話題のクラウドゲーミングプラットフォーム「OOParts」にインディーノベルゲーム『西暦2236年』が登場、その経緯とは
4月24日、クラウドゲーミングプラットフォーム「OOParts」が正式にサービス開始した。
OOPartsはPC、スマートフォン、タブレットなど、さまざまなデバイスでアドベンチャーゲーム(美少女ゲーム)をプレイできるサービスだ。対応OSの問題で現在プレイが難しい過去の名作もプレイ可能で、発表当初から話題を集めていた。
月額課金のいわゆるサブスクリプション方式のサービスで、より詳しい内容は運営会社のプレスリリースをご覧いただきたい。
クラウドゲーミングプラットフォーム「OOParts」を正式リリース。月額¥1,000から100タイトルを超える美少女ゲームが遊び放題。
※OOPartsのサイト自体はR18ではありませんが、作品によっては年齢制限が設けられている(本記事で紹介する『西暦2236年』も含む)のでご注意ください。
商業作品に交じって異彩を放つインディーノベルゲーム『西暦2236年』
OOPartsにラインナップされているタイトルは、ストーリー重視の商業美少女ゲームがメインだ。
しかしその中に、『西暦2236年』という作品がある。
ゲームサークルChloroが2015年にリリースしたSFインディーノベルゲームで、2018年にはシステムを一新し英語版を追加した全年齢対象版がSteamでもリリースされている。
なお関連作品である『西暦2236年の秘書』がフリーゲームとしてリリースされているので、興味を持たれた方はまずこちらからプレイするのもいいだろう(PC版 / iOS版 / Android版)。
――西暦2236年4月1日
――99通のメールが届いていた。
――99通まったく内容が同じそのメールの送り主は……彼女だった。
謎めいた書き出しから始まる本格的な未来SFで、筆者もプレイ済みだが、その挑戦的な内容にはとても驚かされた。
しかし商業作品メインであるOOPartsに、なぜこのインディーゲームがラインナップされているのか? そしてこれは、どのように実現したのか?
インディーノベルゲームファン&制作者が少なからず興味を持つだろうこの点に迫るべく、Chloro代表のもきね氏にインタビューを申し込んだところ、快く応じていただけた。
Chloro代表・もきね氏インタビュー
――そもそもどのような経緯で『西暦2236年』がOOPartsで公開されることになったのでしょうか。
こちらの方から熱く売り込みに行きました。
きっかけはネットニュースか何かで「OOPartsというサービスを開発します」という情報を見たことだったと思います。
記事を見てすぐさま革新的なサービスを始めようとしているということに気付きまして、第一印象は「くそーうらやましいなー」というものでした。
クラウドゲーミングサービスというだけでも新しいですし、美少女ゲームの過去作が動作環境の関係で今ではやりづらい問題、スマートフォン移植がしづらい問題を見事に解決している素晴らしいアイディアだと思いました。
また、美少女ゲーム以外でもこれらの問題はあると思うんですが、操作や動きの少なめな美少女ゲーム(ノベルゲーム)だからこそすぐに実現できるという点も、目の付け所が優れていると感じました。
イノベーション的なものには大変興味がある僕だったので、うらやましいーというのが最初の感想だったのですが、よくよく考えたら我々Chloroが制作した『西暦2236年』も一応、美少女ゲームの文脈に乗っている作品でしたので、
「頼んでみたら意外とOOPartsに載せてもらえたりするんじゃないか」
と思い、次の瞬間には運営会社のブラックさんにメールを送っていました。
門前払いも覚悟していたのですが、代表の小川さんはとても気さくな方でわりとすんなり受け入れてくれまして、オフィスにお邪魔して、説明を聞いて、このビッグウェーブの賑やかしに参加したい旨を話して、いろいろあってOOPartsに作品を載せてもらえることになりました。
『西暦2236年』や『西暦2236年の秘書』では、嬉しいことにプレイしてくれた方々が熱のこもったレビューをたくさん記事にしてくれていたこともあって、小さな同人ゲームながらもアピールが伝わりやすかったのかなと思います。
これまで応援してくださった方々の形ある声がこういった次なる展開に繋がったのだと感じています。改めて、プレイヤーのみなさん本当にありがとうございます。
――OOPartsでの公開にあたって、サークル側の作業はどういうものがあったのでしょうか。
これもまた画期的なんですが、作ったゲームを渡すだけで終わりでした。
よく考えれば当たり前なんですが、PCでのデバッグが済んでいるゲームですからOOPartsでもちゃんと問題なく動いてくれるんですよね。
――実際にOOPartsでプレイしてみて、感触はどうでしたか。
映像も音声もかなり高い再現度でプレイすることができて驚いています。
さすがにPC上の動作とまったく同じというわけにはいかないものの、遜色なく楽しめる感じと言いましょうか。操作のタイムラグも気にならない程度です。
スマホやタブレットではそもそも『西暦2236年』自体が指での操作に最適化されていないという問題はあるんですけれども、基本的にはクリックするだけなので慣れると問題ないですね。モバイル端末で寝転がりながらゲームができるのはやっぱり嬉しいです。
―― 『西暦2236年』に使用されているノベルゲームエンジンはどのようなものでしょうか。
汎用ゲームエンジンのUnityとUnity用ビジュアルノベルツール「宴」を使用しています。
もともとはChloroの別作品『あかほん!プロトタイプ』を作るにあたって、既存のノベルゲームの枠組みでは実現しにくい部分が色々とあったため、Unityと宴をベースに制作をすることにしたんです。
そしてそのタイミングで、『西暦2236年』を『2236 A.D.』としてSteamで販売することが決まりまして、Steamで販売するとなると日本語と英語の両対応だとか容量削減だとか細かいことをいろいろ実現したくなりまして、『西暦2236年』の方もUnity+宴に移植することにしたんです。
Unityのいいところは、基本どんなゲームでも作れるようにできているので「こういう機能つけたいなー」というのを簡単に実現できるところですね。また、マルチプラットフォームにビルドできるのも心強くて、同じプロジェクトファイルからWindows、macOS、iOS、Android用のゲームを作ることができます。『西暦2236年の秘書』をスマートフォンアプリとしてリリースできたのもUnityと宴のおかげです。
Unityのよくないところはちょっと難しくてハードル高めなところかな……。
普段からプログラミングに慣れている人であれば、わりとすんなり使えるようになるんじゃないかと思います。
――これから『西暦2236年』をプレイするユーザーに向けて、注目ポイントを教えていただけるでしょうか。
未来、過去、夢、自分、恋愛、そういった言葉に関してあなたはどんなことを思うでしょうか?
自分の過去に苦しめられたり、未来に期待したりしているんじゃないでしょうか。
このゲームは自分自身と深く向き合い「答え」を見つけた少年少女の物語です。
わたしをフカンするノベルゲーム『西暦2236年』。
美麗なグラフィックと音楽が考えさせられるシナリオと相まって、心に残る物語体験をお届けすることでしょう。
あとマスコがかわいいでしょう。
この機会にご興味を持っていただけた方はOOPartsでぜひプレイしてみてください!
ちなみに『西暦2236年の秘書』は無料でプレイできますので先にそちらの方から試してみるのもオススメです。
OOPartsにインディーノベルゲームが増える可能性も?
運営会社から熱烈なアプローチがあったのだろうか? 筆者は当初そう考えていたのだが、サークル自ら売り込みに行き、それが快く受け入れられたというのは驚きだった。
クオリティが優れているなら、OOPartsは商業作品だけでなくインディー作品も歓迎しているということかもしれない。
OOPartsはまだ始まったばかりのサービスのため、今後は流動的に発展していくと思われる。商業作品では見られない尖ったインディーノベルゲームが少しずつ増えていくということも、十分に考えられるだろう。