新しくも懐かしく、(何故か)RPGの匂いもするドイツ生まれの個性派STG『Rigid Force Alpha』

Steam,インディーゲーム,シューティング

1987年、アーケードゲームとして誕生したアイレム制作の横スクロールシューティングゲーム『R-TYPE』は日本のみならず、海外でもヒットし、家庭用ゲーム機、パソコンへの移植が盛んに実施された。

その中でもドイツで制作されたコモドール64、Amiga版は、『R-TYPE』ソックリな模造品を作って販売したコンピュータマニアの5人グループが、本物の販売を請け負ってた会社に技術力の高さを買われて作り上げた、伝説的な存在である。そんな出来事があったためなのか、昨今もドイツ生まれのシューティングゲームには、『R-TYPE』の息吹が込められた作品が一部、散見される。

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2018年8月31日、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」で発売された『Rigid Force Alpha』もそんな作品の一つだ。

制作は個人開発者のMarcel Rebenstorf氏が設立したインディーディベロッパー「com8com1 Software」。一部の音楽は日本でもNintendo Switch、PlayStation 4などで販売されている『エリエットクエスト』の音楽を手掛けたマイケル・チャイト氏が担当している。また、日本語にもテキスト、ボイスも含めて完全対応している。

フォーメーション切り替えとエネルギー射出の判断が試されるSTG

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内容は横スクロールのステージクリア型シューティングゲーム。最新鋭の宇宙船「リジッド・フォース・アルファ」を操縦し、謎のウィルスによって凶暴化した兵器群、原住生物達を撃退しながら感染源の根絶を目指して全6ステージの攻略に挑む。

ゲームの流れは迫り来る敵をショット攻撃で撃退しながら、ボスの討伐を目指すという王道のもの。ただ、道中とボス戦で二分された、やや風変わりな構成になっている。

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自機「リジッド・フォース・アルファ」も少し変わっている。
特に象徴的なのが「フォースの破片」と呼ばれるアイテム兼オプション装備。獲得することで自機のショット性能が強化されるのだが、(※以降はXbox360コントローラでプレイした場合の設定となる)LB、RBボタンを押すことによってフォーメーションが切り替わり、LBを押すと後方に、RBを押すと前方に破片が移動。後ろから攻めてくる敵の迎撃、前方から来る弾を防ぐ盾としての利用といった、状況に応じた特徴的な戦術を取ることができる。

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また、本作では敵を倒すと緑色の「エネルギーオーブ」が散らばり、回収すると画面下にある自機の「エネルギーゲージ」が上昇。この溜まったエネルギーを用いて、敵に大ダメージを与えるチャージ攻撃を発動させたり、ブレードを繰り出して敵弾をかき消すといったこともできてしまう。

散らばった「エネルギーオーブ」を自機に引き寄せる機能も備えているので(Yボタンを押す)、積極的に取得していけば、いずれのアクションも途絶えることなく繰り出せる。使用中のキャンセルにも対応していて、チャージ攻撃に使いつつ、防御策としてブレード用のエネルギーを残す方法も難なく実施可能だ。

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他にショット攻撃も「レーザー」、「スプレッド」、「リバウンド」と三種類だけながら、いずれも個性的で、ステージの地形によっては、どれを装備しているかで難易度も変化。ショット攻撃を補うサイド攻撃も三種類あり、これらも組み合わせによって多彩な効果を発揮する。

このように自機の性能に大きな個性付けが図られており、一筋縄ではいかぬ手応えを演出。直感的に遊べる作りとは裏腹に、慌ただしくも戦略的な操作が要求される内容になっている。

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この作りを考慮してか、初回プレイ時は操作のチュートリアルから始まるという配慮も。しかも、日本語フルボイスで一連の動作を解説してくれる。「本番で基本動作を覚えろ!」というのがシューティングゲームにおいては一種のお約束だが、そんな姿勢に歯向かっているのもちょっとした特色である。

追い込まれても勝機が残される、計算された難易度

道中とボス戦で分けられたステージにも独特の手応えがある。

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特にボス戦は「フォースの破片」を始めとする、強化アイテムが一切登場せず、ゲームオーバーになると初期状態に戻され、ここからやり直しになるのもあって、引くに引けない緊張感がある。

初期状態に戻されても、極端に難易度が高くならないのも秀逸。さすがにフルパワーアップ時よりも厳しい展開にはなるが、ボスの動きと攻撃への対処法は比較的見極めやすく、ダメージを与える度に「エネルギーオーブ」を落とし、強力なチャージ攻撃が使える機会が作られるので、十分に対抗できるバランスになっている。

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実はダメージ制が採用されていて、一発被弾してもそう簡単に自機がやられない仕組みであるのも、勝てる余地を作り出している(※難易度ハードは一発でも被弾すればミス)。また、フルパワーアップ状態で一方的な展開になることもない。あくまでも、攻撃への対処がしやすくなる程度。ボスの大半が弱点部分に撃ち込まないとダメージが与えられないタイプであることも、一方的な展開を押さえる措置として機能している。

率直に言って、仕組みとしては時代錯誤な面も強い。自機が撃墜されると、それまで手に入れた「フォースの破片」を始めとするパワーアップが初期化されるのにも煩わしさがある。(※難易度イージーだとアイテムが画面内に散らばるので、回収すれば元に戻せる)
しかし、理不尽さを抑えるべく、神経を配って調整されており、シビアながらも、安定したバランスが描かれている。道中と二分されているなりの珍しさも滲み出ているほか、ステージを独立させたなりのインパクトのあるボスが多数出てくるのも面白い。

二分する構成自体に真新しさはないが、このような措置が図られているのもあって、独特なやり応えが堪能できる。従来の道中とボスが一つに内包された構成に慣れ親しんだプレイヤーなら、新鮮に感じるだろう。

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ボスだけでなく、道中も序盤は仕掛け控え目、中盤にかけてその量を増やしていく理に適った構成が光る。ステージ4以降は長くしすぎているきらいもあるが、ブレードやフォーメーションの切り替えも試される工夫を凝らした内容で遊び応えは十分。また、一部ステージには日本の著名なシューティングゲームから、アニメ映画までフォローした細かすぎるオマージュも多々登場するので必見だ。

(何故か)RPGの香りも漂う、個性派STG

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本編も全6ステージ構成ながら、ステージごとのスコアアタック「アーケードモード」、全てのボスをどれだけ早く倒せるかに挑む「タイムアタック」など、クリア後の要素が豊富にあり、ボリュームは大きい。オンラインに対応したスコアランキングのほか、ゲームプレイの模様を記録するリプレイ機能も備わっていたりと、昨今のシューティングゲームではお馴染みのシステム周りも揃っている。

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エフェクトを効かせたグラフィックも美しい。
音楽も80~90年代の作品を意識した、どこか懐かしさのある楽曲が揃っている。また、ボス戦の曲が(いい意味で)おかしい。ロールプレイングゲームの戦闘シーンで流れるような曲なのだ。シューティングゲームの戦闘曲に耳が慣れたプレイヤーが聴けば、きっと大きな違和感に襲われるだろう。何気に(失礼)耳に残る曲になっているので、そこも要チェックである。

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懐かしい王道シューティングゲームの雰囲気を漂わせつつも、独特な個性付けが図られた本作。難易度選択機能もあり、最も簡単なイージーであればステージセレクト機能もあるので(※Ver1.1.0より実装)、気軽に全ステージを巡ることもできる。ノーマル以上の難易度であれば先述の通り、パワーアップのロストがミスした際に追加され、ステージセレクト無しの通しプレイで攻略することになるので、シューティングゲーム好きも納得の手応えを得られるはずだ。また最新のアップデート(Ver1.1.0)にて、ゲームのプレイ時間が1時間に達する度、ゲームオーバー後のコンティニュー回数が増える「ボーナスクレジット」も導入され、ゲームバランス面のシビアさもリリース当初に比べ、緩和されている。

それでも気持ち高めの難易度ではあるが、シューティングゲームに手慣れたプレイヤーなら遊んでみて頂きたい良作だ。R-TYPEの伝説が残りしドイツより誕生した、個性的な戦闘シーンの数々に身を委ねてみよう。

[基本情報]
タイトル:『Rigid Force Alpha』
制作者: com8com1 Software
クリア時間: 2~3時間(※実績コンプリートを除く)
難易度:中級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: ¥2050

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