制限時間付き無限&シャッフルダンジョンでの武器集め奮闘劇『Square Weapons Dungeon』

アクション,インディーゲーム

意気揚々とダンジョン攻略へとやってきた、最強の戦士「ドラゴンナイト」。あらゆる武器の扱いに慣れた彼の手にかかれば、どんなダンジョンもお茶の子さいさい!

……のはずだったのだが。

その日、やってきたダンジョンは身の気よだつ恐怖の「武器喰いダンジョン」
入口に近づくと間もなく、持っていた最強装備はダンジョンに”喰われてしまった”。

さらに、離れゆく装備の後を追いかけようとしたドラゴンナイトは、お約束の落とし穴にハマって奈落の底へダイブ!

かくして、その先で出会った番人「エーアイ」と共にダンジョンに挑むことになったドラゴンナイト。奪われた武器を取り戻し、この最凶ダンジョン攻略を成し遂げられるのだろうか?

そんなストーリーと共に始まる『Square Weapons Dungeon』は、以前、当もぐらゲームスの「TOKYO SANDBOX 2019」のレポートでデモ版をピックアップした、個人ゲーム開発者の飛竜翔氏(WINGLAY)制作によるローグライクアクションゲームだ。その後、2019年9月に製品版がリリースされたので、あらためてご紹介する。

底なし・制限時間ありのローグライクアクション

内容はローグライクスタイルの横スクロールアクションゲームとなる。武器を喰ってしまう恐怖のダンジョンを舞台に、主人公のドラゴンナイトとなって、奪われた装備の奪還を目指すのが主な目的だ。

基本的にはローグライクのお約束に則り、階層に設置された青いワープポイントを目指し、次の階層へと進むことの繰り返しで進む。もちろん、各階層にはドラゴンナイトの探索を阻む敵も登場。ダンジョン内で手に入れた武器で攻撃を仕掛け、倒していく形になる。倒すと経験値が手に入って、一定量に達すればレベルアップして強くなるのもローグライクのお約束に準拠。体力がゼロになって力尽きればレベルが1にリセットされ、装備していた武器も全消失してロビーへと戻されてしまうペナルティも健在だ。

ただ、やられても途中経過は自動でセーブされない。セーブはロビーにある「武器庫」から出る時に限って行われるので、やられる前の記録が残っていれば、以前の進捗を復活させて再開可能だ。この点はローグライクとしては緩めの設定になっている。

さらに探索中はいつでもロビーに戻れる。厳密には次の階層へ繋がるワープポイントで、「ロビーへ戻る」を選択すればいい。こうすることでレベルは維持され、ダンジョン内で手に入れた武器も持ち帰れ、「武器庫」に入ればそのまま保管される。

なので、探索と帰還を状況に応じて判断し、進めていくのが基本のプレイスタイルになる。全体的に手軽い感じの仕上がりだ。階層ごとのマップも地形や敵配置が完全に自動生成されるのではなく、あらかじめ用意された数100種類のマップの中から選ばれる、シャッフル方式であるのもまた、攻略面の手軽さとハードルの低さを際立たせている。

ただ、特徴的な要素も少々。まず制限時間。階層では時間がカウントされていくようになっており、ゼロになるとその時点でゲームオーバーになってしまう。なので、じっくり隈なく探索しようとすれば、それが命取りに。

一応、階層突破の度に30秒が加算されるので、素早く進めば余裕が生まれるのだが、探索をスルーすると逆に武器が集まらない。敵も倒すのを無視すれば、ドラゴンナイト自身が貧弱なまま最深部へと突撃することになる。

加えて、一部階層にはボスも登場。当然、勝つまで離脱不能だ。また、戦闘中にも時間は経過。つまり、強化や探索を重点的に行えば、今度はボスを倒せず、もしくは倒しても時間切れという名の悲劇に見舞われるのだ。

なので、常にどのような姿勢で階層を進んでいくかが試される構成になっている。システムとしては普遍的なものだが、ローグライクとしてはありそうでなかった手ごわさが描かれており、独特のプレイ感を演出している。

剣、槍、斧の3カテゴリ用意された「武器」も特徴的な要素のひとつ。基本、宝箱を開けて回収するのだが、手に入れて間もなく装備はできない。装備するにはロビーの「武器庫」へ保管し、そこで選択して行う形となるのだ。

つまり、深い階層を目指すなら強い武器を選ぶのが重要となる。
また、ダンジョン内では手に入れた武器が再度手に入ることも多々あるのだが、この手に入れた武器の本数が多いと、元々の攻撃力に本数分が加算。沢山手に入れれば入れるほど、強力な武器へと強化できるのだ。よって、集めるだけ集めることもプレイヤーを有利にする、一風変わった攻略法が実践可能になっている。

ほかに「スタミナ」の概念もあり、攻撃を行う度に消費。空になると回復するまで何も繰り出せなくなる。さらにプレイヤーの強化はレベルのほか、「青魂」なる青い玉を集めて最大体力を上げるものも。これが示す通り、本作は体力の多さが危機を脱する決め手となる場面が多く、強化次第で難易度も大きく上下するようになっている。

ゲームデザイン的には既視感のある作りで、ローグライクとしても緩めの作りだ。しかし制限時間、武器収集、体力勝負の3点において独自の遊び応えが表現されており、見覚えはあるけど新しさを感じられる内容になっている。まさに既視感はあれど、新鮮な味わいに富んだゲームと言った趣だ。なんとも味わい深い作品に仕上がっている。

制限時間制が醸し出す、ありそうでなかったプレイ感

そんな本作の魅力は、制限時間が演出する適度な緊張感と戦略的なゲームプレイだ。

特に探索と育成、最下層を目指す目的を残り時間から判断し、時に切り替えながら進めていくのは、ローグライク作品ではありそうでなかった楽しさと新しさに富んでいる。次の階層へ繋がるワープポイントから、いつでもロビーへ戻れる手軽さもいいアクセントになっていて、シビアにし過ぎず、かと言って元の醍醐味を失わせない絶妙なバランスで成立させている。

TOKYO SANDBOXで完成直前のバージョンをプレイした時も、その緩急のある展開がとても印象的だったのだが、改めて製品版をプレイしてもやはり面白い。

当時、お話を伺った飛竜翔氏いわく、制作開始当初はこの時間のシステムがなく、イベント開催が近づいてきた頃合いに実装された一種の突貫的なものだったとのことだが、これが結果的にゲームプレイの独自性を高めたのが面白い。かの有名な「アイディアとは、複数の問題をいっぺんに解決すること」の極致が現れたケースと言えるだろう。

また、ローグライクとしては比較的緩めのゲームバランスで、苦手意識のある人にも遊びやすい作りになっているのも大きな魅力だ。ジャンル特有の強烈なペナルティはあるが、セーブ周りはガチガチにしていないから、やりようによっては簡単に元の状態に戻して復帰できる。もしかしたら、単純に仕様の漏れでこうなっている可能性もあるのだが、これも本作の独自性と遊びやすさを高めている所があるので、仮に今後、アップデートの計画があるのだとすれば、そのままにしておいていただきたいと思う。

階層ごとのマップが完全な自動生成式ではなく、シャッフル形式としているのも遊びやすさとバランスの緩さに一役買っている。
あらかじめ地形が決まっているからこそ、再トライした際に前回の経験を基にした素早い攻略を実践でき、より突破時間を縮められる。さらにアイテムがどの位置に置かれるかも分かっていれば、探索もスピーディに行え、前回とは見違える結果を生み出せる。この上達した結果がダイレクトに現れる展開こそ、アクションゲームの真骨頂。ローグライクではあるが、根っ子はアクションゲームでもある本作。そんな基礎部分も大事にする配慮、刺激はあれど時に取り返しのつかない事態を招く恐れもある自動生成式の採用を避け、分かりやすい上達を感じられる方を選んだ判断には拍手を送りたいところだ。

とは言うものの。シャッフル式ゆえに時折、同じ地形が連続して登場する、思わずガックシくる展開があるのはタマにキズ。バリエーションも数100種類あると言うが、深い階層に行かないと見られないパターンも有るため、どうにも序盤の方は単調に感じてしまう。

また、ボス戦も力押しが最適解で、勝敗はレベルと体力、スタミナの多さに左右されがち。低レベルではまず勝機なしの余地の狭さも、アクションゲームとしてのバランスとしては問題に感じる。攻撃パターンも弾幕をやたら張る傾向があり、その所為で余計なダメージを喰らいやすい。攻撃で弾幕を消せるようにしているとは言うものの、ノーダメージクリアが困難になってしまっているのは、正直言って残念な所だ。できれば、超絶な難易度でも余地は残していただきたかった。

同様に実は緩やかに回復していくようになっている自動回復の機能も、もう少しスピーディにして良かった。特に終盤の階層は、この遅さが命取りになる場面が多々あったのが筆者としては引っかかった次第だ。

そんな難点はあれど、この手軽に遊べて、アクションゲームとしての遊び応えもちゃんとした仕上がりは見事。これもTOKYO SANDBOXのレポートに書いたことだが、別ゲームの箸休めに作った作品としての出来は見事で、このスタイルの続編を見たくなる魅力を感じる仕上がりだ。

ようこそ、武器てんこ盛りのアトラクションへ?

また、ボリューム面もストーリー上の目的を果たすだけでも15時間以上は費やす物量で遊び応え抜群。しかも、ダンジョンの階層は無限である。クリア後はそんな究極のやり込みに挑む形になるので、熟練のプレイヤーなら燃えるかもしれない。ただ、階層がシャッフル形式である点に留意いただきたい。正直、途中で辛さを感じるかも。

そのほか、操作性も良好。キーボード操作は非推奨、Xbox 360コントローラ推奨のゲームパッドに振り切ったスタイルなのだが、それ相応にボタン配置は適切で、挙動も軽快なので動かす楽しさはバッチリだ。

ストーリーもギャグ漫画なノリで、終始明るい内容になっていて面白い。主人公のドラゴンナイトを始め、キャラクターも個性派揃い。台詞も掛け合い時の応酬が楽しく、特に番人の「エーアイ」との会話劇は全編必見だ。時にダンジョンに関する衝撃的な真相も暴かれたりするので、一文字たりとも見逃さぬよう。念のためだが、シリアス成分はほぼないぞ。

メインストーリーを進める以外にモンスターの討伐、180種類に及ぶ武器の収集、必殺技の解禁、そしてドラゴンナイトのファン……じゃなくて、パートナーの修行行脚などのサブイベント・要素も揃っていて、至れり尽くせり。
バランス周りの粗さはあれど、手軽に遊べるローグライクとしても、アクションゲームとしてもなかなかの完成度を誇る本作。この手のジャンルが好きな人なら、ぜひチャレンジしてみて欲しい良作だ。ローグライクに慣れ親しんだ人も、制限時間が演出する独特の遊び心地と熱中度に光るものがあるのでお見逃しなく。ひたすら潜って最強装備を取り戻す決死の探索に挑もう。

けど、時には退くことも考えよう。
本作はトイレ、用事を済ませた後のプレイが推奨されています。

[基本情報]
タイトル:『Square Weapons Dungeon』
制作者: WINGLAY(飛竜翔)
クリア時間: 12~15時間
対応OS: Windows
価格: ¥520

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  • シェループ(@shelloop

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