いのちを終わらせる選択を迫られるフリーゲーム『しにがみみならい』
少女は、真っ白な世界で「死神」と出会う。
「しにがみみならい」として任される仕事、
それは「いのちを終わらせる」ことだった-
自分の手で、人の命を終わらせるか決めることができるとしたら、あなたはどんな選択をするだろうか?
『しにがみみならい』は、「いのちを終わらせる」選択を迫られるフリーゲームだ。
30分程度で終わる超短編ながら非常に印象的なプレイ感だったので紹介しよう。
なお、このゲームは、7月にもぐらゲームスでもレビューをしたフリーホラーゲーム『リフジン』の制作者であるななしのごんべさんの新作だ。
60秒後に殺しに行くね。謎解きフリーホラーゲーム『リフジン』
※ホラーではありませんが、流血、うつ的表現が見られます。
死神から託される使命。ハサミの上で踊る3つの命
主人公の少女は真っ白な世界で死神と出会う。
そこで渡されるのは「ハサミ」。3人の候補者のところへ行き、仕事をしてくるように頼まれる。そしてこれは「審査」なのだと。
3人の候補者は、中年男性、女子高生、老人。それぞれの世界に行き、まさにプレイヤーは死神のごとく彼らの命の行方をどうするか決めるのがこのゲームの目的だ。
このゲーム、登場人物の名前は一切出てこない。
また、アドベンチャーゲームの体裁だが、謎解きや追いかけっこのような場面も全くない。
プレイヤーにできるのは主人公を移動させることと重要なシーンで選択肢を選ぶことだけ。
選択肢がキャラの運命を変えていく。
そういう意味ではこのゲームはノベルゲームに非常に近い構成になっている。
各人物の現在を描写するイベントを見た後、彼らの後を追っていくと、少女だけに見える白い糸が現れる。そしてその糸を切るかどうか決断を迫られるのだ。
切った場合と切らなかった場合でその後の展開が違うのだが見終わると、また白い世界に戻ってくる。そして残りの扉をくぐって別の世界で繰り返す。
3つ終わると終了。左に行って、死神と話そう。エンディングだ。
『命を奪うこと』について考えさせられる
死神はゲームの最初にこう告げる。
「このハサミは2回に限られる」と。
候補者は3人、つまり審査に合格するために1人は生かさなければならないはずだ。プレイヤーはストーリーを見て、命を奪うかどうかをよく考えることになる。
そうした行動の結果によってエンディングが3通りに分岐する。
1周にそこまで時間はかからないので全てのエンディングを見てほしいところだ。
死神とはなにか?
少女はどういう経緯でしにがみみならいをすることになったのか?
全てとは言わないまでも答えを見つけることができるだろう。
そして同時に『命を奪うこと』について考えさせられる。
SSを見ればわかる通りこのゲームのグラフィックは非常にシンプルだ。主要な登場人物以外はみな灰色の人影。また糸を切るまでの舞台も1人につき計2シーンと非常に少ない。それでも、プレイヤーが運命を左右する人物がどういう人なのか、を推し量るのはそう難しくない。それ故、命の重みをしっかりと感じるのだ(特に何が起こるかわからない1周目)。
冒頭にも述べたように、アドベンチャーの形式をとりながらもこのゲームはノベルゲームに似ている。謎解きなどのゲーム性が一切排除されたため、プレイした後の感覚は、物語を読み終えたときの気持ちに非常に近いのだ。一方、ノベルゲームであれば細やかな描写などが必要になる部分を、グラフィックと軽めの会話だけで表現しており、プレイヤーの想像力をかきたてる。物語を叙述する表現としてゲームは一つの手法たりうるということを再認識した。
30分前後のプレイで死神になって感じられる命の重み。ぜひ体験してみてはいかがだろうか。
[基本情報]
タイトル しにがみみならい
制作者 ななしのごんべ。(制作者様サイトはこちら)
クリア時間 一周5〜20分、エンディングは3種類
対応OS Win (windows8での動作は未確認、Direct Xランタイムが必要)
価格 無料
備考 実況・二次創作に関してはダウンロード後、txtファイルを参照のこと。
ダウンロードはこちらから http://www.freem.ne.jp/win/game/7467