空気が無くなるまでの数分間を味わう“俳句型”短編ゲーム『Orchids to Dusk』
現在、ゲームはとても多様化している。敵と戦いながら冒険するゲームやキャラクターの成長や物語を楽しむゲームといった昔ながらのゲームも沢山あるが、一方で「何もせず放置するゲーム」や「リアルで歩くゲーム」「見知らぬ誰かに手紙を送るゲーム」など、旧来のゲームという枠組みを越えた作品も多く出てきている。
今回紹介するタイトルもそういった「枠組みに囚われない」タイプの作品だ。
ただ「死ぬ」だけのゲーム
『Orchids to Dusk』は、数分ほどのプレイで終わる短編ゲームだ。プレイヤーは宇宙飛行士。宇宙船が墜落して見知らぬ星に不時着するところからゲームが始まる。その星には空気も文明もなく、宇宙船は大破。宇宙服の空気はあと数分しか持たない。助かるのは絶望的な状況…。
もう少し正確に言おう。プレイヤーは絶対に助からない。延命する方法すらもない。
プレイヤーは酸素が尽きるまでの数分間、その星をさまようことになる。絶対に助からないということがじわじわと突きつけられていく状況の中で、どこに行き、何を見て、どうやって死ぬのか。「死ぬまでの数分間」を体験するゲームなのだ。
まるで俳句のような作品
このゲームにはいわゆるゲームらしい競技性や攻略性といった概念はない。プレイヤーができることは、ただ星をさまよって、死を迎える、それだけだ。物語が語られることもなく、深い世界設定があるわけでもない。
しかし一方で、寂しげながらに美しい風景や、プレイヤーの行動で変化する幻想的なBGMと環境音などによって情緒溢れる体験を味わえる。また、施された「とある」仕掛けにより、意味が分かるとハッとなるような要素もある。既存のゲームを「映画」や「小説」とするなら、このゲームは「俳句」に近いもの、と筆者は感じた。
良さが分からない人には分からないが、その一方で深く感動できる人もいるはずだ。少なくとも筆者は後者の方であった。
『Orchids to Dusk』は購入者が価格を自由に決められる販売方式で、あなたが望むならば無料でダウンロードすることも可能だ。起動からクリアまで10分以内に終わるし、難しい要素も一切ないので、軽い気持ちでプレイしていただけると幸いだ。夜寝る前のゆったりした時間にプレイするのがピッタリだろう。
楽しむためのヒント
ネタバレにならない範囲で、このゲームを楽しむためのヒントを2点ほどお伝えしておきたい。
・このゲームは公式の説明文に書かれている通り、ネット接続環境が必須な「オンラインマルチプレイゲーム」である。プレイヤーは歩くだけでなく、数秒間立ち止まることで「座る」ことも可能である。
・また、自分がもし同じ立場になったらどうやって死を迎えたいか考えながらプレイしてみるとより楽しめるかもしれない。
先ほど「自由に価格を決められる」と書いたが、ゲームをプレイした後でもお金を支払うことが可能だ。もしプレイして心打たれたならば、再度購入ボタンを押してクリエイターにお金を届けてあげるとお互いに幸せになれるだろう。
[基本情報]
タイトル:Orchids to Dusk
制作者:Pol Clarissou
プレイ時間:10分程度
動作環境:Windows / Mac / Linux
価格:0円以上(ユーザーが任意に決められる)