壊れた銀河の片隅で、きみとふたり。怒涛の展開を1時間に凝縮した短編RPG『ONEXZ』

RPG,フリーゲーム

青年「クリプトン」が目覚めると、そこは宇宙船の中。記憶喪失である彼の前に、銀髪の不思議な少女「ネオン」が現れる。彼女はクリプトンに記憶装置として製造された存在であり、クリプトンの記憶を奪ったのは他ならぬ彼女であることを告げる。そこへ間髪入れずに資源を狙って襲い掛かってくる敵の数々。あても無く宇宙を漂流するなか、果たしてクリプトンは記憶を取り戻すことができるのか――

『ONEXZ』は同人サークル・ペニシリンアトリエの制作による短編RPG。2024年6月19日にPLiCyにてリリース後、他のダウンロードサイトでも順次公開されている。

X-Energyを蓄え、敵を撃退せよ

本作『ONEXZ』では主人公クリプトンとネオンの乗る宇宙船の中で終始ゲームが進行する。フィールドマップが存在しないRPG作品ではあるが、いわゆるノンフィールドRPGと呼ばれる後戻りできない1本の道を進んでいく形式とも趣が異なり、テイストとしては全ての行動をコマンド選択で行う育成ゲームに近い印象になっている。

ゲームはコマンド「戦闘」から戦闘対象として選択できる4種類の敵を倒していくことで進行する。しかしいきなり強敵に挑んでも勝算は無い。弱い敵と繰り返し戦ってレベルを上げたり、「エネルギー生成」を行うなどして得た「X-Energy」を使い、本作での魔法にあたる「イコン」の研究開発やアイテム作成、経験値への変換でキャラクターのレベルアップを行って戦力を高めていこう。脈絡が読めないシュールなデザインの敵キャラクターの数々も印象的だ。

やれることはシンプルながら、X-Energyを蓄えてキャラクターを着実に強化し、新たな敵にステップアップして挑んでいくというサイクルの楽しさは押さえられている。コツコツ積み上げるタイプの作品が好きな人には応えてくれるものがあるだろう。

ハードディスク系カノジョとイチャコラですって!?

本作において重要になるのが研究開発の存在だ。まず「基本記録能力発現」を開発しないとセーブが解放されない。単純に考えれば不便なだけではあるのだが、自らの手で機能を解放することで、同伴するネオンという存在が”記憶装置”であることを印象づける演出ともなっている。

また「言語設計図」を開発してネオンとコミュニケーションを取れるようになると、X-Energyを大量に入手できるようになる。まずはこれらの機能を開発することを目標にしたい。ネオンとの会話の内容は30種類程度のバリエーションが用意されているので、繰り返し会話して様々な反応を引き出してみよう。

ネオンとは会話だけでなくスキンシップも取ることができる。…拙者も男子故やましい気持ちが無いといえば嘘になるが、自分達以外に誰も居ない世界では人肌恋しい時だってあるのだ。あるのだ!

「X」、「N」、そして「Z」の示すもの

宇宙船の外に広がるものは、ビッグバンによって崩壊した宇宙。ネオンがこぼすところによれば、この宇宙には破壊神、創造神、調和神の3柱の神がおり、創造神と破壊神の決して相容れぬ立場同士の争いによってビッグバンが起き、ほとんどの生物が死滅したのだという。宇宙の有り様を巡る壮大な争いのなかで果たして何が起きていたのか。それを確かめるためには、ネオンが奪ったという自身の記憶を覗くかどうかが分水嶺となる。

人智を超える強大な力と力同士のぶつかり合い。創造神の悲哀。新旧の神々の帰還。新たな闘いの幕。封印していた記憶を取り戻した時、溢れ出るように事態は動き出す。

本作を言葉で形容しようとするのなら、筆者には「怒涛」以外に思いつくことができなかった。実は今でも心の整理がつかないままに本稿を書いている。もし興味が沸いたという方は手に取ってみてほしい。短編であるからこそ凝縮された激しい展開に気圧されることだろう。決して時間はとらせない。

[基本情報]
タイトル:ONEXZ(オネッツ)
制作者:ペニシリンアトリエ
クリア時間:  1時間~
対応OS: Windows 、ブラウザ
価格: フリーウェア

↓ダウンロード・プレイはこちらから
(PLiCy)
https://plicy.net/GamePlay/181866

(フリーゲーム夢現)
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_12474.html

(BOOTH)
https://booth.pm/ja/items/5864208

(ふりーむ!)
https://www.freem.ne.jp/win/game/32743

(itch.io)※英語版

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。