フリゲアドベンチャー『ライブラリウム』水に沈む図書館が舞台の、男女のすれ違いの物語

アドベンチャー,フリーゲーム

高校生や大学生にもなると、誰でも長時間涼める場所を、知っているものと思う。筆者の場合、「図書館」がそうだった。

夏休み、ウチでは電気代をケチって冷房はほぼ使わなかったので、この公共施設の、税金(学校なら学費)で動いているエアコンを、大いに活用することになったのだ。

夏休みの図書館で、思い出に残っているのは、ひたすらライトノベルを読んだことだろうか。同じ作品を何度も読む性格だったので、すぐにその本がどこにあるか、棚の分類番号を見ることなくたどり着くことができるようになった。今でも『六門天外モンコレナイト』のラノベ版や『ドラクエⅥ』のノベル版がどこにあるか、そらで覚えている。

活字は見るのもキライ! という人間でないのなら、図書館はそれなりに楽しめるところだ。

街の本屋とかだと、自分の興味のある本が無かったりするが、図書館はバリエーション豊富に取り揃えている。

図書館には、何かしら見るべきものがあり、発見がある。
 
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『ライブラリウム』は、「水に沈んだ図書館」が舞台の、謎解き探索アドベンチャーだ。

「水に沈んだ図書館」。このシチュエーションだけでもわくわくする。まさに夏にやるのにピッタリな作品だ。
 
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女子高生のマコは、気がついたら不思議な場所にいた。白い大理石で出来た神殿のようで、辺りは水に包まれているけど、なぜか息ができる。疑問に思っていると、幼なじみのヒロが現われる。

先にこの場所に来ていたヒロによれば、どうもここは図書館らしい。

案の定、廊下を進むと本棚がたくさんあって、本が「日本十進分類法」にのっとって並んでいる。

二人はなしくずしてきに、この図書館を脱出すべく、上の階を目指すのだった・・・

この物語の優れているところは、まずそのシチュエーションだろう。

「水の中の図書館」という魅力的な舞台設定に、「閉鎖空間」という、脱出ゲームでは手堅い手法を採用している。巻き込まれたのは幼馴染の男女で、今後の進展も気になる。

さて、進んでいくと、この図書館は尋常ではないとわかる。

ところどころに鍵がかけられており、謎を解かないと先に進めない構造だ。図書館の利用者はどれも半透明で、しかもあまり人の話を聴いてくれない。

その彼らのうち一人は「子子子子(答えはゲームで)」という名で、まるで難読名クイズのためにそこにいるような人物だ。

他にも、宮沢賢治の童謡を読んでいる男の子や、絵に描かれた女性などが、謎かけをしてくる。

ただ、謎かけ自体はやさしい。本棚には確実に、答えとなる情報があるし、もしあなたが文学作品の多少の知識があるのなら、本棚を見ずとも答えがわかるかもしれない。

ただし、一ヶ所をのぞいて。
 
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一ヵ所、ちょっとした暗号があるので、注意が必要だ。もちろん本棚と図書館マニアのヒロは、ちゃんとヒントをくれるものの、彼らが言わんとする日本語を的確に理解するのに、時間がかかるかもしれない。

本質的な問題は、図書館に散りばめられた謎より、図書館そのものが存在する理由だ。

軽いネタバレのようなネタバレでないようなことを書くと、この図書館には、実質的にマコとヒロの二人しかいない。他の登場人物は、いわば半透明の影のようなものだ。
 
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図書館を探索し、上へ上へと登っていくごとに、マコはヒロが何か知っているのを感じる。知っているにとどまらず、「隠している」雰囲気さえある。

このゲームの醍醐味は、図書館に散りばめられた謎を(図書館の雑学を交えつつ)解くのと同時に、図書館そのものが出現した意味を、探り当てることだ。
 
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ヒロは病弱であり、マコはそんな彼に想いを寄せている。しかしヒロには思うところがあるようで、マコも、そんな彼に言葉を伝えられずにいる。

この図書館はいったいなんなのか? なぜ水の中で息ができるのか? どうしてここにやってきたのか?

その答えは、館内各所に散りばめられたイメージやモチーフとともに、解けることになるだろう。

『ライブラリウム』は、プレイ時間が3時間ほどの短編だ。バッドエンドは二つほどあり、追いかけ要素もあるが、注意深く進めばクリアはむずかしくない。ただ、終盤は、セーブを小まめにしておいた方がいい、と、アドバイスしておこう。

物語の各所に哲学や文学の雑学が散りばめられている。個人的にはもう少し「深く」掘り下げてもよかったかなと思うが、とくに哲学は興味のない人にはまったく興味のない話なので、ちょうどいい、とも言える。

BGMは、「水の中の図書館」の雰囲気に非常にあっている。一部に本ゲームオリジナルの楽曲が使われていて、「Nemophila」、「目隠し」、「表層心理」、「深層心理」の4点だ。

それらに耳を傾けつつ、残暑が続くじめじめした夕方などに、プレイしてみるのがいいだろう。
 
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「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語らしい、透き通った物語を、味わえることをお約束する。

【基本情報】
タイトル 『ライブラリウム』
制作者 sinononn氏
製作ツール RPGツクールVX
クリア時間 2時間~3時間
対応OS  Windows
価格 無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/13652

制作者様サイト
http://nanos.jp/sosakusinononn/page/9/

  • 加古台

    「ポケモン」と「遊戯王」が発売されたとき小学生だった世代。日本全国のいろんなところに住んだことがあり、名前もその地名から取った。フリーゲームは「VIPRPG」から入った。友人の数は極端に少ないが、TRPGもたまにやる。