追加要素有りのNintendo Switch版も登場した、4つの不思議世界を巡る謎解きADV『テトラ ワールドアドベンチャー』

アドベンチャー

ある日、迷い込んだ裏路地。
そこには、4つの世界へ繋がる扉があった。

冒険家のアナタは扉を潜り、世界を旅する。
その果てに何を見つけることができるのだろうか。

『TETRA』、またの名を『テトラ ワールドアドベンチャー』は2019年2月11日、スマートフォン・タブレット用無料アプリとしてリリースされた謎解きアドベンチャーゲーム。『スライドプリンセス』、『インコ脱出』、『ルルロロおさんぽパズル』と言ったスマートフォンアプリを制作してきた個人開発者bloom mushroom氏の最新作でもある。

2020年6月18日にはNintendo Switch版、その名も『TETRA for Nintendo Switch』がダウンロードソフトとしてリリースされた。こちらは有料タイトルで税込980円。販売は有限会社レジスタが担当している。

本記事は最新のNintendo Switch版を元に紹介する。

扉の先に待つ4つの世界を謎解きと共に巡る旅

内容は単純明快。4つの扉の先にある不思議な世界で謎解きに挑戦していくものだ。最終的に各世界の最奥で、鳥を連れた少女と出会うとワールドクリア。次のワールドへの扉が開放され、以降、その先の世界で再度、謎解きに挑み、最奥を目指すという流れだ。

謎解きは気になる場所を拡大、調査してアイテムを手に入れたり、それを用いて仕掛けを解除していくのが基本。要はカーソルを動かし、怪しい場所をしらみ潰し感覚で確かめていく感じだ。移動も前に進みたい場合は背景の奥をチェック、戻る場合は画面に表示された「▼」のボタンを押せばいいだけの簡易仕様。これと言って複雑な操作は求められない、お手軽設計だ。

なお、Nintendo Switch版はスマートフォン・タブレット版同様、タッチ操作もサポート。携帯モードでのプレイ時限定だが、オリジナルに近い操作系で遊ぶことができる。コントローラ操作はテレビ、携帯の双方に対応。先の通り、コントロールスティックでカーソルを動かし、気になる所があったらAボタンを押す、マウス操作をイメージしたものになっている。(方向キーなどにもショートカットが設定されている)

また、Nintendo Switch版は画面構成も刷新。中央にメイン画面、左右の枠にアイテム欄とヒントボタンを配置したものになっている。さらに4つのワールドに新たな謎を追加。これに合わせてボリュームも若干増え、オリジナル版をクリアした人も新鮮な気持ちで楽しめる内容になっている。

そして、有料タイトルになったことで、謎解きのヒントを見る際の仕組みも変更された。オリジナル版は無料アプリのため、閲覧の度に広告動画が挟まるようになっていた。ただ、タイトル画面から行ける広告設定で複数回広告動画を見れば以降、ヒントを自由に閲覧可能になる試みが成されていた。また、同様に広告動画を見続ければ、設定資料集も解禁される特典があった。

Nintendo Switch版は形態が違うことから、関連する要素は全て取り除かれている。少しネタバレになるが、設定資料集もエンディングを迎えると解禁されるという、いかにもな仕組みだ。

この広告動画にまつわる試みはある意味、オリジナル版の特色でもあったので、若干個性が欠けたきらいもある。だがその分、謎解きアドベンチャーとしての本編の面白さ、不思議なストーリーの2つの魅力が輝く内容に進化している感じだ。

実はヒント確認推奨のノベルゲーム!?

謎解きの面白さに関しては、何と言っても始まって間もなく、世界に放り出される構成にある。本作、プレイヤーこと主人公が置かれた状況を説明するテキストはほぼなく、周囲の空気や状況を読み取りながら謎解きに挑んでいくのだ。

なので、初回プレイ時は戸惑うこと請け合い。「え、もう始まっている?」「そもそも何なのここ!?」と、同じく不思議な世界へと連れて来られた主人公と共鳴するような感覚に襲われる。そして、手探り感覚で先を進み、動物の姿をした住民に会ったり、妙な仕掛けを発見、動かしたりしながら行動範囲を広げていく。

特に「ヒントを見たら負け」の信条を持って挑むと、まさに不思議な世界を旅する感覚を味わえるだろう。しかも、周囲の状況などを読み取りながら解法を探るだけに、見事引き当てた時の達成感は格別。状況説明を廃したなりの試行錯誤する面白さを追求した仕上がりだ。難易度もメモが必要になるものもあるが、総じて適度な塩梅。複雑な計算が要求されるようなものはないので、純粋に法則性を見つけ出して解を導く醍醐味を味わえる、これぞ謎解きアドベンチャーと豪語できる設計だ。

だが実を言うと本作、ヒント確認推奨の作りである。謎解きの面白さ、解く快感を紹介しながら本末転倒すぎるが、実際、そういうものなのだ。というのも、状況説明とストーリーは全てヒントを通して語られる。閲覧するかしないかで、世界観や主人公が置かれた境遇に関する理解度に差が出る特徴的な構造になっているのだ。

もちろん、一切閲覧せずともキャラクターの会話が発生するので、全く分からないままとはならない。だが、何も確認せず進めていけば、謎解きと各ワールドの舞台の裏に隠された真相がよく分からないまま終わってしまうだろう。それぐらいヒントの存在がカギになっている。謎解きを楽しむゲームとしては異例の仕掛けが凝らされているのだ。

しかし、不思議な世界を巡っていく本編のどこにストーリーが……と、初めて間もない頃は感じるかもしれない。最後に出会う少女が意味深に感じるぐらいだ。

だが、ワールド3から徐々に違和感が生じ始める。急に世界の様子が変わるだけでなく、ヒントの内容、少女の台詞にも不穏な言葉が現れる。そして解放されるワールド4と、その最奥に用意されたゴール。

以降、本作が謎解きアドベンチャーの姿をしたノベルゲームである実態を目にすることだろう。さらに新たな謎解きが課せられる。それはストーリーの全容解明だ。これ自体は解くか解かないかはプレイヤーの自由なので、そのまま流れるがままエンディングを迎えてしまってもいい。しかし、確認でき得る全ての情報に目を通し、考察を重ねて辿り着いた時は本作の印象が一変する。全てが”まやかし”であったことに。

その裏に何が隠されているかは実際にその目で確かめていただきたい。そして、改めて謎解きアドベンチャーという公称に向き合ってみていただきたい。先ほどノベルゲームと表したが、その意味を痛感させられるだろう。

Nintendo Switch版の追加要素は終盤が必見

ストーリー絡みでは、各世界で出会う登場人物たちも魅力的。いずれも容姿の可愛らしさもさることながら、時にドキッとする台詞で強い印象を残す。そして、この世界を巡ることになる主人公の設定も興味深い。一通りの全容を解明した後、再びゲームを最初からやり直してみれば、その独白を綴ったヒントメッセージの印象が180度一変し、今までの前提が覆されるだろう。そんな見所があるため、可能であれば本作、クリア後も最初からプレイしてみていただきたい。全容を解明した後であれば尚更。きっと1周目とは異なる心持ちで世界を巡る旅と謎解きを味わえるだろう。

そのほか、ボリュームも謎解きへの接し方によって上下するが、大体3~5時間ほどの適度な物量。Nintendo Switch版は追加パートが加わった関係で、オリジナル版よりも気持ち長めになっている。

追加された謎解きも水増し感はなく、各ワールドの世界観に溶け込んだ作りになっているのが巧みだ。一番の見所は何と言っても終盤。オリジナル版だと比較的、あっという間に終えられる構成だったがこちらは……見てのお楽しみ。なかなか感慨深い構成になっているので、そちらをプレイ済みの方ならばぜひ、ご覧いただきたい。

Nintendo Switch版の気になる点をあえて挙げると操作性。カーソルを調べたい所まで動かさねばならないため、やはりタッチ操作と比べて煩わしい。エリア移動も後退はBボタンのキャンセルで可能なのに、前進は奥をチェックする以外に無いのがもどかしい。

唯一、Yボタンだけ配置が空いているが、ここに割り当てられなかったのだろうか?結果的に最適化が甘い仕上がりになってしまっているのが残念だ。またオリジナル版同様、ワールドクリアまでの間、セーブができないのも不便。まあ、スリープモードで暫定的な中断は可能なので、些細な点だが少し気になってしまう仕様ではある。

若干、あと一歩な感じはあるが、出来は非常によく、謎解きアドベンチャーとノベルゲーム、2つの顔を合わせ持った独自の作品に完成されている。歯応えのある謎解きを求める人にも、ストーリーを楽しみたい人にもおすすめできる良作だ。

一連の魅力はNintendo Switch版に限らず、オリジナルのスマートフォン・タブレット版でも十分味わえるので、未プレイならお好きな方を。もしボリューム感、謎解きの歯応えをお求めなら、最新のNintendo Switch版をどうぞ。

[基本情報]
タイトル:『テトラ ワールドアドベンチャー / TETRA for Nintendo Switch』
作者:Bloom Mushroom(※Nintendo Switch版販売:レジスタ)
クリア時間:3~5時間
対応プラットフォーム:Nintendo Switch
価格:無料(iOS、Android) / ¥980

※購入はこちら(Nintendo Switch版)
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000022203

※ダウンロードはこちら

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