水面に映る姿に飛び込め。ミニマルスタイルパズル『水鏡』

パズル,フリーゲーム

以前にもそのような事を書いた覚えがあるが、筆者は水のレジャーというものにはとことん縁がない。近所で長らく改修工事を行っていた市民プールがリニューアルオープンしたという知らせが届いても忙しさにかまけて行くようなこともなく、もはや泳ぎ方など忘れてしまっているのではないかと思う部分もある。当然、水面をまじまじと見つめるような機会もまたない。今回紹介するのは、そんな折に「水面」というものを強く意識させてくれる作品だ。

『水鏡』はcompetor氏がゲームジャム「Thinky Puzzle Game Jam 3」の参加作品として制作したパズルゲーム。2023年6月30日よりitch.io上にて公開されている。制作にはHTML5で動作するオープンソースのパズルゲームエンジンPuzzleScriptが使用されており、ブラウザ上からゲームをプレイすることが可能だ。

陸の世界と水の世界を行ったり来たり

本作は横から見た視点で進行し、人間を動かして赤いひし形で描かれたワープポイントまで進むことが目的となる。人間はブロックを押すことができるほか、一段までなら段差を登ることができる。操作は十字キーで移動、Xキーで決定、Zキーで一手戻し、Rキーで最初からやり直しとなる。

そして本作の最大の特徴となるのが水面の存在で、上下キーを使うことで水面に映った鏡像と水上をワープで行き来することができる。ワープは反転した位置の最も近い陸に出現する法則があるため、より位置の高い場所へ移動するためには地面が詰まっている箇所を選んでワープをしていく必要がある。どの位置からワープをすればゴールへの道順となるのかを探ることが本作を解くうえでの要だ。

癖のあるブロックの特性を把握せよ

本作は3チャプター全21面構成となっている。1チャプターをクリアするごとにギミックが追加され、ワープに合わせて動く赤いブロックや、レーザービームを接続することで動きが連動するようになる青いブロックが登場するようになる。青いブロックについてはそれ以上動かせない壁際まで押し込んだ状態からでも更にブロックを押す事で、連動している側のブロックにもう1マス分だけ動きを伝えることができる点に注意が必要だ。

難易度は全体的に手強めといえる。ワープを使ってブロックを押す方向を入れ替えたり、高い位置に登るためにはどう動いていけばよいかのセオリーを見つけることがポイントとなる。具体的に言えば高い位置に登るためにはあらかじめブロックで隙間を埋めておいたり、ブロックを積み上げておいてから反転ワープをすればよいのだが、それを実行するための前段階の段取りにおいても手こずらされることだろう。

夏に合う落ち着いた色合いのパズルゲーム

パズルゲームとしての歯ごたえに加えて、色味を抑えた落ち着いたビジュアルも味わい深い、ミニマルな魅力の詰まった作品だ。なお水面の世界はあくまでも鏡像で海から直接水面の世界とつながっているわけではなく、飛び込むとそのまま溺れてしまう。少々可笑しさを誘うポイントではあるが、読者の皆様は実際の水難事故にはくれぐれも気を付けてほしい。

[基本情報]
タイトル:『水鏡』(Suikyo)
制作者:competor
クリア時間:80分~
対応OS:HTML5
価格:フリーウェア

↓プレイはこちらから

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。