愛らしくてクレイジーな賞金稼ぎが悪党を無慈悲に狩る”トリガーハッピー”系アクション『Spectacular Sparky』
銀河随一の愛らしさとクレイジーぶりで名を馳せる賞金稼ぎ「スペクタキュラー・スパーキー」(以下スパーキー)。本日も彼は半分サメの半分ブタな依頼主にして腐れ縁の「シグ(シギー)」より請け負った悪党退治のため、銀河を駆ける!
やるべきことはただひとつ。
悪党たちをひとり残らず皆殺しだ!
レッツ・ハッピィィィーハーンティング!!
『Spectacular Sparky』は2021年10月21日より、Steam、Epic Games Storeにて販売中のWindows PC用アクションシューティングゲームだ。
海外ではNintendo Switch版も同日より発売中だが、本稿執筆時点で日本未発売。しかしながらPC版も含め、ゲーム内の言語は日本語に完全対応している。
独自のアクションとステータスが特徴の王道”ラン&ガン”アクション
ゲームの内容は単純。主人公のスパーキーを操作し、襲い掛かる悪党たちを手にした「ブラスター」で容赦なく撃ち倒し、様々な障害物などを潜り抜け、時に宙を舞いながらステージを進む!そして、最後に待ち受けるボスを倒す!
アクションゲームの王道たる、ステージクリア型の体裁に則った作りだ。
また、スパーキーの持つ「ブラスター」は機関銃のように弾丸を照射する弾数制限”一応”なしの武器。他に「ホーミングミサイル」、「火炎放射」、「スプレッド」などの武器もあり、いずれも対応するアイテムを獲得すればスパーキーが自動的に装備。また、武器は2種類持つことができ、対応するボタンを押すと現在装備していない武器へと即座に切り替えられるようになっている。
武器に関する特徴が物語る通り、本作のアクションゲームとしてのスタイルは「ラン&ガン」(※特集記事)。機関銃のような連射系の武器で戦う、シューティング要素濃い目の作りになっている。「ホーミングミサイル」に「スプレッド」、武器を2種類格納できるスロットなどの「ラン&ガン」の代名詞たる某作品のオマージュも多く、分かる人ならニヤリとしてしまう部分もある。
ただ、もちろん独自の工夫も凝らされている。ひとつにステージ構成。本作は全ステージが「ラウンド」と称された4つの区画で構成されていて、その締めのたびにボス戦が発生する。端的に言えば、ひとつのステージに最大4回のボス戦が設けられているのである。このため、ひとつのステージ当たりのボリュームは大きめ。
ふたつに「スタミナ」、「ヒート」、「アーマー」の3つのステータス。「スタミナ」はその名の通り、スパーキーの運動力を示したもの。ゲージ状に表示される。詳細な仕様としては、「連続ジャンプ」と「ダッシュ」の2つの特殊アクションを繰り出した際に消耗する。「連続ジャンプ」はスパーキーの長い耳を駆使して空中浮遊するアクション、「ダッシュ」は左右に数秒ながら無敵時間が発生する高速移動アクションだ。いずれもステージ攻略の際に多用するものだが、スタミナが空だと出せなくなるため、闇雲な使い方をすれば落下ミスを招いたり、戦闘で敵に隙を与えることにも繋がる。そんな慎重な活用を促すステータスに位置付けられている。
「ヒート」は武器の状態を指したもの。これもゲージ状で表示される。基本、弾丸を発射するたびに上昇し、満タンに達すると標準装備の「ブラスター」を除く武器が大破。再度アイテムを獲得しない限り、二度と使えなくなってしまう。
本作が「ラン&ガン」のアクションゲームなのを踏まえると、だいぶ矛盾めいたステータス。撃ちまくることの抑制を促すものなのである。ただ、ゲージ自体は射撃を止めれば瞬時に回復するため、射撃を休むのは一瞬。若干の煩わしさはあれど、撃ちまくる楽しさは残す配慮は凝らした調整になっている。また、2種類の武器を持ち歩けるなりの使い分けを促す機能としての一面も興味深い見所である。
残る「アーマー」は現在、スパーキーが装備している防具の硬さを指すステータス。これのみパーセンテージで表示される。本作はダメージ制が採用されているが、「アーマー」は体力を指すゲージとは別に設けられたものになっている。基本的にアーマー系アイテムを取ると上昇。パーセンテージが高いほど、敵から受けた時のダメージが減少する。逆にパーセンテージが低ければダメージ量が増大し、強力な攻撃ほど致命傷同然になってしまう。それを防ぐための保険にしたり、弾幕の一時的な強行突破を可能にするステータスで、地味ながらも独特な戦術性を表現するものになっている。
このほか、ダメージに関係した部分では本作、回復アイテムの出現頻度も高く、アーマーと並行して力押しが若干許容されているのも独自の工夫のひとつになっている。本編も終始アクションという訳ではなく、横スクロールのシューティングが展開されるラウンドを設けるなど、変化を付けているのもそれに該当する部分。
全体的には王道のステージクリア形式の「ラン&ガン」だが、3種のステータスによって攻略性の面では他の「ラン&ガン」作品とは異なる手応えがあり、どこか新しい味わいに満ちた内容に完成されている。何かと筋肉隆々なキャラクターが推されがちなこの手のアクションゲームでは珍しい、ファンシーな世界観とキャラクターたちも個性のひとつである。
実際はファンシーどころではないのだが……それは後々に。
制約があるからこそ退屈させない、計算されたゲームデザイン
そんな本作の魅力は、3種のステータスによって表現された独特な遊び心地だ。とりわけ印象深いのが「ヒート」。
この手のアクションゲームに親しんでいる人ほど、このシステムには拒否反応を覚えてしまうだろう。何せ銃を撃ちまくりながらステージを駆け抜けるゲームで「撃ちまくったら武器大破のペナルティです!」だ。「あ゛?」と声が出るかもしれない。
ただ、これが意外にストレスを感じさせない。そして、このシステムのおかげで雑魚敵だろうとボスであろうと戦闘が退屈しない。それを実現させているのが回復速度の速さである。少しだけ撃つのを止めれば、ほぼ一瞬で初期状態に戻るので、長いこと隙が生まれる心配なく立ち回れると同時に、撃ちまくる快感も損ねない絶妙な設定になっているのだ。
また、撃つのを止める必要があるからこそ気が抜けない。「ラン&ガン」らしく本作も道中では沢山の敵が登場しては、的確に迎撃していくことが試される。多くは数発で倒せる程度に弱いが、動きが早い上、時々耐久力のある敵も紛れ込んでくるため、倒す順番や状況に適した立ち回りを都度考えて判断する必要がある。「ヒート」が高ければ回復するまでの一瞬だけ回避に専念し、逆に余裕がある場合は力任せに押し込むなど、制約があるからこそ頭がフル回転状態になり、変化が生まれる。
何かと「ラン&ガン」の戦闘、主に雑魚敵の集団との戦いはワンパターンになりやすいが、本作はそこに「ヒート」なる制約を設け、状況を踏まえた判断を試す場面を細かく挿入。それにより、ほのかな緊張感と共に戦闘が展開され、退屈しない面白さが表現されているのだ。
普通にプレイしている時は割と直感でやってしまうことから気付きにくいが、よく観察してみると「ヒート」のおかげで自然に集中してしまう作りにまとめられている。色々考えながら遊ぶ構造が確立されているのだ。
それもあって本当に興味深い見所がある。一見、煩わしく見えながら、実は独自の戦う面白さと緊張感を表現する要素として機能している。同時にこれがあるからこそ、他の「ラン&ガン」作品にはない手応えが堪能できるのだ。
最初こそ不要に感じるかもしれないが、やればやるほどに魅力的なシステムであることが分かる。特に本作にオマージュ作品の印象を抱いた人ほど、その手触りには色々思い知らされるはず。そして、本作特有の味わいを感じ取れるだろう。
それでも撃ちまくれないのは……という欲求不満を抱いてしまう人への配慮として、ゲームクリア後の要素で「ヒート」を取っ払った「フレンジーモード」なるものも用意されている。
だが、撃ちまくれる反面、常にプレイヤーの体力が減り続ける恐怖のルールが導入されるおまけ付き。従来の本編以上に素早い動きが必須となる調整には、「すみません、やっぱりヒートがありで……」となるかどうかは人それぞれ。ただ、ルールのおかげで本編とは全く異なる手応えが描かれているのは大きな見所。少し味付けを変えただけなのに、全く別のアクションゲームになる興味深い変化を楽しめるので、ぜひ挑戦いただきたいところだ。
そして、一粒で二度おいしい部分がある所からも、本作がいかに調整周りに気を遣っているかが分かるはず。色々書き殴りはしたが、要点をまとめれば本作の難易度調整には徹底して独自の個性を出すこだわりが満ちているということ。ただのオマージュでは終わらせない意地を感じさせられる仕上がりなのだ。王道ながらもどこか新しい味わいというのは伊達ではない。この「ヒート」によって表現されたバランスを体験すれば、よく分かるはずだ。
生理的嫌悪感を抱かせる敵デザインがタマにキズだが、良作です
難易度に関しては選択機能も完備。アクションゲームが苦手な人にも優しい簡単なものから、地獄のような何かを思い知らされる高難易度まで網羅しているので、好みの加減で楽しめる。どの難易度でプレイしようが、ゲームクリアには何ら影響しないイマドキな配慮がされているのも嬉しいところだ。
また、ボリュームもステージ総数こそ6つと少なめだが、ラウンドがその4倍用意されているので密度は申し分なし。前述の通り、クリア後の特別モードも用意されているので、やり応えはバッチリだ。
ステージも登場する敵にボス、仕掛けなどへの個性付けを徹底し、飽きさせない構成を確立。特にボスはかなりの数で、使いまわしもほぼないという徹底した作り込みが圧巻だ。各種ステージやキャラクターたちを彩るグラフィックも、1990年代前半の家庭用ゲーム機のゲームを彷彿とさせる色使いで描かれたドット絵が大変印象的。「ラン&ガン」の代名詞たる爆発演出も盤石で、画面いっぱいに花火大会な勢いで描かれる爆風にはマニア(?)もウットリ間違いないだろう。
総じて優れた完成度を誇る本作だが、ひとつだけ極端に人を選ぶ要素がひとつある。それは敵キャラクターのデザインである。単刀直入に言うが気色悪い。可愛さと不気味さが混在した名状しがたきデザインになっている。中でもボスは皆が皆、狂気的と言わんばかりの見た目。雑魚敵にもねっとりした声を発しながら迫ってくる輩がいたりと、人によっては猛烈な生理的嫌悪感を抱かせると同時にSAN値を8割強削られかねない。
以下、刺激的な画像を掲載することをお詫び申し上げるが……
これに「ウゲッ!」となった方は悪いことは言わない。本作はプレイしない方がいいだろう。逆に「わーお」と笑ってしまったのなら「ようこそ、おいでませ」。それなりに楽しめる……だろう。多分。あまり強くは言えないが、きっと大丈夫……と記しておきたい。
他に「連続ジャンプ」の挙動が重かったり、シューティングステージが似たり寄ったりで単調になりがちなど、粗削りな部分もある。日本語の翻訳も全体としては概ね問題ないのだが、平仮名中心でまとめているゆえの読みにくさはちょっと気がかりだ。
とは言え、アクションゲームとしての完成度、「ラン&ガン」としての醍醐味はバッチリだ。若干、制約による窮屈さもあるが、それゆえの手応えと面白さが詰まった本作。この手のゲームが好きな人であればストライク間違いなしの内容なので、愛らしいウサギの賞金稼ぎに扮して、銀河を駆け抜ける悪党退治のパーティに参加しよう。
それでは、二度目となりますがご斉唱ください。
レッツ・ハッピィィィーハーンティング!!
[基本情報]
タイトル:『Spectacular Sparky』
発売・開発元:FreakZone Games、Nicalis, Inc.
クリア時間:2時間~2時間半
対応プラットフォーム:Windows、macOS
価格(税込):1,520円(Steam)、1,580(Epic Games Store)
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※PC(Steam)
※PC(Epic Games Store)
https://www.epicgames.com/store/ja/p/spectacular-sparky