これぞランダム(無秩序)のマックス(極み)な爽快感と遊びやすさを凝縮した縦シューティングゲーム『ランダマックス』

Steam,インディーゲーム,シューティング

時は西暦2050年。銀河の片隅にある「セプルク宇宙諸島」に悪名高き「ランダマックス海賊団」が襲来。またたく間に島々が海賊団の支配する魔の海域へと変貌してしまった。

ところが、そんな危険な海域になぜか3人の個性強すぎな女性たちが殴り込みをかけてきた。しかも、膨大な武器弾薬を提供(誤配送)しまくるナゾめいた運送会社のおまけ付きである。

かくして海賊団と個性強すぎ3名の女性たちによるカオスな戦いが幕を開けた……のか?

なんとも奇妙なオープニングとともに始まる本作『ランダマックス』は、2025年1月16日よりSteamで販売中のシューティングゲームだ。

開発は「ASTRO PORT」(アストロポート)。当もぐらゲームスで過去に紹介した『ROCKETRON(ロケットロン)』(紹介記事)など、多くのシューティングゲーム、アクションゲームを作り続けている老舗のインディーゲーム制作サークルである。

ランダム供給される武器、オプションを使い分けながら迫りくる海賊団を撃て!

シューティングゲームとしては縦スクロールのステージクリア型となる。プレイヤーはランダマックス海賊団が支配する海域に現れた3人の個性強すぎな女性、「コズミ」「ウララ」「ダリア」のいずれかを操作し、全7ステージの攻略に挑む。

なお、最後のステージ7は3人ごとに異なるため、正確なステージ総数としては6+3の9個となる。

各ステージのクリア条件は、終盤に現れるランダマックス海賊団の幹部があやつるボスを倒すこと。シューティングゲームとしては伝統的なルールだ。そもそも、根本のゲームデザインも「伝統的」のひと言に集約される。

しかし、例によって(?)システム周りは対照的に今風である。その特徴を簡潔に言い表すならば、ずばりランダムでマックス。

要は毎回違った展開が起きる作りをしている。とりわけ象徴的なのはパワーアップシステム全般。一般的なシューティングゲームなら、特定の敵を倒した時に落とすアイテムのゲットによる強化が想像される。

本作は敵を倒してもパワーアップアイテムは絶対に落とさない。では、どうやってパワーアップするのか?それは冒頭で触れた、ナゾめいた運送会社こと「アルゴ運送」の協力を得る形である。

各ステージでは決まって、アルゴ運送のオフィスが道中に出現する。ここを訪れると、運送会社の職員「エリカ」から誤配送された武器、オプションを押し付け……もとい、供給される。

これを装備してパワーアップを図るのだ。なお、どんな武器が供給されるかは完全にランダム。また、本作で操縦する自機には、3つのスロット(装備枠)ごとに固有の武器がセットされる。だが、武器には使用制限があり、ずっと使い続けることができない。仮に使用制限を指すゲージが空になると、その武器はスロットから消失してしまう。

そのため、武器の調達は極めて重要。それを踏まえてアルゴ運送のオフィスに立ち寄っては武器を増やし、強化を図っていくのが本作の基本戦術なのである。

ちなみに前述したように、オフィスでは武器以外にオプションも供給される。こちらは使用制限なしに使えるうえ、同じオプションを重ねがけすれば強化もできる。ただし、これも武器同様、何が供給されるのかはランダム。狙ったものを手に入れることはできない。

また、敵はパワーアップアイテムは落とさない一方で、「エナジー」「スペシャル」というアイテムは落とす。これらは回収し続けることで、自機が様々な恩恵にあずかれる。

「エナジー」であれば敵弾を1回防いでくれるシールドの展開、「スペシャル」ならステージ攻略や敵との戦闘をサポートする「スペシャルモード」の発動といった具合だ。

ただし、「スペシャルモード」に関しては何が発動するかは(これまた)ランダム。効果は全6種類あるのだが、狙ったものを出すことはできないのだ。こんなところにも本作はランダム要素が仕込まれている。

ほかに本作には全5種類+αの難易度が用意されているのだが、高い難易度になるとステージがランダム選出されるように。

さすがに地形構造や、敵の出現パターンも変化するような仕掛けはないものの、ボスに関しては40種類以上も存在するため、急に見たことのない相手に襲われるみたいな事態に遭遇するようになっている。ちなみに武器の方は70種類以上ある。

前述したようにシューティングゲームとしての骨組みは伝統的だ。しかし、至るところにランダム性強めの要素が仕込まれていて、まさに何が起こるか分からないスリルと面白さを持った内容に仕上げられている。

イマドキの言葉を用いるならばローグライトといった具合だ。しかも、相手にするのが海賊団という名のならず者(ローグ)で、そのために正義(ライト:Right)を振るうというストーリーである。

……え、そういう意味じゃない?細かいことは気にしちゃいけません。

これぞランダム(無秩序)のマックス(極み)!仕組みとは裏腹に遊びやすい作りが異彩を放つ

そして、ランダム性強めの作りという点で、本作には「難しそう」との印象を持ったかもしれない。そもそも、ローグライトなんて用語を出した時点で、「難しくないゲームだなんて言わせんぞ!」とクギを刺されたも同然である。

それでも言い切ろう。本作は仕組みほど難しいゲームではない。かと言って、力押しでガンガン進めていけるほどに易しい訳でもない。ただ、全体的にはとても遊びやすくて、気軽に楽しめるゲームに仕上げられている。それが本作の大きな魅力だ。

なぜランダム要素という、難しさの引き金となりそうな要素を持ちながら遊びやすいのか?理由はランダム支給される武器の多くが強力なものばかりで、「ハズレ」と言われる類のものが存在しないためだ。

厳密にはある意味ハズレに等しい、クセつよ系の武器は存在する。だが、本作は武器を3つのスロットに装備でき、それぞれを使い分けることが可能。そのため、仮にクセつよな武器が支給されたとしても、ほかのスロットに装備された武器を使えばいい。使用自体が強制されないので、プレイヤーのスタイルに沿った戦い方を堅持できるのだ。

だから難易度がハデに上下することもない。仮に上下するなら、それはスロットへの割り当て方に問題があるという形で明示されるのだ。このような仕組みもあって、ランダム性が強いのとは裏腹に遊びやすい。つまるところ、不測の事態が起きたとしても、アドリブの対応があまり求められない作りになっているのだ。

「本当か?」と疑問を覚えた人も、とりあえずは騙されたと思って触れてみていただきたい。意外にランダム要素がこちらの戦術をかき乱さない設計に驚くとともに、思わぬやさしさにホッコリしてしまうだろう。

また、武器が強力なもの揃いだからこそ、後半になるとランダム(無秩序)のマックス(極み)な大暴れが楽しめるのも面白い。過激な武器を撃ちまくって、襲い来る敵を無慈悲に撃ち落としていく快感は、まさに本作の工夫あっての賜物だ。

▲古いものほど下に回されていく光景にこの世の真理が……

スロットのシステムが演出する戦術性と真理(?)も必見。戦術性に関しては、強力な武器が支給されたら使わずそのままにし、ここぞという時に使って一気に仕留める温存が実に痛快。事実、武器の中にはボスを数秒足らずで撃墜してしまう過激なものもあるため、手に入れればまさに「勝ったな!ガハハ」の極み。それが手に入るか否かがランダムで分からないのもまた、快感を一層引き立てていて興味深いところだ。

真理にしても、武器は基本的に新しく支給された武器優先に使われ、古いものは数が増えるほど後へと回っていくところに「新しく手に入れたものは率先して最後まで使い切るべし」という考え方が潜んでいるのがなんとも深い。

この考えの深みを知った時、あなたはきっと今、積んでいる書籍やゲームなどの数の現実を意識することになる……かもしれない。大丈夫ですか?3桁行っていませんか?

ほかに本作の遊びやすさを引き立てるもので、全5+α種類の難易度が選べるところもある。特に標準の「NORMAL」は、シューティングゲームの経験が浅い人でもラクラク1周クリアが見込める程度に易しい。逆に慣れている人なら物足りないと感じてしまうほどだ。

そもそも本作、敵弾を1回防いでくれる「シールド」を展開しやすく、結構やられにくいのだ。特にプレイヤーキャラクターのひとり「ダリア」であれば、二重にシールドを展開させられるのもあって、より撃ち落とされる不安が軽減される。

それだと物足りない……と感じた人向けにもHARD以上の難易度があるので、いざとなれば“無秩序のキョクゲン”を突き詰めることも可能だ。こうした遊び方の選択肢が広いのも、本作の魅力のひとつ。

ランダム性の強さなどから、警戒心を持ってしまうのは無理もない話だが、再び言い切ろう。本作は仕組みとは裏腹に遊びやすい。また、本作は無料の体験版も用意されている。そのため、気になるけどランダム要素が……という人は、まずは無料体験版でその仕組みを確かめていただきたい。そこで遊べそうと思ったら、製品版に行くのがいいだろう。

そして、そのままランダム(手あたり次第)でマックス(極限)の戦いを満喫しちゃいましょうぜ!

あらゆる意味で名が体を現しまくっている痛快シューティングゲーム

ちなみに本作はストーリーもランダム(無秩序)でマックス(混沌)である。そもそも、オープニングの内容からして察してほしい。シリアス成分皆無で、ツッコミどころてんこ盛りの内容である。

特にプレイヤーが扮する3人の女性たちの個性の強さは決して伊達じゃない。「これ、悪役側が霞んじゃねってねえか?」と心配になってしまうレベルのため、色んな意味で胸焼けにご用心である。

あと、本作には衣装破壊(軽微)の要素もある。よってプレイ中は、背後に誰かが立っていないかにもご用心です。

このようなキャラクターたちの立ち絵が頻繁に挿入されるグラフィック周りの作りもなかなか。特に「スペシャルゲージ」などが満タン近くになると、ディフォルメされたキャラクターの顔グラフィックが現れるのだが、これがプレイヤーに現状を伝えるアナウンスとして効果的に機能している。

シールドがある状態で「エナジー」のアイテムを取り続けると発動する「マキシマムモード」も、画面いっぱいにキャラクターの立ち絵と派手なエフェクトが表示されるのもあってとても派手。この演出から通常画面に戻った後、敵弾が目前に迫っているみたいな状況になりにくいのも配慮が効いている。

ただ、「エナジー」「スペシャル」というアイテムが大量に飛び交うこともあって、視認性には若干の難も。特にHARD以上の難易度では、敵側の攻撃も激しくなるのもあって判別しにくさが増す。

一応、視認性を向上させる設定機能も用意されているが、それでも多少の見にくさは残るため、さらなる調整が必要に感じるところだ。

また、ランダム要素によって毎回、違った展開が楽しめる一方で、ステージ構成は淡白で起伏に欠けるという難点がある。欲を言えば、もう少し特殊な仕掛けか、変則的な構成のステージがあっても良かったように思う。ほかにHARDを上回る最高難易度は、文字通りのランダムでマックスなストレス大きめの難しさなのだが、これ自体は達人向けを名乗るものゆえ、若干の仕方が無さがあるのが救い……かもしれない。

そういった粗っぽいところとクセつよな部分はあれど、タイトル通りの体験が凝縮された作りは素晴らしく、何より気軽に遊べて、いくらでも遊び込めてしまうのは特筆に値する。

これらの特徴的な要素に惹かれたのなら、ぜひお試しを。そして、思う存分にランダムでマックスしよう。

[基本情報]
タイトル:『ランダマックス』
開発:ASTRO PORT(※販売:Henteko Doujin、Sanuk Inc.)
クリア時間:30分(1周)、7~15時間(完全攻略目的)
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):980円

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