Nintendo Switchで探して掘り出す、良作インディーゲーム六選
2017年3月3日に発売された任天堂の新型家庭用ゲーム機『Nintendo Switch』は、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、『スプラトゥーン2』、『スーパーマリオオデッセイ』と言った人気作の後押しもあり、1年近く品薄が続くほど好評を博し、国内での販売台数は400万台、世界累計では1000万台の記録的なヒットを達成するに至った。
そんなNintendo Switchで今、大きな賑わいを見せているのが、オンラインストア「ニンテンドーeショップ」にて販売されているダウンロード専売のインディーゲームだ。本体発売当日より、多くのタイトルがリリースされたが、その本数は増加の一途を辿り、2017年12月には一ヵ月の内に20本以上の新作がリリースされるほど盛況に。2018年にはゲームエンジン「GameMaker Studio 2」のNintendo Switch対応が発表。国内外を問わず好評を博したロールプレイングゲーム『Undertale』の移植も告知されるなど、今や最も注目を集めているインディーゲーム市場と言ってもいいだろう。
しかし、販売されるタイトルが増えれば、埋もれるタイトルが出てきてしまうのが世の常。この特集では、そんな現在のNintendo Switchにおいて、埋もれかけの状態にあるお薦めインディーゲームを六本ピックアップして紹介する。
何故、そのようなタイトルを中心としたのか。理由はシンプルだ。
当サイトは「探し出す・掘り出す」をモットーとする「もぐらゲームス」だからである。
PANPAN ~ちっちゃな大冒険~
『PANPAN ~ちっちゃな大冒険~』は広大な未開惑星の地を舞台に繰り広げられる謎解きアドベンチャーゲーム。スウェーデンのストックホルムに居を構えるインディースタジオ「SPELKRAFT」が制作。作中の音楽は国内のNintendo Switchでは「いつでもどこでも銀行強盗」の迷文句で一部に知られる『PAYDAY』シリーズに携わったサイモン・ビクランド氏が手掛けた。日本では2017年9月17日にリリース。日本語ローカライズ並びにパブリッシングはフライハイワークスが担当。
故障した宇宙船を修復し、不時着した惑星から脱出するべく、主人公のパイロットが原住民の協力を得ながらパーツ探しの旅に出るという内容。ゲームの手触りは見下ろし視点のアクションRPGスタイルだが、成長要素、戦闘要素はなく、行く手を阻む仕掛けを解いていくこと(謎解き)がメインとなる。舞台となる惑星の地は四つのエリアから成り立っていて、どこからでも攻略を始めることが可能。途中で詰まったら他のエリアに足を運び、そちらの攻略に移ってしまっても良く、自由気ままに進めていける作りになっている。
また、本作にはテキストはほとんどなく、原住民とのコミュニケーションは吹き出しに描かれた表情で行われる。謎解きも同様で、基本的には周囲の風景、スイッチ、柱と言ったオブジェクトから意味を読み取り、解法を探っていく形となる。
謎解きを繰り返していく内容だけあって派手さはないが、可愛らしい世界観とそれを忠実に表したグラフィック、バリエーションに富んだ仕掛け、手触り抜群の操作感で楽しませてくれる。難易度も優しすぎず難しすぎずの丁度良いバランスで、解き切った時の達成感は格別。ボリュームはエンディングまで3時間程度と短めだが、謎解きの豊富さと適切な難易度も相まって確かな充実感が得られる。手軽に遊べて、やり応えを得られるゲームを欲している人にはお薦めの良作だ。
[基本情報]
タイトル:『PANPAN ~ちっちゃな大冒険~』
制作者:SPELKRAFT(※販売&国内版ローカライズ:フライハイワークス)
クリア時間:2時間~3時間
価格: ¥500
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https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000001137
エリエットクエスト
『エリエットクエスト』はファミコンディスクシステムの名作『リンクの冒険』にインスパイアされた、横スクロール型アクションアドベンチャーゲーム。アメリカのインディーデベロッパー「ANSIMUZ GAMES」が制作。2014年にPC用ソフトとしてリリースされ、同年にはPLAYISMから日本語ローカライズ版が販売。2015年にはピッキー合同会社よりWiiU版がリリースされた。本作はWiiU版の流れを汲む移植版で、同時期にPlayStation 4版も国内でリリースされている。
謎の病気で最愛の妻を失い、不死の呪いにかかった主人公エリエットを操作して、舞台となる「ウレール島」の各地を巡りながら、呪いの原因を探るというストーリー。島には森、洞窟、遺跡と言ったエリアが複数あり、それらを一つ一つ探索して行動範囲を広げつつ、「ガーディアン」と呼ばれる者が潜むダンジョンへと潜り、呪いの真相を明かしていくのが主な流れとなる。
プレイヤーとなるエリエットは標準装備の弓矢による攻撃のほか、特殊なアイテムを獲得することによって二段ジャンプ、遠距離攻撃と言ったアクションができるようになっていく。また、敵を倒すと経験値が入り、一定量に達するとレベルアップしてスキルポイントを獲得。特定のパラメータに割り振ることで、エリエットの基礎ステータスを強化させることができる。他に「カルマメーター」なるものも存在し、道中で取った行動によって善、悪に揺れ動き、その結果次第で結末が変わるという、マルチエンディングシステムも盛り込まれている。
今時珍しい簡素なグラフィックに不安を覚えるかもしれないが、『リンクの冒険』にインスパイアされているだけあって骨太なアクションアドベンチャーに完成されており、見た目からは想像も付かない濃厚な冒険活劇が楽しめる。Nintendo Switch版(及びPlayStation 4版)では難易度選択機能、ヒント増加、セーブファイルの拡充と言った改良も施され、遊びやすくもなっている。自力で道を切り開いていく良くも悪くも昔風のゲームだが、アクションアドベンチャーの醍醐味をしっかりガッチリ押さえた作品。ボリュームも999円という低価格からは想像も付かないほどたっぷりなので、どっしり腰を据えて遊べる骨太なアクションゲームをお求めなら、ぜひプレイしてみて欲しい。
[基本情報]
タイトル:『エリエットクエスト』
制作者:ANSIMUZ GAMES(※販売:PlayEveryWare / 架け橋ゲームズ)
クリア時間:20時間~30時間
価格: ¥999
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https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000000438
ブレイブダンジョン+魔神少女COMBAT
横スクロールアクションゲームの『魔神少女』シリーズで知られる日本の同人ゲーム制作サークル「INSIDE SYSTEM」は、2016年に同シリーズのスピンオフに当たる完全新作のロールプレイングゲーム『ブレイブダンジョン』をニンテンドー3DS用ダウンロードソフトとしてリリースした。本作はそのNintendo Switch移植版兼パワーアップ版。基本的な内容はニンテンドー3DS版を踏襲しつつ、グラフィックの高解像度化、新たな仲間キャラクターの追加、Nintendo Switchに準じたメニューインターフェース全般の刷新と言った改良が施されている。また、タイトルが示す通りだが、『魔神少女COMBAT』なる完全新作のカードバトルゲームも同梱されている。
初代『魔神少女』にボスの一人として登場したトレジャーマスターの「アル」を操作して、「ゴッツヒル」と呼ばれる聖域に眠る秘宝を目指してダンジョンを探索していくという内容。最大の特徴は攻略自由度の高さで、ゲーム開始時点からラストも含めた全ダンジョンが解禁されていて、どこからでも探索を始めることができる。しかし、いきなりラストダンジョンを踏破することまではできず、まずは現在のレベルに適したダンジョンから探索し、キャラクター達の強化を図っていく形となる。各ダンジョンは五つの階層から構成されていて、最後の階層に待ち受けるボスを倒せればダンジョンクリア。また、ダンジョン内は初探索時、周辺の通路が黒塗りで隠されていて、歩きながら全容を明かしていく形となる。戦闘はマップ上の敵シンボルに触れると始まる。
システム的には王道のコマンド選択型だが、攻撃は全て魔力を消費する形で行われるため、その残量を考慮しながら行動を決めていくのが基本戦術。また、アル以外の仲間キャラクターは拠点エリアで自由に雇用・編成でき、組み合わせに応じた戦略を組み立てることも可能。ダンジョンによって変えるもよし、最後まで同じパーティで挑むもよしと、プレイスタイルも人それぞれ。
非常にテンポがよく、攻略し甲斐も抜群のRPGに完成されていて、大作系の作品に疲れた人には最適な一品。紹介が遅れてしまったが、同梱されている『魔神少女COMBAT』も運要素が強いなりにやや理不尽な展開に陥りやすい難点はあるが、ルールは分かり易く、コツを掴めば時間を忘れてやり込めるカードゲームに完成されている。探索と戦闘に没頭できるRPGがやりたいというプレイヤーには自信を持ってお薦めする一本。携帯モードとの親和性も抜群なのでお試しあれ。
[基本情報]
タイトル:『ブレイブダンジョン+魔神少女COMBAT』
制作者:INSIDE SYSTEM
クリア時間:7時間~15時間
価格: ¥864
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https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000000323
ボクと僕の世界で
個人開発者のWish Fang氏が制作、Ratalaika Gamesがパブリッシングを担当したNintendo Switch独占の横スクロール型パズルアクションゲーム。国内では2017年7月6日に配信。日本語ローカライズはレイニーフロッグが務めた。
二匹の猫を同時に操作し、額縁に納めて写真を撮っていくのが主な流れ。二匹の猫は一心同体で、移動する時もジャンプする時も全く同じ動きをする。ただ、ゴールに当たる額縁は一定の距離を置いて設置されていることがほとんど。その為、攻略に当たっては段差などの障害物を活用して位置取りを調整していくことが求められてくるようになっている。もちろん、道中には段差以外にもおじゃまキャラクターである敵、トゲを始めとするトラップが仕掛けられていて、僅かでも触れたりすれば問答無用でミス。いかにそれらに触れることなく適切な距離関係を保ち、額縁まで進んでいけるかも併行して求められてくる。
また、ゲームが進むとワープ装置、移動方向を逆転させる杖と言った特殊な仕掛けも登場して攻略が複雑化。タイミング勝負なアクションゲーム色の強いステージが挟まれることもあったりと、全体の構成にも起伏があり、プレイヤーを退屈させない作りになっている。ステージもメインだけで90以上、更なる手応えを求めるプレイヤーを対象とした高難易度のステージも完備とボリュームも十分。動画付きの親切なヒント機能も備わっており、見ることによるペナルティも皆無と、幅広いプレイヤーが気兼ねなく楽しめる為の気配りも徹底されている。
単純明快なパズルアクションではあるが、仕掛け満載で起伏に富んだステージ構成と適切な難易度調整で楽しませてくれる作品。特にステージバリエーションの多彩さは圧巻で、そういう応用法があったかと思わず唸ってしまうものが続々と出てくる。難易度も優しすぎず、難しすぎずの絶妙な塩梅で、いつでも閲覧可能でペナルティも無いヒント機能も完備しているので人を選ばない。いずれのヒントも答えになるようでならない、ニクいタイミングで終わるのも見事で、ステージクリアの達成感を損ねないまとめ方になっているのも秀逸だ。キャラクターも可愛らしいが、一方でストーリーは鬱要素強め。後半になればなるほどプレイヤーの心を抉り取るテキストが続出する。厄介なことに(?)日本語翻訳も素晴らしい為、抉り度合いも高い。人によっては全てを終えた後、絶望と鬱のドン底にまで叩き落されかねないほどだ。
そんな想定外の裏の顔を持ち合わせてたりするが、パズルアクションとしての完成度は上々。ニンテンドースイッチ本体をお持ちであれば遊んでみていただきたい、傑作と言っても差し支えない一本。アイディア満載のステージと見た目からは想像も付かない鬱なストーリー、秀逸で憎たらしい(※誉め言葉)日本語テキストを堪能してみよう。猫好きにもお薦めだ。
[基本情報]
タイトル:『ボクと僕の世界で』
制作者:Wish Fang / Ratalaika Games(※販売&国内版ローカライズ:レイニーフロッグ)
クリア時間:2時間~5時間
価格: ¥1000
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https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000000922
The Next Penelope
フランス在住の個人開発者Aurelien Regard氏が制作した『The Next Penelope』は見下ろし視点(トップビュー)で繰り広げられるレースゲーム。2015年にSteamにてPC版が発売され、その後にWiiUでのリリースが計画されていた。
しかし、開発の難航によって延期を繰り返し、最終的にキャンセル。そのリベンジを兼ねて制作されたのがこちらのNintendo Switch版となる。移植は「Seven Studio」が手掛けた。2017年12月27日には日本語版も配信。ローカライズは「架け橋ゲームズ」が担当している。
ストーリーと世界観はギリシャ神話をモチーフにしており、失踪したオデュッセウスを探しだすべく、その妻のペネロペがポセイドンと求婚者達の追撃をかわしながら様々な惑星を巡っていく。
見た目は1980年代のアーケードゲームで見かけられた懐かしのレースゲームだが、自機はオートで走行し、プレイヤーはハンドルの操作だけに集中すればよい。また、シューティング要素が取り入れられており、走行するライバル機に対してマシンガンを照射したり、地雷を設置してそれに巻き込ませると言った攻撃的な戦術を取ることができる。
更に本編で繰り広げられるのはレースだけではない。後方から迫り来る怪物から逃げ切る、開放的なフィールドを走行しながら一定数のダイヤを回収する、落下防止のフェンスが無い道を進んでゴール到達を目指すミッションに挑む展開もある。惑星のラストにはボス戦も。しかも順位を競い合うのではなく、自機に備え付けられた武器でダメージを与えてトドメを刺すという純然たる一騎打ちで、もはやレースというよりはシューティングも同然なぶっ飛んだものになっている。
一見、水と油の関係に見える二つのジャンルが高いレベルで融合したゲームデザインが魅力。各装備を使う際にエネルギーを消費するシステムを始め、『F-ZERO』、『WipEout』のオマージュも豊富で、それらの作品のプレイ経験があればニヤリとする場面もある。PC版と違い、Nintendo Switch版は日本語に完全対応しているのも大きなセールスポイント。ローカルによるマルチプレイもハード特性も相まってハードルが下げられていて、気軽に対戦を楽しめるのも見所だ。
普通のレースゲームに飽きたプレイヤーにこそ遊んでみて頂きたい怪作。ただ、難易度は高め。レースで獲得した経験値(XP)を使って自機を強化できるシステムも実装されているものの、過剰に強化すれば一方的な展開になる大味なバランスにはなっていない。クリアに要する時間は短めだが、それなりに腰を据えて挑む必要のある内容なので、これからプレイするに当たってはその辺を念頭に入れておくことをお薦めする。
なお、当もぐらゲームスではPC版のレビューを掲載している。興味のある方は参考にどうぞ。
[基本情報]
タイトル:『The Next Penelope』
制作者:Aurelien Regard / Seven Studio(※販売:Plug In Digital / 国内版ローカライズ:架け橋ゲームズ)
クリア時間:2時間~3時間
価格: ¥1280
購入はこちら
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000005326
Dandara
ブラジルのインディーデベロッパー「LONG HAT HOUSE」制作の探索型アクションゲーム。今回取り上げるインディーゲームの中では最も新しい作品で、2018年2月6日にNintendo Switchのほか、PlayStation 4、Xbox One、iOS、Android、PC(Steam)向けに配信された。いずれも日本語に対応。ローカライズは前述の『The Next Penelope』同様に架け橋ゲームズが担当している。
「エルダー」なる侵略者とその軍によって抑圧され、崩壊の瀬戸際に立たされた奇妙な世界「Salt」を舞台に、希望を照らす女戦士「Dandara」を操作し、エルダーの軍勢に立ち向かうというストーリー。最大の特色は「歩行」の概念が存在しないことで、足場に次ぐ足場を忍者のようにジャンプしては張り付くのを繰り返しながら進んでいくという、革新的な移動スタイルを採用している。関連して重力の概念もなく、地上だろうが天井だろうが壁だろうがお構いなく張り付ける。ただし、基本的にはジャンプする際に調節するカーソルに矢印(↓)が表示される場所に限られているので、どこでも張り付くことができる訳ではない。また、攻撃もショット型となっているが単発撃ちができず、チャージしないと放てない仕組みなので、一歩先を見据えて行動することが大事。他に敵を倒すと「ソルト」と呼ばれる経験値が手に入り、エリア内にある「キャンプ」と呼ばれる中継地点でDandaraのステータス強化を図ることができるが、仮に敵にやられてゲームオーバーになると獲得したソルト全て失って、最後に立ち寄ったキャンプまで戻されてしまう。ゲームオーバーになった場所まで戻れれば魂が漂流しているので、攻撃するか、直接触れることによって失ったソルトを取り戻すことができるが、逆にここに到達するまでの間に再びゲームオーバーになればソルトは永久喪失。再び一から集め直さねばならぬ手間が生じる、硬派でスリルのあるシステムも備え付けられている。
その特徴も相まって、万人にはお薦めしがたい作りなのだが、その革新的な移動スタイルと操作性、高めながらも素晴らしい達成感が味わえる難易度、不気味で神秘的な世界観などでプレイした者に強烈な印象を与える作品に完成されている。音楽も民族風の独特な楽曲が揃っている。
コンシューマ版のボタン操作、スマートデバイス版のタッチ操作の全てを体験できるのに加えて、全く持って自重しないHD振動を堪能できちゃったりと、Nintendo Switch版には他機種版にない特色が存在するのも大きな見所だ。
アクションゲームに苦手意識のあるプレイヤーにはお薦めしないが、逆に大好き、特に手応えのあるものを求めているのならプレイして然るべき一本。それでも移動スタイルから操作に至るまで、かなり人を選ぶが、刺さる人にはグッサリ深々と刺さって作品世界に毒されてしまう通好みな魅力がある。我こそは、というプレイヤーはぜひ、挑戦してみて欲しい。
[基本情報]
タイトル:『Dandara』
制作者:LONG HAT HOUSE(※販売:Raw Fury / 国内版ローカライズ:架け橋ゲームズ)
クリア時間:6時間~10時間
価格: ¥1690