャルウェポンは使えないものの、両手の拳銃を左右同時に撃つ様はまさにトゥーハンド。ステージによっては白い鳩が舞ってくれる場所もあるのでクールにキメめましょう。Let’s Roll!
犯罪撲滅はクセになる
本作は、短いステージを何ともリトライして突破していくタイプのゲームです。しかし、理不尽なムズかしさに耐えて達成感を味わうような印象ではありません。むしろ、難易度はほどよい湯加減。
「これ無理じゃね?」と思うような超難易度を突破するのではなく、「なんとかなるかも」と思わせてくれる調整になっています。山に登るのはそこに山があるからなのかもしれませんが、登れそうな山だからこそ、登りたくなるというものです。
激しい銃撃戦がメインの本作ですが、戦術よりも戦略が攻略のカギを握ります。正確な射撃やスライディングなどのテクニックも大事ですが、それよりも進攻ルートやキャラクター選びが重要になります。
たとえば、人質を救出するには部屋の裏から突入しなければならないので、通常とは別のルートを考えることになるでしょう。時間制限のあるチャレンジでは足の速いMikeを使い、ヘリを落とすチャレンジでは火力のあるStanleyを起用するなど、キャラクター選びも攻略の1つとなっています。
もちろん、お気に入りのキャラクターで進めても問題はありません。キャラクターごとに違った楽しさが詰め込まれているので、こだわりのキャラクターでクリアを目指すのも1つの遊び方でしょう。
ピクセルアートスタイルで細かいモーションまで作られているのですが、アフロの中からマガジンを取り出すStanleyのリロードや今際の際にもライターをカチカチしているCliveなど、本当に細かい。見ているだけでも楽しめますが、モーションと効果音を合わせた感触のよさもあって、動かしているだけでも楽しいのです。
さらには、小気味のいいアクションにチップチューン系のアーティストによる音楽が後押ししてくれます。DubmoodやBig Giant Circlesによるクールなサウンドがキリングタイムを最高にハイなタイムにチェンジしてくれるぜベイビー。
いや、本当にカッコイイのですよ。楽曲を提供しているアーティストについてはボクのブログでまとめてみたので参考にどうぞ。
【NOT A HERO】カッコイイBGMが最高にクールなので楽曲の提供アーティストをまとめてみた
もともとハイテンポなアクションではありますが、音楽の力がさらにテンポアップに繋がっているのは間違いないでしょう。
こうして『NOT A HERO』は、絶妙な難易度曲線と触り心地のよいアクションとクールなBGMが合わさり、クセになるほど快感なガンアクションになっているのです。実際、クリアしてチャレンジもすべて終えたというのに、ちょくちょく遊んでしまうのですよね。
それにしても、未来を救うために犯罪を撲滅していたつもりが、血で血を洗う21日間を繰り返しているだなんて、未来は救われているといえるのでしょうか。殺戮を快感にしてしまっているのだから、ヒーローではない、といえば、そのとおりなのかもしれません。
それでは、BunnyLordに清き一票を。
[基本情報]
タイトル NOT A HERO(日本語版なし)
制作者 Roll7
クリア時間 3時間くらい(コンプリートを目指すと10時間くらい)
対応OS Win 7以降
価格 ¥ 1,280
ダウンロードはこちらから
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