いざゆけ”カメラにゃん”!写真を空中に貼りつけて道を開く2Dアクション『Shutter Nyang』

インディーゲーム,パズル

感染症対策によるイベント自粛でイベント取材の機会が減ってしまったが、レポーター業をするうえでは「カメラ」が相棒として欠かせない。長らく使っていれば少なからず愛着や興味が湧き、思うところも出てくるもので、電気店を訪れる際にカメラコーナーを見て回る癖がつくようになった。感染症が終息し、再びカメラと共に各地を巡れるようになってほしいという願いを込めつつ、今回は「カメラ」が鍵となる作品を紹介したい。

『Shutter Nyang』は韓国の開発チームProject Moreumにより制作された2Dパズルアクションゲーム。2021年3月1日よりSTEAMにて配信が開始されている。日本語表示にも対応している。

愛嬌たっぷりのパズルアクション

ある日ある時、一匹の黒猫が突如巻き起こった奇妙な風によって吹き飛ばされてしまい、友達の女の子と離れ離れになってしまう。彼女と再会し、共に飛ばされてきたカメラを彼女へ返すため、黒猫の不思議な冒険が始まる。

『Shutter Nyang』の魅力は何といっても主人公の黒猫をはじめとした愛らしいビジュアルだ。まず猫というだけで可愛くないわけがない(まったくもってズルい生き物である)のだが、ディフォルメされたボディやコロコロと変わる表情がコミカルな印象を与えてくれる。可愛いものに目が無いという人には間違いなくオススメできる作品となっている。

本作は横スクロール方式のアクションゲームとなっており、5つのステージに分かれたエリアをひとつづつ攻略することで進行していく。ステージ中のチェックポイントでは段ボールハウスからステージを見渡す事が可能。移動ルートや被写体の位置を確認した上で先へと進んでいこう。また、穴に落下した場合もチェックポイントから再スタートとなる。

「空間を切り取る」魔法のカメラで謎を解け

黒猫が持つカメラは不思議な力を持っており、ステージ中の様々な場所を撮影して撮った写真を空中やステージ中に配置することができる。このカメラのギミックを使った謎解きが本作の特徴だ。カメラはゲームパッドの右スティックもしくはマウスでファインダーを動かし、左右トリガーもしくはマウスのボタンで写真の撮影と配置を行う。

一例を挙げてみよう。猫ちゃんのジャンプ力ではどうにも飛び越えられない高さの壁がある。そこでまずブロックを一枚パシャリ。

そして撮影した写真を空中に貼り付け、足場とすることで先へと進めるようになる。貼り付けた写真は一定時間で消えてしまうので、あらかじめ必要な写真を撮影し順序を整理したうえで貼り付けていくと良いだろう。また、敵や水滴にぶつかったり穴に落ちてしまうと撮影した写真が破けてしまうので注意が必要だ。足場以外にも自分自身を撮影してその写真を囮にするなど、意外なものが活用できる点が本作の魅力のひとつとなっている。

一方でゲームパッドのアナログスティックではファインダーの微調整が効きにくいのが難点といえる。オプションからスティックの感度調整をしっかり行っておくか、ボス戦などで素早くカメラの狙いを定めたい場合にはキーボードとマウスで操作したほうが快適にプレイできることもある、ということは頭の片隅に入れておくと良いだろう。

写真は思い出と共に

黒猫が少女のもとへと辿りつく為には、各ステージに存在する少女との「思い出の品」を撮影し、その写真をステージ選択場に飾られているイラストに当てはめて少女との記憶を辿っていくことになる。イラストが完成していく様子はちょっとした無声劇の様相になっており、黒猫がどんな性格をしていたのかなど想像の幅を広げてくれる。

撮影するべき思い出の品については黒猫の回想としてヒントがステージ中に散りばめられている。色や形状などをよく確認した上で撮影し、思い出を正しく辿って黒猫の旅路を導いていこう。

また、収集要素として各地に貼られているポスターを撮影してポスターボードに貼り付けていき、エリア内の全てのポスターを集めることでクローゼットの衣装が解禁される。一度に持ち歩ける写真の枚数には限りがあるので、思い出の品探しとポスター収集は同時にこなそうとするよりは分けて考えるのがやりやすい。衣装チェンジで更なる可愛さアップは間違いなしだ。

思い出の品やポスターを探してステージを右往左往しながらも、きわどいジャンプや正確なカメラさばき、撮った写真を破かないように敵にぶつからずに潜り抜ける事などを幾重にも重ねて要求される場面が多く、写真を無事に持ち帰るためには相当に四苦八苦することになる。ゲーム全体の雰囲気に合わせてもう少し「ゆるめ」にしても良かったのではないか…という点はとても惜しいと言わざるを得ないが、見方を変えれば一風変わった辛口めのアクションゲームを求めているという人にも薦められる作品だ。

[基本情報]
タイトル: Shutter Nyang
制作者: Project Moreum
クリア時間:  10時間~
対応OS: Windows
価格: $14.99 (約¥1500)

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  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。