TGS2019『薔薇と椿』プレイレポート&インタビュー / 「NIGORO」と「room6」のタッグで蘇る、伝説の”おビンタバトルゲーム”

アクション,イベントレポート,インディーゲーム

千葉・幕張メッセで9月12日から15日の四日間開催された「東京ゲームショウ2019」。そのインディーゲームコーナーに伝説的とまで謳われた名作のスマートフォン版が出展されていた。その名は『薔薇と椿』。

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遺跡探検考古学アクションアドベンチャーゲーム『LA-MULANA(ラ・ムラーナ)』で知られるインディーゲーム開発チーム「NIGORO(ニゴロ)」が2007年、ブラウザ用FLASHゲームとして公開し、累計1500万回プレイされる一大的な記録を残した”おビンタバトルゲーム”だ。

”おスワイプ”で頬を引っ叩き、ここぞという時に”往復おビンタ”!

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華族「椿小路(つばきこうじ)家」の長男、俊介の嫁として嫁いだ玲子。
だがその次の日、夫の俊介は息を引き取ってしまう。
そして椿小路家の人々の高貴ないびりが続く中、玲子の中に秘めた庶民の血が燃え上がる。
俊介にもらった薔薇の花を胸に、玲子は椿小路家の人々に宣戦布告を行ったのだ。
「椿小路家は長男の嫁である私が頂く」。これは女たちの華麗なる戦いである。

このような物語と共に始まる本作の内容を端的に紹介すると、平手打ち(ビンタ)の応酬である。主人公の玲子となり、高貴ないびりを繰り広げる椿小路家の人々と一対一のビンタバトルに挑む。最終的に相手の体力をゼロにできれば勝利だ。

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原作のFLASH版はビンタと回避の動作をマウスで行う形となっていた。今回のスマートフォン版では、これらをタッチスクリーンの特色を活かしたスワイプ……もとい、”おスワイプ”操作へと一新。画面に表示された相手の頬を直接なぞるようにしてバチーンとぶっ叩く、とても分かりやすく、それでいて直感的なスタイルへと改められた。回避の際の行動も、主人公である玲子をおスワイプして行う形に。これによって、スピーディな攻防が展開される作りに進化した。

また、格闘要素を強化。攻撃を続け、一定の条件が達成されると相手の胸元に「つかめ!」というサインが表示。これをタッチすると、相手の頬を思うがままにバシバシする「往復”おビンタ”」をぶちかませるようになった。大ダメージを与えるチャンスでもあるため、上手く行けば不利だった形勢が逆転することも。また、トドメの一撃がこれになった時も痛快の一言。憎たらしい椿小路家の人々を文字通り張り倒し、ねじ伏せる圧倒的な爽快感を味わえる。

今回、ゲームショウに出展されたデモで楽しめたのは一戦のみと短め。しかしながら、原作のFLASH版を見事にスマートフォンへと落とし込んだ仕上がりで、”おスワイプ”による基本操作が元々のビンタバトルの魅力を大きく高めていて、より一層輝きを増した印象を抱かせた。それもあってか、原作のFLASH版を知らないプレイヤーへの訴求力も増していて、ゲームショウ開催時期には出展ブースが多くの人で賑わっている様子が見られた。何より、女性プレイヤーが笑いながら遊んでいた光景が印象的だ。

room6、NIGOROの方々にお尋ねした制作の始まり

ところで原作兼制作の「NIGORO」は日本時間の2018年7月31日、看板作品でもある『LA-MULANA』の続編、『LA-MULANA 2』のPC版をリリースした(※2019年6月27日には家庭用ゲーム機版も発売された)。その完成を祝い、2日前の7月29日には東京・秋葉原で「LA-MULANA通の会」と称されたトークイベントを開催。当もぐらゲームスでもその模様をお伝えした。

そんな同イベントでは、これまでにNIGOROが制作してきたFLASHゲームの今後について触れられる一幕があった。既報の通り、FLASHはAdobeが2020年末にサポートを終えることを発表している。ゆえに、いずれはNIGOROの公式サイトにて遊べるFLASHゲームの数々が遊べなくなってしまうのだ。イベント当時、NIGOROの楢村匠氏は他のプラットフォームへの移植は考えていないが、誰か手伝ってくれれば歓迎すると発言されていた。中でも『薔薇と椿』は、何らかの形で残すことを模索している、と。

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あれから1年。『薔薇と椿』はスマートフォンアプリとして誕生する運びとなった。そんなスマートフォン版の協力を名乗り上げたのは株式会社room6。

Nintendo Switch版『ARTIFACT ADVENTURE 外伝DX』の販売を担当したことが記憶に新しいメーカーだ。ちなみに2019年9月20日、最新の『Nintendo Switch Lite』発売と共に同作は10%のセール価格で販売中だ(※10月16日まで)。興味があればぜひ、ご検討いただきたい。

話を『薔薇と椿』に戻すとして。
今回、ゲームショウ会場においてroom6代表の木村征史氏のほか、NIGOROの楢村氏に直接お話をうかがうことができた。

まず、いつから今回のスマートフォン版の制作が始まったのか。木村氏と楢村氏によれば、なんと2019年6月1、2日に京都・みやこメッセで開催された「BitSummit 7 Spirits」の後。僅か3ヶ月前のつい最近のことだったというのだ。(※実制作開始はなんと8月くらいだったとか。)

楢村氏いわく「LA-MULANA通の会」の頃は移植に関する話が全くなく、当面は『LA-MULANA 2』に集中していたとのこと。
そんな中、「BitSummit 7 Spirits」の後にroom6から提案があって、制作が決まったようだ。そのため、東京ゲームショウの開催前……厳密には9月12日の初日(ビジネスデイ1日目)直前までキャラクターの絵を描いたり、調整を続けていたという。

また、スマートフォン版の新要素「往復”おビンタ”」も実装されたのもなんとTGS直前。提案したのは楢村氏のようで、実装によってゲームプレイに奥行きが出せたのみならず、プレイヤーからいい反応が得られていると確かな手応えを感じているようだ。実際に笑いながら遊ぶ人は多く見られ、プレイヤーの喜ぶゲームを作りたい思いがある楢村氏はその光景に感無量の思いだったようだ。さらにNIGOROのゲームでこんなにも女性のプレイヤーに遊ばれた作品は初めて、とも。

気になる配信時期は2019年内……冬頃を予定していて、無料アプリ(※マネタイズは広告+課金方式)としてリリースされることになるようだ。今回、NIGOROとしては初のモバイル向けタイトルというのもあって、手探りで進めているとのこと。マネタイズも木村氏いわく、あまり世界観を壊さず、ガッツリという感じにもならないよう気を付け、ファンの方にクスッと笑ってもらえるものを考えたいという。また、現時点で登場キャラクターは五人だが、リリース後にキャラクター、シナリオを追加するアップデートも検討中とのこと。原作のFLASH版には続編の『薔薇と椿2』もあるだけに、そちらが丸々実装されるのか、あるいはまったく新しい形になるのか、期待が膨らむばかりだ。

あのコラボレーションした作品のキャラクターも登場?

また、『薔薇と椿』と言えば忘れてはならない、ノベルゲーム『ファタモルガーナの館』とコラボレーションした『薔薇と椿とファタモルガーナ』だ。こちらのキャラクターが追加される可能性についても伺ったところ、「(ノベクタクルさんの)許可が降りればあるかも(笑)」とのこと。楢村氏としてはやりたい気持ちが強いようで、ノベクタクルの動きに期待してしまうところだ。

コラボレーションと言えば、『LA-MULANA 2』の家庭用ゲーム機版に新規に実装された著名なインディーゲームキャラクター達の登場もあるが、こちらの施策については「やるにしても女性縛りになってしまうのが……」ということで、実現の難易度は高そうだ。しかし、実現すればそれはそれで面白いことになりそうである。
女性キャラが多く登場する『Va-11 Hall-A』は特に……。

最後に『薔薇と椿』以外のFLASHゲームの移植に関してだが、こちらはまだ検討段階とのこと。ただ、作者としてはどのゲームも愛しているので、例えば「itch.io」にフリーゲームで配信してみると言った、色々な可能性を模索しているようだ。流れとしては今回の『薔薇と椿』の後になってしまうが、次なる展開を楽しみに待ちたいところである。

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国内外を問わず、カルト的な人気を博したFLASH版の『薔薇と椿』。スマートフォンへの進出によって得られた”おスワイプ操作”、”往復おビンタ”の新フィーチャーの数々は、リリース後にいかなる反響を呼ぶのか。繰り返しになるが、配信時期は2019年内、冬頃。動向が気になる人はroom6の公式TwitterNIGOROの公式Twitterを要チェックだ。

  • シェループ(@shelloop

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