もし、アナタが「普通のアクションゲームには興味ありません。ヘンなものをよこしなさい」と豪語される御方であるなら、『THE SEGMENT TWINS』は前代未聞の双子”切り替え”バトルが楽しめるイチオシの1本だ。

アクション,インディーゲーム

”TWINS”の単語の通り、本作『THE SEGMENT TWINS(セグメント・ツインズ)』は双子のキャラクターが主役のアクションゲームである。TWINSには他にも様々な意味があったりするが、本作はそのまんまの”ツインズ”である。

双子が主人公というと、それぞれのキャラクターを切り替えながら遊ぶゲームが想像されるだろう。実際、その通りである。

ところが、本作はその切り替えが奇抜なものになっている。そして、それによるスタイリッシュで脳内パニックな戦闘が楽しめることを売りにしたアクションゲームに仕上げられている。もし「ただのアクションゲームには興味がありません。ヘンなものをアタシに寄こしなさい」という感じにアナタが欲しているとすれば、本作はうってつけの1本だ。

キャラクターの強制切り替えに対処しながら戦うアクションゲーム

『THE SEGMENT TWINS』は韓国の個人ディベロッパー・HeungDoReu-HeungDol氏による、俯瞰視点(トップビュー)のアクションゲームだ。2023年6月15日より、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」にて販売中されている。

本作の主人公を務める双子は、「アマンダ」と「マチルダ」の姉妹。2人は知的で人間に害をなすキノコのようなモンスター「マッシュ」を退治する「マッシュハンター」として生計を立てている。その活動は幼い頃にまでさかのぼり、2人は経験を積むにしたがって「GUNSLINGER(ガンスリンガー)」「SWORDMASTER(ソードマスター)」の攻撃スタイルを持つようになっている。

そんなある日、2人はマッシュのトラップに引っ掛かり、奇妙な世界へと迷い込んでしまう。そして2人は「セグメント」と呼ばれる謎の領域によって分断され、一緒になっての行動ができなくなってしまった。それと共に襲い来る、マッシュたちの群れ。2人はこの奇妙な世界から脱出するため、マッシュたちを退治しながらその出口を探す旅に出る……というのがストーリーのあらましとなる。

アクションゲームとしてはステージクリア型。ステージは「アクト(ACT)」と称された15以上の小さな箱庭フィールドで構成されていて、これを順番に突破しながら、最終アクトで待ち受ける大ボスの撃破を目指すというのが主な流れとなる。大ボスを撃破できればステージクリア。逆にその途上で「エンジェル」こと残機が尽きてしまうとゲームオーバー。ステージの最初(アクト1)からやり直しになる。途中のアクトからの再開はできず、基本、どのステージも通しプレイが必須になる仕組みだ。いわゆるアーケードライクとも称されるスタイルが採用されている。その種のゲーム定番のスコアもあり、一定値を超えるとエンジェル(残機)が増えるシステムも備わっている。

また、アクトごとのクリア条件は単純明快。敵であるキノコのようなモンスター「マッシュ」たちを全滅させるだけだ。全滅させると「ポータル」が現れ、入ると次のアクトへと移り、再びマッシュたちとの戦いが始まる。以降もその繰り返し。
要は大ボスの所に行きつくまで、ひたすら”キノコ狩り”である。

ただ、アクトによっては中ボス戦、ミニゲーム、アップグレードという特殊なタイプが挟まることも。特にアップグレードは重要で、ここで双子のステータス強化を図れる。

項目は複数あり、強化する際にはキノコ狩りなどを通して得られた「ルビー」を消費する。強化されたステータスは永続するため、どれを選んだかによって、以降の難易度が変化。あえて強化しない選択も可能だが、その後が厳しくなるのは言うまでもなく。ただ、逆に手持ちの「ルビー」がさらに増え、より広範囲かつ急激な強化が図れるようになるメリットもある。なので、どうするかはプレイヤーの戦略(戦術)次第。そんなプレイスタイルの幅を生み出すアクト(兼システム)となっている。

そして、システム面最大の特徴がタイトルにも冠されている「セグメント」による切り替えだ。冒頭で言及した通り、本作は双子のアマンダ、マチルダの2人を切り替えながら操作し、マッシュたちとの戦いを繰り広げていく。
だが、その切り替えはプレイヤーの任意で実施できない。想像されやすいのが特定のボタンを押して切り替えるというものだが、本作は違う。そもそも、そんなものはない。フィールドにある「セグメント」に足を踏み入れる形で実施するのだ。


▲濃いセグメント(領域)なら「アマンダ」、薄いセグメントなら「マチルダ」に切り替わる。

各アクトのフィールドには色の異なるセグメント、言い方を変えれば領域が存在し、ここに足を踏み入れることで色に応じたキャラクターへと”強制的に”切り替わる。色の濃い領域ならアマンダ、薄い領域ならマチルダといった感じだ。
なので、戦闘ではこの切り替えの発生を前提とした立ち回りが必須。動き方次第で強制的に現在操作しているキャラクターが変わってしまうからだ。

当然、キャラクターが変われば攻撃手段も変わる。アマンダは「ガンスリンガー」、銃火器や爆弾を使った遠距離タイプに対し、マチルダは「ソードマスター」、剣を用いて戦う接近戦タイプだ。全く性質が違うゆえ、セグメントの侵入タイミングによっては、攻撃が途切れて隙が生じる恐れもある。加えて本作は敵が激しく攻撃を仕掛けてくるため、ある程度、アドリブで回避することも必要になる。そうなると、セグメントへの侵入は不可避となるので、そうなった際にどんな行動を取るかが大きく問われる。

このようにキャラクターの切り替え自体がステージ内の”仕掛け”として組み込まれ、それを踏まえて戦っていくことが本作最大の特徴となっている。プレイヤーがキャラクターの切り替えに干渉できないのだ。
厳密には「インバートセグメント」という、セグメントを反転させるスキルを使えば一応、”任意”と言える切り替えはできる。しかし、あくまでもセグメントだけの反転。どのみち、侵入による強制切り替えからは逃れられず、基本、発生前提の上で戦うのだ。

アクションゲームとしてのゲームデザインは、王道のステージクリア型と分かりやすい。逆に分かりやすい分、システムをゴリゴリに尖らせている。まさにいい意味で正統派ではない”ヘンな”アクションゲームなのである。

”ヘンな”事態を想定し、最適な立ち回りを探る面白さと手ごわさ

最大の魅力も分かりやすく、「セグメント」を筆頭とするシステム全般である。

同じキャラクターを使い続けることが難しく、立ち回り次第で切り替えが強制実施されるので、そのことを意識した戦術を心がけないと、敵であるマッシュたちへの効果的な攻撃も難しい。セグメントの配置を把握するのも重要で、どう動けば切り替えが生じ、そのタイミングでどう動けばこちらの攻撃を繋げられるかを常に考え、実行に移しつつ戦うことになる。おかげで一戦一戦が慌ただしく、脳内も忙しい。

一応、双子の違いは攻撃スタイルだけで、移動速度を始めとするアクションおよびその特徴は共通。発動すると一時的に無敵となる「ダッシュ」もどちらかは遅いみたいな差異もなく、普通に使える。また、セグメントによる強制切り替えが発生した時にダッシュが発動中であっても途切れたりはせず、そのまま切り替わった双子が引き継ぐなど、テンポを殺いだり、プレイヤー側が不利になるような仕様は排除されている。連続攻撃中にセグメントの切り替えが発生した時も、その攻撃が止まるまでは続くようになっている。

ただし、攻撃は近距離と遠距離とで使い勝手や特徴に大きな差があるため、タイミング次第では大きな隙が生まれる。それを生まないためにはどう動けばいいか……と、戦いながら考え、実行に移していくのがどのアクトでも求められる。それもあって、本当に慌ただしく、退屈しにくい。加えてフィールドの立ち位置によって切り替えが強制発動する仕組みから、将棋を思わせる戦略性があり、それをアクションゲームのリアルタイム性へと落とし込んで昇華させたと思しき個性的なまとめ方をしているのだ。

最初こそ、この仕組みには戸惑いを覚えるのは避けられないだろう。ただ、慣れてくると戦略的かつ双子の一心同体なスタイリッシュアクションが楽しめる。同時にそうした動きをしながらマッシュたちを狩っていく快感がクセになってしまうだろう。

セグメント以外にも戦略性を際立たせる要素が充実しているのも見所。とりわけ画面左下端にある、双子のアイコンで表された「イクシードゲージ」が満タンになると使用可能になる「イクシードモード」……それぞれの通常攻撃を強化させるモードは、耐久力の高い敵を素早く倒したい時などにおける強力な逆転要素となっている。ただし、発動は切り替え発生と同時に加えて制限時間付き。

特に後者は非常に短いため、急いで使わないとあっという間に時間切れになる。さらにゲージを貯められるのは切り替えで強制的に待機中へと移行した双子だけ。戦闘中の(フィールドに出ている)双子には貯まらないのだ。このような特徴もあって、使い所とタイミングはよく考える必要があり、分かりやすいほど強力ながら、頭を使う必要もあるユニークな要素になっている。

広範囲の敵に強力な一撃を決められる「スキル」もそのひとつ。これらは敵を倒した際に手に入るEXP(経験値)が一定数貯まり、レベルが上がると解禁される仕組みになっている。レベルは最大で4まで上げられるのだが、逆にダメージを受けるとレベルが低下。解禁したスキルも再び封印され、使えなくなってしまう

なので、敵の攻撃を受けすぎないように立ち回ることが大事。一応、「シールド」があればレベルが下がることはないが、シールドが消失して双子の体力が減り始めると待ったなしだ。下がったレベル自体は、再び経験値を貯めれば戻せるものの、そのためには攻撃の回避が重要。セグメントへ突入した時も踏まえ、どうすれば回避できるか、そして一時的に無敵になるダッシュを使えばいいか。ここにも考える要素は満載で、戦闘に奥行きをプラスしている。

他にも双子それぞれに設定された体力、ノーマル・ディスタンス・ホールドの3種類の攻撃などの戦略的な要素があるのだが、いずれも長くなるので割愛。もう、ここまでの時点で分かるように本当に色んな要素が盛り込まれている。そして、それによって様々な戦術を可能にし、正統派のアクションゲームにはない”ヘン”な体験を生み出している。

見た感じ、ハードルの高そうなところもあるが、相応に遊び応えは十分。また難易度も選べて、「EASY」ならあまり細かいことを考えず直感的に楽しむことも可能だ。ただ、本作の真髄は「NORMAL」以上にあり、このゲーム特有のヘンな味と痛みが堪能できる。

だからこそ、本作はヘンなものを求める人ほど打ってつけと言えるのだ。ある意味、非常にインディーゲームらしいインディーゲームとも言える。特にシステムの奇抜さを求める人なら、確実に刺さる内容と言ってもいいだろう。正統派のアクションゲームを求めている場合は、あらかじめ”ヘン”であること覚悟し、最初は「EASY」で遊ぶ形で行こう。(そもそも、システム的に慣れが必要なため、どのみち1周目は「EASY」推奨)

『キルラキル』などのトリガー作品を思わせるビジュアルにも注目

また、戦略性があるというのは、逆に慣れるまではなにがなんだか分からない状態が続くことを意味する。とりわけ「EASY」ではその簡単さもあって、適当にボタンを押しているだけで楽しめてしまうゲームの印象を持ちやすい。

それに本作は最初から最後まで、敵の全滅を目的にした戦闘が繰り返されるため、内容的に単調さがある。しかも、1ステージ当たりに15アクト以上用意されているため、後半に行くほど水増し感を抱きやすくなる。「EASY」でプレイした時は尚更だろう。

ただ、「NORMAL」以上の難易度なら、考えながら戦う面白さがプラスされるので、多少は気になりにくいはず。なので、もし「EASY」で遊んでいて刺激が足りないと感じたのなら、「NORMAL」以降の難易度を選んで欲しいところだ。

他にここまで掲載したスクリーンショットの通り、本作はグラフィックも尖ったセンスが炸裂している。演出面もスタイリッシュかつ派手に加え、『キルラキル』、『サイバーパンク エッジランナーズ』などで知られるTRIGGER(トリガー)作品……厳密には今石洋之監督作品をオマージュした、大きな文字を使ったムービーデモが大変印象的だ。

それでいて、音楽はどこか優しくほのぼのとした雰囲気の楽曲中心なのもユニーク。システムの尖りっぷりに目が行きがちだが、このグラフィックと音楽を味わうだけでも、本作でしか味わえない”なにか”が得られるだろう。


▲このようなエフェクトが確認された場合は直ちに「LOW」への変更を!

ただ、エフェクトに関してはひとつ注意が。画質の設定が「最高(HIGH)」であると、色遣いが激しくなってチカチカするようになる。この辺りは環境によってはそうならないこともあるが、もし、エフェクトの激化が確認された場合は設定を「最低(LOW)」に変更することを強く推奨する。色遣いが激しいままのプレイだと、目への負担のみならず、体調にも悪影響を及ぼしかねないため、ご注意いただきたい。(念のため、プレイする場合は必ず部屋を明るくし、(モニターからの)距離を取るなどの対策をしておくことを推奨する)

色々粗削りに感じる部分もあれど、尖りに尖ったシステムとそれによって実現した戦略性、鮮烈なビジュアルはプレイすれば強烈な印象を残すものに仕上げられている。アクションゲームとしても軽快な操作性、敵を倒した際の手触りの良さを始め、ジャンルの醍醐味を押さえているほか、システムのおかげで独自性の高い上達する快感が味わえる魅力がある。

エンディングまでに要する時間はだいたい2時間から2時間半ほど。前述したが、難易度「EASY」であればシステムを意識しない大らかなスタイルで遊ぶこともできる。だが、本当の魅力はそれ以上の難易度でプレイした時で、まさに”ヘンな”アクションゲームを求める人の欲求に応える未知の戦闘が待っている。アクションゲーム好きにも唯一無二の体験が味わえる内容になっているので、ぜひお試しいただきたい。

さあ、奇怪な世界を舞台にしたキノコ狩りの幕開けだ!

[基本情報]
タイトル:『THE SEGMENT TWINS』
開発:HeungDoReu-HeungDol
クリア時間:2~3時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):1,000円

◇購入はこちら
・Steam

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence