これがホントの手に汗握るアクションゲーム『スーパーハンドの大冒険!』 さあ、50ものステージを手玉に取れ!

アクション,インディーゲーム

突然だが、幼い頃からテレビゲームで遊びながら育ってきたそこのアナタ!
小学生だった頃にこんなひとり遊びをしたことがないだろうか!?

自分の手をプレイヤーキャラクター、周囲にある本棚、テーブル、壁などをステージの地形に見立て、アクションゲームごっこをするという遊びだ。

筆者は……ある!特に親にゲームを禁じられていた日など、欲求不満を紛らわす思いで、そんな遊びをすることが頻繁にあった。旅行中の車内でも、窓に映る風景を背景に見立てて、目的地到着までの退屈しのぎで遊ぶことがあった。

しかし、冷静に考えてみて、自分の手がアクションゲームのプレイヤーキャラクターになるとか、まずあり得ない話だ。そもそも、見た目や動きを想像するだけでも、だいぶ気色の悪いものになる。ゆえにそんなアクションゲーム、所詮は絵空事……と思っていたのだが。

2023年9月21日、PC(Steam、Epic Games Store)とNintendo Switchで出ちまった。その名も『Super Adventure Hand』、邦題『スーパーハンドの大冒険!』である!

邪悪で卑怯で憎たらしい”足”から親友の”腕”を取り戻せ!

『スーパーハンドの大冒険!』は、ドタバタ引っ越しアクションゲーム『Moving Out(ムービングアウト)』シリーズを代表作とするスウェーデンの独立系スタジオ「Devm Games」開発の新作である。PC(Steam、Epic Games Store)、Nintendo Switchのいずれも9月21日より販売を開始しており、前者は原題『Super Adventure Hand』、後者は邦題『スーパーハンドの大冒険!』の名が付けられている。

ジャンルはタイトル通り&文字通りの手に汗握るアクションゲームである。

正確にはステージクリア型の3Dアクションゲーム。プレイヤーは主人公の”手”を操作し、行く手を阻む危険な仕掛けを手際よく乗り越え、ゴールに当たるマグカップを手づかみすることを目指す。最終目標はにっくき足に盗まれた親友”腕”の奪還。

ある日、元セールスマンの手であるアナタは、腕と共に緑豊かな森の中を手取り指取りしながら進んでいた。だが、そこに邪悪で卑怯極まりない”足”の群れが急襲!不意を突かれたアナタは気絶してしまい、親友の腕はどこかに連れていかれてしまった。

ひとりぼっちになった手は、そんな親友を助けるために冒険へと出る!
それが本作のストーリーである。
手に余るがごとし不可解な内容だが、気にしたら負けだ。
ゲーム本編が手につかなくなっちゃうぞ!

基本的には手を動かして穴、障害物を飛び越えたりしながら進むスタンダードなジャンプアクションゲームとなっている。敵として卑怯で邪悪で臭くてキショい足が出てくるが、倒すことはできず、避けながら潜り抜けていく形となる。

なお、悪逆非道で外道な足に近づけられると問答無用で蹴り飛ばされる。喰らってもやられてしまうことはないが、場所が悪ければそのまま穴へと一直線なので要注意だ。

炎、サボテン、電動ノコギリなどのトラップに接触してもダメだ。
避けましょう。蒸発しちゃうぞ。(※注:本当)

ただ、ミスしても残機が減る、ゲームオーバーになるといったことはない。ミスした直前から再開となる、手心を加えた仕様だ。

また、壁を鷲づかみにして引っ付く、そこを蜘蛛のように動くといった落下の危険を軽減させるアクションもある。いずれも手だからこそ許される特技。そのようなことができるのもあって、割と各ステージは大手を振って進めていける設計になっている。

このほか、手ができるアクションは移動、地形に引っ付く以外にも物を持ち運ぶ、引っ張る、そして指パッチンといったものが用意されている。これらのアクションを使ったパズル的な仕掛けもあり、ステージによっては単に前進するだけでなく、それらを解除して新たな進路を確保して手が届く範囲を広げるという、アクションアドベンチャー的な展開が盛り込まれているのもちょっとした特徴となっている。

ただ、基本はゴールを目指すことに終始する王道のステージクリア型アクションゲーム。
それぞれの操作も簡単で、文字通り”お手軽”に遊べる作りとなっている。

圧倒的気色悪さ!そして、”手”であるがゆえの圧倒的な分かりやすさ

……それにしても、手が主人公のアクションゲームがこうして現実になってしまった訳だが、実際に見てみると想像以上に動きが気色悪い。まるで八本脚のなにかに近いなまめかしさがあるというか、得体のしれない生物感がもの凄いというかなんというか。

そもそも、カメラを至近距離にしてみた時のグラフィックがこれである。リアルすぎる。

オープニングはまるで某世界名作劇場のような温かみのあるデザインだというのに。
それがどうして、リアルで匂いすら感じる手になってしまうのか。
そもそも、なぜリアル寄りのデザインを採用したのか。
すべては開発チームのみぞ知るところだ。

……って、何の話をしているのか。
ああ、そうだ。本作の見所のことだった。動きの気色悪さだ。以上。

幼い頃、遊んでいた時は想像していなかったであろう、手がアクションゲームの主人公になってしまうことの恐ろしさをまざまざと見せつけられるはずである。

しかも、前述したように動きも無駄になまめかしい。よって、もしこの見た目に抵抗を抱いたのなら無理は言わない。プレイしない方がいいだろう。
逆に笑ってしまったのなら、おめでとうございます。プレイ資格がございます。
ク●みたいな足から腕を取り戻す大冒険に出かけよう。

これだけだとネタゲーと見なされ……て当然である。そもそも題材の時点でネタゲーだ。ただ、それを抜きにして、ひとつのアクションゲームとしては結構遊び応えがあり、文字通りの”手に汗握る展開”が楽しめるものに仕上げられている。

その魅力を最も引き出しているのが、50ものステージだ。いずれも”手”というテーマから連想されるネタを手を変え、品を変えつつ仕込んだ見所満載で攻略し甲斐のある内容に完成されている。そうした工夫を凝らしているのもあって、仕掛けのバリエーションも豊富に加え、手ならではの説得力がきちんと表現されている。氷のブロックはツルツルしていて引っ付けない、鎖はちゃんと直線に沿って進まないとあらぬ方向に動いてしまう、サボテンのトゲはすんごく痛いといった感じだ。いずれもプレイヤーが動かすキャラクターが手であるからこそ分かる説得力があり、独特なスリルと難関を乗り越えていく楽しさがある。

また、ステージによってはスケボーに乗ったり、車を操縦するといった一風変わった展開も待ち受けている。しかも、後者に関してはちゃんとハンドルをひとつの指で握って操縦しながらステージを疾走しなければならない本格的な設計だ。

なに?ハンドルはひとつの指で握れるものじゃないだろう?いや、このゲームでは握れるのだ。それ以上考えてはいけない。手打ちにされるぞ。

これらの仕掛けすべてに共通することで、本作は見た目で安全か危険かを判別できる直感的な分かりやすさ(判別しやすさ)が傑出しているのも特筆に値する。氷だったら冷たそうだからつかめなさそうと、現実の例があるだけにすぐに分かる。サボテンも同じだ。そのようなことが非常に分かりやすく、ゲーム全体のお手軽さに貢献しているのは素直に感心させられる部分だ。プレイしてみれば「なるほど、確かに手だからこそイメージしやすい!」と、設定の強みを思い知らされるだろう。

ほかにステージが50もありながら、各ステージが最長5分以内で決着する規模に抑えられているのも遊びやすさに結びついている。隠された指ぬきを探し出す収集要素、目標タイム以内のゴールを目指すタイムアタックもあり、1度クリアするだけでは終わらない手応え十分のリプレイ性を備えているのも面白いところだ。ちなみにタイムアタックはオンラインリーダーボードにも対応し、他のプレイヤーと競い合うこともできるぞ。

どうしても動きと設定の気色悪さが前面に出ている感もあるが、実はアクションゲームとしては考え抜かれており、なおかつ手であることのメリットを最大限に活かしきったゲームデザインとステージ設計が光るものになっている。とりわけ分かりやすさに関しては、いい意味での気色悪さすら感じてしまうぐらいである。一通り体験すれば、実は手ってアクションゲームのプレイヤーキャラクターとしては、ゲームデザイン的にとんでもなく優秀なのではと気付かされる見所があるので、興味を抱いたならぜひ、お試しいただきたい。

それでも、手がどうなまめかしく動くのかはあらかじめ知っておくといいが。

手が焼ける部分もあれど、侮りがたい見所を持った怪作

導入部分からして常軌を逸しているストーリーも、色んな意味で見逃せない内容だ。そもそも、この世のものとは思えぬ怪異同然の足はどうして腕を連れ去ったのか。何を企んでいるというのか。この一連の疑問に対する答えと連中の陰謀は本編終盤において明らかになるのだが、「そんな訳があるかーッ!」と思わず張り手をかましたくなること確実である。その真相が暴かれるステージで待つ、驚愕のイベントも見逃すな!


▲この帽子、どこかで……

なお、難易度に関してはだいぶ不安定気味だったり。というのも、手の動きには物理演算が働くからである。そのため操作感も鈍く、長距離をジャンプする際にもちゃんと勢いをつける必要があるのに加え、それが強すぎるとオーバーランしてしまうことがある。

鎖を始めとする特殊な形状をした地形を掴んでいる際にも、思いもしない動きをして落下してしまうなど、不可解な事象が起こることもままあるので、プレイする際はそのように手こずること前提の上で挑むといいだろう。逆に思い通りに動かせてこそのアクションゲーム、という思いを持つ方は強烈なストレスを抱く仕様だ。どんな手触りかはPC(Steam)、Nintendo Switch版ともに無料の体験版で確かめられるので、購入前に手に取ってみることを推奨する。大丈夫そう、と感じたのならどうぞ。

他にもステージは仕掛けに富んでいるものの、カギを持ち運んで開錠するネタに頼りすぎ。特に中盤以降はさすがに限度を超えており、自重いただきたかったところだ。

他に本作は3Dアクションということで、(ゲームパッド使用時)右スティックでカメラを動かせるのだが、これがどういう訳かデフォルトでOFFにされている。ONにする際にも、その項目の日本語翻訳が間違ってしまっていて、一見分かりにくいのも厳しい。

ちなみに「無料のカメラ」と訳されている。
いや、あの……「フリーカメラ」で十分伝わるんですけど……。

さらにボリュームもステージが50あるとはいえ、2時間から3時間ほどでエンディングを迎えられるので短め。ただ、タイムアタックを始めとするやり込み要素は充実しているので、そちらを含めれば長く遊べるだろう。


▲肌の色を変えたり、マニキュアを塗るなどのカスタマイズもできましてよ。

そのようなクセが凄かったり、ステージの仕掛けが偏重気味な難点もあるが、手が主人公という物珍しさと、それによって実現した分かりやすさなど、確かな見所を持った作品ではある。鈍い操作感に手のなまめかしい動きと、人を選ぶ作風なのは否めないが、遊べば間違いなく何かが心に刺さり、手もみされるがごとくジワジワ響きわたる怪作である。

繰り返しになるが、PC(Steam)、Nintendo Switch版ともに無料体験版が配信されている。手触りが気になるなら、まずはこちらをお手に取っていただきたい。

問題なければ……腕を取り返すため、50ものステージを手玉に取ろう。

[基本情報]
タイトル:『スーパーハンドの大冒険!(Super Adventure Hand)』
開発:Devm Games
クリア時間:2~3時間
対応プラットフォーム:Windows、Nintendo Switch
価格(税込):1,260円(Epic Games Store)、1,500円(Steam)、1,999円(Nintendo Switch)

◇購入はこちら
・Steam

・Epic Games Store
https://store.epicgames.com/ja/p/super-adventure-hand-62ec9a

・Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000070118.html

  • シェループ(@shelloop

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