究極進化を遂げた、巻き込まれ系武装少女が戦うアクションゲーム正統続編『疾風戦記フォースギア2』

アクション,フリーゲーム

2016年にフリーゲームとして配信された、カプコンの看板アクションゲーム『ロックマン』のオマージュ作品で、工夫を凝らした構成と難易度設定で遊び心地の違いを表現していた『疾風戦記フォースギア』。以降、同作は作中の登場キャラクターを主人公に据えた外伝作品が2つお披露目され、その内の1つ、本編とは異なる路線のアクションゲームである『疾風戦記フォースギア外伝 失われたカレーPlus』は、2018年の「ニコニコ自作ゲームフェス」において「敢闘賞」を受賞する快挙を成し遂げた。

そしてその間、制作が進められていたのが正統続編『疾風戦記フォースギア2』。

2020年1月5日、新年を迎えて間もない頃についに完成となり、前作同様、Windows PC向けフリーゲームとして公開された。ダウンロードはフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」のほか、「itch.io」、「BOOTH」、「SYAKERAKE」からも行える。

あらゆる部分が劇的進化を遂げた続編

前作の「ダイアーク事件」から1ヶ月後。平穏を取り戻した街に世界各地で破壊と略奪を繰り返す武装組織「オメガ」が襲来。
青島ミユキ博士が開発した半永久機関「フォースエンジン」を奪うべく、「鬼」と称された強力なロボットとサイボーグの軍団を街に解き放った。この事態に警察が彼らを鎮圧しようとするも、力の差は歴然で全く歯が立たず。

その様子をモニター越しに見ていたミユキの娘「青島サチ」は、母からまたも特殊パワードスーツ「フォースギア」を渡され、無理矢理、戦闘の最前線に立つことになってしまう。

そして同じ頃、攻撃を受けている街の様子を静かに見守るひとりの少女が。彼女の名は「室井セツナ」。協力者である科学者「スカーレット」から街が攻撃されているのを聞き、現地へ駆けつけていたのだ。

かくしてここに、2人の少女達によるフォースエンジンを巡る新たな戦いの幕が開ける。

基本的な内容は前作と変わらない。横スクロールのステージクリア型アクションゲームだ。システム周りもステージセレクト、ボスを倒すと同時に手に入る属性付きのチップと、それを弱点の相手に使うことで絶大なダメージを与えられる相性の概念など、ロックマンをオマージュしている作品ならではの要素が踏襲されている。メインとサブにそれぞれ装備できる武器、ステージ攻略途中に手に入る「エネルギークリスタル(Eクリスタル)」を消費しての救済アイテム購入と言ったシステムも健在だ。

ただ、ゲームとしての触り心地は大きく変わっている。
ひとつにエネルギー管理全般。前作同様、今回もチャージアタック時には専用のエネルギーゲージ(WP)を消費する仕組みとなっているのだが、空になるとゲージが再装填(自動回復)されるようになった。そのため、エネルギー切れでチャージアタックができなくなっても少し時間を置けば再び撃てるようになり、戦術周りのシビアさが緩和された。特にボス戦はそれによる変化が顕著に現れており、前作との決定的な違いを感じること間違いなしだ。

もうひとつとして、成長システム全般。前作にもあったものだが、これが大きく一新され、ステージ攻略中に手に入れたEクリスタルを消費し、体力の最大値から攻撃力、防御力と言った細かなステータス強化を図れるようになった。

さらに「カスタムチップ」なる特殊装備アイテムが登場。装備することで回復アイテム取得時の効果を高めたり、敵からエネルギーを吸い取って回復するなどの特殊効果を付与できるようになった。例によって、使うに当たっては各種チップをEクリスタルを用いて購入しなければならないほか、チップには「コスト」なる値が設定されていて、プレイヤー側の「キャパシティ」の最大値を超えるものは装備できない。最大3つのチップを装備できるのだが、それぞれの値を踏まえて選択しなければならないのだ。

ただ、キャパシティの最大値はステータス強化で上げることが可能。高レベルに引き上げれば、相応のコストが設定されたチップも装備できるので、より大胆な立ち回りでステージを攻め込める。ステータス強化と重ねれば効果は絶大で、前作にも増して強化の恩恵を感じられる作りへと一新されている。

そして、2人目の主人公である。サチに加えてセツナなる新キャラを選択できるようになった。当然ながら、双方はアクションはおろか、ストーリーも異なるので、遊び心地は別物。特にセツナは空中ダッシュと遠距離攻撃を主体とした、スピーディなアクションが特徴のキャラクターになっていて、バランスタイプのサチ以上にテクニカルな操作が楽しめる。サチに関しても、基本性能は前作をベースにしつつ、「2段ジャンプ」がデフォルト化し(+「エアリアルアクション」と命名)、機動力が大幅にアップ。さらに横方向に高速移動する「ダッシュ」も加わり、スピーディな立ち回りも可能になっている。

それもあって、前作経験者ならば戻れなくなってしまうほどに手触りは軽快。細かい面でも外伝のコンボボーナスが採用されてスコアアタックのやり込みが加わったほか、残機制の撤廃、チェックポイントの可視化、難易度選択機能の実装などの改良も施されている。まさに全編において正統進化系……を通り越した究極進化系。グラフィックの強化も相まって、驚くほど派手なアクションゲームに変貌しているのだ。

進化した強化システムが描く、柔軟性の高い難易度

本作の魅力は前作からの化けっぷりである。
特に光る部分がステータス強化とカスタムチップ。事実上、もうひとつの難易度選択機能にも当たるシステムで、細かく強化部分を選べる仕組みも相まって、プレイヤーが難しさを自由にコントロールできる面白さがある。

率直に言って、本作の難易度も前作に引けを取らず高め。別途、選択機能は備わっているものの、戦いやすいタイプと強敵タイプの極端な差異を表現したボス、シビアな操作を要求するステージ内のトラップなど、被害を最小限に抑えて立ち回るならば、高い集中力と適切な判断力が重視されるバランスは健在(※難易度ノーマル基準)。むしろ、前作よりも上昇している疑いすらある。今回は属性チップ入手に関係するボスのほとんどが強敵ばかりであるからだ。パターン化に持ち込めるタイプでも。

アクションゲームが不得意な人に限らず、前作経験者でも始めは壁にぶち当たるかもしれない。だが、今回は先述のステータス強化を図れる機能がある。しかも、強化に必要なEクリスタルが集めやすくなっているので、気軽にその恩恵にあずかれる。いざとなれば、強化に強化を重ね、力に任せた方法で全編突撃なんて手に出てもいい。

若干、負担がかかる面はあれど、このような強力な救済措置を備えたことで、アクションゲームが不得意な人にも遊べる余地を設け、得意な人は少し絞り込んで自らの実力を信じて挑むなど、幅広いスタイルで遊べる内容を実現させているのだ。

この強化システム全般が特段斬新なものという訳ではないし、そもそも元ネタの方でも一部のシリーズ作が実現していたのだが、強化範囲の多さから、細かく加減を調節できるのは本作特有の味わいに富んでいる。
前作のRPGっぽさも漂わせていた強化システム(購入システム)を、より極端なものへと進歩させた仕上がりになっているのである。そもそも強化のボリュームの大きさも相まって、よくここまで詰め込んだと圧倒される出来栄え。究極進化にも程がある。

また、操作性全般の改良と演出面強化も進化を感じさせる象徴だ。前者は驚くほどキャラクターの挙動が軽快、且つ滑らかなものになった。細かい制御も効きやすく、この点に関しては元ネタの作品に比類する完成度と言っても過言ではない。後者もグラフィック周りが大きく進化したのも相まって、非常に派手になっている。何より、躍動感あふれる攻撃で攻めてくるボスたちの技の数々、アニメーションは必見。今回は大型のボスもそれなりに登場するので、思わず気持ちが熱くなってしまうはずだ。

進化した箇所では他にステージもあり、仕掛けのバリエーション強化のほか、特殊な強制スクロールステージも用意されるなど、外伝作で培った経験が活かされている。総数も前作以上、おまけに今回はキャラクター選択のおかげで、全てをクリアするとなれば2倍以上に膨れ上がる。極め付けにキャラクターの情報を閲覧できる「コレクションカード」、ゲーム中に様々な条件を満たすことで獲得できる「アチーブメント」なるやり込み要素も完備し、セカンドプレイへの意欲を刺激!

これ以外にも語れる部分がある程度に本作は作り込みが突出しており、ひとつのアクションゲームとしても高い完成度を誇る。前作経験者なら「化けすぎにも程がある!」となり、前作未経験者なら「密度が濃すぎる!」と言いたくなる出来なのである。

圧巻のやり応えと密度を誇る力作

とは言え、気がかりな箇所も。特に画面のスクロールに合わせて敵が唐突に現れる(不意にパッと現れる)現象は厄介。何もない場所に唐突に敵が現れ、攻撃を喰らってしまいやすい(待機系の敵にこの傾向が目立つ)。
制作ツールの仕様によるものなのか、もしくは不具合によるものなのか。仮に前者とあれば、敵の攻撃開始のタイミングをやや遅らせるなどの措置を取って欲しかったと思う。

また、前作同様にボスに関しては攻撃時の予備動作が少なく、先手を打ったはずの行動が裏目に出てダメージを受ける目に遭いやすい。一部、回避の仕方が分かりにくい攻撃の存在も難ありだ。今回は残機制の廃止、エネルギーの自動回復によって極端な高難易度化は抑えられているが、それでも予備動作周りはもう少し露骨にしていただきたかった。確かにネタ元の作品もそう言ったところはあるが、その通り真似すれば難易度のバランスがよくなる訳ではないだろう。

他でも強化の加減をやり過ぎた際の極端な難易度低下、体力の自動回復を可能にするチップの万能さなど、粗く感じてしまう箇所もあるが、プレイヤーが自ら制限をかけることによって封じ込められるのはせめてもの救いだ。

若干の”あとひと押し”な点もあれど、完成度の高いアクションゲームであることに変わりはない。ロックマンオマージュの色が強かった前作から、さらに1歩押し進めた強力な成長要素と柔軟性の高い難易度、スピーディで軽快なアクションが異彩を放つ作品へと化けた本作。ストーリー的には前作の続きなので、そこも楽しむなら一旦、そちらを遊んでからがおすすめだが、純粋にアクションゲームを遊びたい、楽しみたいのであれば前作経験など関係なしに突撃してみていただきたい力作だ。

この圧巻の密度とやり応えに酔いしれろ!

[基本情報]
タイトル:『疾風戦記フォースギア2』
制作者: Master.typeX
クリア時間: 1時間半~2時間(※難易度「ノーマル」時)
対応OS: Windows
価格: 無料

ダウンロードはこちら

※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/21774

※BOOTH
https://mastertypex.booth.pm/items/1759172

※itch.io
https://mastertypex.itch.io/shippu-senki-forcegear-2

※SYAKERAKE
https://www.syakerake.jp/89

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

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