ボス戦続きの遊びやすさ上々で(色んな意味で)中身てんこ盛りの弾幕STG『REDNEG ALLSTARS SWING-BY EDITION』

インディーゲーム,シューティング

▲『コスモドリーマー』(Steamストアページより)

2020年以降はコスモドリーマーライクドリーマーと、Nintendo SwitchおよびSteam向けの作品を出している同サークルだが、それ以前にはフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」で『REDNEG(レッドネグ)』シリーズと呼ばれる弾幕シューティング作品を複数配信していた。(※シリーズ全作は2024年現在も「ふりーむ!」で公開中)

そんな『REDNEG』シリーズの4作目で、2019年にフリーゲームとして公開された『REDNEG ALLSTARS(レッドネグ オールスターズ)』に多数の要素を追加し、ビジュアル面の一新を図ったリメイク版が2024年6月21日より、Steamで販売開始となった。

それが『REDNEG ALLSTARS SWING-BY EDITION(レッドネグオールスターズ スイングバイエディション)』だ。

なお、先にお伝えしておくと、本作はシリーズ4作目とされているものの、1作目から順に遊ばないと理解ができない類の要素は一切存在しない。大事なことなので繰り返すが、一切存在しない。よって、本作から始めても支障はないので、興味を抱いたら迷わず突撃を。

ボス戦のみ!道中は無し!割り切ったゲームデザインが光る弾幕シューティングゲーム

改めて本作、『レッドネグオールスターズ スイングバイエディション』の内容を紹介すると、縦スクロール形式の弾幕系シューティングゲーム。

科学と魔法、様々な種族が共存する惑星「レッドネグ」で発案された、仮想世界上で開催される弾幕戦競技「バレットヘルゲーム」の参加者のひとりになって、敵対する30体のライバルたちとの一騎打ちに挑むというものだ。

そのストーリー設定が示唆する通り、本作はボス戦に特化したゲームデザインになっている。進行はステージクリア形式なのだが、弾幕系に限らず、シューティングゲームでは定番の道中がまったく存在せず、立て続けにボスたちと戦っていくという、初っ端からフルスロットルな構成になっている。

そうしたゲームデザインを象徴するかのように、本作のメインモードも堂々たる「BOSS RUSH」である。「ARCADE(アーケード)」なるゲームモードは存在しない!(でも、セッティングを覗いてみると……)他にあるのは「ENDLESS」とあれやこれやである。詳細は「BOSS RUSH」を一度クリアしてみよう。

自機こと参加者キャラクターの基本アクションはショット、高速と低速移動、そしてボム攻撃と、ジャンルの定番を押さえている。キャラクターは初回プレイ時は2人が選べ、それぞれショットやボムの性能が異なる個性付けが図られている。

また、システム周りの特徴として「マジックレベル」と「ランク」の2つがある。「マジックレベル」は「マジックゲージ」という、ボスを攻撃したり、倒すと現れる「魔法石」と呼ばれるアイテムを回収すると貯まっていくゲージが満タンに達する、もしくは「マジックレベル+1」というアイテムを獲得することで上昇。そして、レベルが1以上になれば自機の周りにシールドが展開されると同時にボム攻撃が使用可能になる。要はボムを使いたい時、自機の被弾を防ぎたい際に上げておくと得する要素である。

なお、シールドは被弾するとマジックレベルを1消費してミスを帳消しにしてくれる。逆にレベルが0だとシールドは消え、その状態で被弾すれば……察する通りである。そして、ボムを使った時にもマジックレベルは1消費される。つまり、下手に使い過ぎるとシールドが消える恐れがあることを意味する。ただ、ボムを使えば、発動中は敵弾をすべてかき消し、自機が一時的に無敵になる。そんなメリットとデメリットがあり、状況によってはどちらを取るかを試されたりもする、侮りがたい戦術性を持ったシステムになっている。

もうひとつの「ランク」は、値が高いほどボスの攻撃が激化するという、言うなればプレイヤーの腕前を数値に現したものだ。ランクはマジックゲージ同様、「魔法石」獲得で貯まっていく「ランクゲージ」が満タンに達すると上昇。さらにミスせず、生き残り続けるとゲージの増加量が2倍になるという仕様がある。逆に被弾によるミス、シールドの破壊などでランクは減少。ただ、それによってボスの攻撃は落ち着くという恩恵が得られる

一部のゲームモードでは値が固定され、減少しないパターンもあるが、これにより、波の激しい戦闘が常時展開。そして、攻撃に変化が現れるなりに気も抜けないという、スリルを高めるシステムになっている。

これらのシステムと、ボス戦特化というゲームデザインもあって、独特なプレイ感を演出。進行はシューティングゲーム王道のステージクリア型だが、終始スリルの連続な構成もあって、刺激の強い体験を堪能できる作品に仕上げられている。

各種システムと良好な視認性が実現した遊びやすさ

刺激が強いと表したが、本作は弾幕シューティングゲームとしては遊びやすい部類に入る作品だ。誇張抜きに、弾幕シューティングゲームの入門編としても強くオススメできる。遊びやすさと、弾幕を潜り抜ける快感に秀でているためだ。

遊びやすさについては、「マジックレベル」と「ランク」、そして道中を廃したボス戦特化型のゲームデザインがその象徴だ。マジックレベルに関しては「マジックゲージ」の蓄積という、専用アイテムを取って上昇させるのとは別の手段を用意しているのが良心的。おかげでシールドとボムの恩恵にもあずかりやすく、ある程度、豪快な立ち回りも許容したゲームバランスを確立させている。

万が一、ミスしても、復帰時にレベルを上げるアイテムが現れるため、すぐ態勢を整えられるのもありがたい。何より本作の場合、ミスした時にもランクシステムのおかげで一定のメリットが得られる。ボスの攻撃が落ち着くからだ。(前述したように、一部のゲームモードではランクの恩恵を得られないこともあるが。)

このようなプレイヤーのやる気を殺がれにくくする施策が万全で、とても遊びやすい。なにより、ミスを重ねるほどボスに敗北する危険が増すのではなく、勝てる可能性が増す作りになっているだけでも、「粘ればいけるかも?」という気持ちになるだろう。そのような”やさしさ”が滲み出ているのだ。

被弾を防いでくれるシールドが存在することも、”やさしさ”を物語る部分だ。「マジックレベル」が1以上溜まっていれば、1発被弾すればミスとは絶対にならないのもプレイ中の安心感を引き立てる。

ボス戦に特化し、道中を廃したゲームデザインも実は”やさしさ”を演出している。道中がないからこそ、自機の強化する手間が必要ない上、その途上のミスで折角の準備が帳消しにされる辛苦を味わうことがない。そもそも、本作には自機のショット攻撃をパワーアップさせるシステム自体がないのだが、それも全体的な遊びやすさに繋がっている。弱体化しないからこそ、ミス自体が「いけないこと」ではないためだ。

ランクもそうだが、このミスを責めない作りには、シューティングゲームに苦手意識を抱いている人ほど有難味を感じやすい。同時に、弱体化の概念がないことを好む人には、本作は刺さりやすい作品と言ってもいいだろう。

とは言え、弾幕系というのが……と、身構えるかもしれないが、難易度選択機能はもちろんのこと、先のマジックレベルのシールドのこともあって、軽い気持ちで挑める。しかも、本作は30体以上のボスと戦い、勝利することがメインモード「BOSS RUSH」の最終目的になるが、特定の条件を達成することで、その先の戦いに挑めるようにもなる。

仕組み的に難易度「ノーマル」以上でないとダメそうに見えるが、実は「イージー」でも挑戦可能。最も簡単な難易度でも全く問題ないのだ。そのようなプレイヤーを選別するような要素がないことも、軽い気持ちで挑める証左になっている。

なんと言っても本作、弾幕がとても回避しやすい。当たり判定が小さく設定されているから……もそうなのだが(というか、当たり判定が小さいのは弾幕シューティングゲームでは定番の仕様である)、弾自体の視認性が凄くいい。

枠がハッキリ描かれ、色遣いにもこだわったデザインで、見落としにくいのだ。一部攻撃では事前予測の射線も表示するなど、突発的な攻撃を喰らうことによるストレスを軽減させる工夫も凝らされている。そして、自機の当たり判定も常時表示される仕組みなので、「なぜか当たってしまった」という違和感も抱きにくい。

この視認性自体は他の「あうとさいど」作品でも共通するものなのだが、本作もその良さはきちんと継承されていて、回避しやすくて見やすい弾幕を実現させている。

「本当に見やすいの?」と疑問に思うかもしれないが、そんな人のための無料体験版も配信されているので、気になれば確かめてみていただきたい。ここまで書いたことが誇張でないことが分かるはずだ。視認性がいいからこそ、合間を潜り抜ける際にも納得感があると同時に達成感も高い。慣れてくると、その気持ちよさを味わいたいがために繰り返し遊んでしまうかもしれない。

他に30体以上のボスたちも攻撃パターンが多彩に加え、デザインも個性的で印象に残りやすい。というか、特定の人は一部のボスを見た瞬間、性癖を強烈に刺激させられる。それも「あうとさいど」作品お馴染みのもので、経験者なら相変わらずな作風にニヤニヤしてしまうだろう。

だとしても弾幕系は……と思うかもしれないが、それに対する回答は同じだ。体験版をお試しあれ。入門編に適していることが分かるだろう。純粋にひとつのシューティングゲームとしても、マジックレベルとランクによるミスに対する考え方がとても興味深いものになっているので、ジャンル好きも注目である。

遊びやすさのことに焦点を当ててしまったが、もちろん、手慣れた人向けの要素も充実しているぞ。

遊び尽くそうとすればボリュームが数十倍に!?やり応え抜群の良作

……というよりは、充実どころかてんこ盛りである。実は本作、シューティングゲームとしてのボリュームも大きめなのだ。一応、メインモードの「BOSS RUSH」をクリアするだけなら30分程度と、ジャンルとしては平均的な規模になっている。

ところが、本作に収録された全要素をやり尽くそうとすれば、推定数十倍以上に膨れ上がる。大げさに思うかもしれないが、本当に「こんなにも!?」と圧倒させられるほどのやり込み要素が用意されているのだ。

特に「BOSS RUSH」クリア後に解禁される新モード、一定の条件を達成すると解禁される上位難易度は、熟練者も唸る手ごわさ。

さらに自機となるキャラクターも最初は2人しか選べないが、何度かクリアを重ねていくと増えていき、最終的にはシューティングゲームとしては結構な人数に達する。

それらをクリアすることによって獲得できる実績もあるので、本当にやり尽くそうとなればかなり長く遊べる。なので、徹底的にやり込めるシューティングゲームを探している人にも本作は強くオススメできる仕上がりだ。ぜひ、興味を抱いたのなら突撃いただきたい。場合によっては……沼るぞ。

細かい所では、背景などのグラフィックも視認性の向上を意図した工夫が見られる仕上がり。主張を抑える一方で、カラフルな感じを表現するという工夫の上手さには独自のセンスを感じさせられるだろう。音楽もボス戦特化の内容にマッチした、ノリノリで盛り上がる楽曲が揃っている。効果音もショットの撃ち込み音から爆発音まで、確かな手触りを表現するこだわりが現れた仕上がりだ。

それ以外にもリプレイ機能、オンラインランキングといった要素も網羅されているほか、倒したボスとの戦いを練習できる「PRACTICE」モードといった、腕前を上達させたいプレイヤーへの配慮も万全。操作も通常・低速の切り替えに完全対応した移動と、取っつきやすさを重視したボタン配置がされていて、ストレスを感じさせない。

一部、ボスキャラクターのデザインで強烈に人を選ぶものがあるのと、特定の条件を達成した先にある戦いの難易度が「イージー」であっても極度に跳ね上がる、ストーリーは最小限などの気になる箇所もあるが、総合的には非常に完成度が高く、遊びやすさ上々の弾幕シューティングゲームである。

入門編に最適な作品を探している人にはもちろん、このジャンルのベテランにも自信を持ってオススメできる1本だ。仮想世界を舞台にした戦いに全力で挑もう。大丈夫だ、「マジックレベル」を信じるべし!

[基本情報]
タイトル:『REDNEG ALLSTARS SWING-BY EDITION(レッドネグオールスターズ スイングバイエディション)』
作者:あうとさいど
クリア時間:30分(1周)
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):1,300円

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