ADV・ノベル&学生ゲームオンリー!東京ゲームダンジョン外伝で見つけた注目インディーゲーム8選

イベントレポート

2022年の初開催以降、規模と存在感を大きく増しているインディゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」(関連記事)。その派生イベントとして「東京ゲームダンジョン外伝」が2024年7月14日に東京・四ツ谷のnote placeを会場として開催された。会場ではのべ80団体が出展を行い、一般客の入場に際しては前後半の交代制がとられていた。

東京ゲームダンジョン外伝の特徴として、ルームAの「ノベル・アドベンチャーゲーム」とルームBの「学生作品」の2種にジャンルを限定している点が挙げられる。ジャンルを絞ることになったきっかけとして、それぞれのジャンルの製作者からの要望に加えて、本イベントで運営協力を行う東京工業大学デジタル創作同好会traPより「校内で行うイベントでは学外の人に来てもらいにくいため、外部で出展できる機会が欲しい」という要望があったとのことで、その要望の通りに学生達にとっての貴重な機会になっていたと言えるだろう。

本記事では取材陣が注目した作品をルームAとルームBからそれぞれ4点、合わせて8点を紹介するので、気になった作品があればチェックしてみてほしい。

ルームA(ノベル・アドベンチャーゲーム)

Starlit Chronicles Studio『イツカノヨル』

Starlit Chronicles Studio制作の『イツカノヨル』は、看守となり死刑囚である人外の少女と面会室のガラス越しに対話するというシリアスなシチュエーションで始まる短編アドベンチャーゲーム。unityroom主催のゲームジャム「Unity1週間ゲームジャム(unity1week)」の「1ボタン」をテーマとした回に参加していた同名作品をリメイクしたものとなる。

本作では目の前に用意されたボタンを押すことでどのタイミングでも処刑を実行することができるのが特徴。ボタンを押せばすぐさま、押さない場合でも刑の執行日である5日目にエンディングとなる。1回のプレイが5分程度と短く、繰り返しプレイして様々な結末を探って楽しむのにも適した作りとなっている(それはすなわち、好奇心を満たすために彼女を屠るということでもあるが…)。

問答無用に処刑をしてしまうのか、それとも少女の話に耳を傾けて情けをかけてしまうのか、その心理を問われることになる。会場では驚愕のリアル処刑ボタンが用意されており、より臨場感のある形でのプレイが可能となっていた。本作はわくわくゲームズをパブリッシャーとしてSteamにて2024年内に販売予定だ。
(真野 崇)

Website: https://x.com/Indigo_Ingots

ニャモリ@『イカスミポーション』

ケモミミや人外キャラクターを題材とした創作を展開するニャモリ@のブースでは、既に公開中のフリーゲーム『プリンセス×オーディエンス』に加えて、開発中の新規タイトル『イカスミポーション』の展示が行われていた。

腹に一物ありそうなイカ族の店主のスミミにポーションの材料を渡し、イカスミを加えて出来上がったポーションを街に持っていって販売して売り上げを稼いでいく。店を訪れる顧客はそれぞれにポーションに求める効能の要望を提示してくるので、図鑑とポーションを照らし合わせてその要望に合うポーションを販売していくことが重要だ。

キャラクター達はデザインの愛らしさのみならず豊富なアニメーションで動き、見ているだけでも楽しい一作となっている。本作はSteamにて2025年配信予定となっている。
(真野 崇)

Website: https://x.com/tunatiki11

Studio To:NEMO『在りし日のわたし達へ』

Studio To:NEMOが開発中の『在りし日のわたし達へ』は、「リバースド・パストラルADV」を謳う作品。「反転・逆転」「理想と希望」「現実と絶望」をテーマに、記憶を失った少年シン、大人になることを夢見る少女エレナ、彼らを世話する老人ダスティンの3人の視点から物語が描かれる。

展示ではシンからの視点で進行し、田舎暮らしから早く一人前になりたいというエレナの願いを見つめ、シンが街へと旅立とうとするまでの物語を読むことができた。その誰しもが持つであろう願いに共感すると共に、他の2人からの視点がどのように描かれていくのかも気になるところだ。

登場人物の情報は「手記」にまとめられ、物語が進んでいくごとに記載が追加されていくようになっている。システムやストーリーで奇をてらうような箇所はなく王道のノベルゲームとして楽しめそうな作品だ。本作は2024年第3四半期にSteamでの早期アクセス開始が予定されており、早期アクセスでのフィードバックを得て番外編等のコンテンツを拡充していく予定とのこと。
(真野 崇)

Website: https://www.studiotonemo.com/

スタジオゆいちゃん『おはゆいちゃん 爆発』

あいさつといえば、爆発!『おはゆいちゃん 爆発』は、グラフィック担当のやいぎ氏とサウンド担当のuynet氏の2名による2D見下ろし型の探索アドベンチャーゲーム。ブースではゲームの展示以外にもサウンドトラック等の様々なグッズが用意されていた。

天使のように宙に浮く少女・ゆいちゃんを操作して人々に「あいさつ」をすることで「おはパワー」が溜まり、おはパワーが溜まると道を塞ぐ大岩を爆発させることができる。おはパワーを溜めるべく人を探してあいさつにまい進しよう。あいさつをする前に頼まれ事をされることもあり、その際は頼まれ事を先に解決する必要がある。

可愛らしくて幻想的、でもちょっぴりシュールな不思議な世界が展開される作品となっている。完成版はBOOTH等での公開が予定されている。
(真野 崇)

Website: https://x.com/studio_uy

ルームB(学生作品)

60%電電『OneTurnKill -Definitive Edition-』

『OneTurnKill -Defenitive Edition-』は、本イベントで運営協力を行っている東工大traPのチーム・60%電電による1人用トレーディングカードゲーム。「Definitive Edition」であることに疑問を持ち質問したところ、本作には前身となるハッカソン作品が存在しており、その改良版にあたるためとのこと。

自販機でカードを集めてカード20枚からなるデッキ(山札)を構築したのち、敵との1対1の対戦を行っていくが、タイトル名の通りにワンターンキル、すなわち「自身の1回の手番内で対戦相手を倒しきる」ことが目的となる。対戦相手に手番を渡すことは敗北を意味する。また、カードを使用するためのコストが「デッキからカードを引く枚数」に設定されており、カードを使い続けてデッキが無くなってしまうとそれ以上カードが使用できなくなる。

ワンターンキルを実現するためのコスト=デッキのやりくりに面白さと難しさが詰まっている作品で、手札をデッキに戻す効果を持つカードなどを有効に活用する必要がある。選択肢を広げるための有用な効果であるとみなしがちな「カードを引く」効果が自身の首を絞める結果にもなりうるというのがTCG経験者として唸らされるポイントとなっていた。
(真野 崇)

Team Stellagate『Stellagate』

Team Stellagateの『Stelllagate』も東工大traPのメンバーらが制作している作品で、こちらは12星座をモチーフにしたステージを攻略していく2Dパズルアクションゲームとなっている。

天使のような姿をした記憶喪失の人物を操作し、青く光るクリスタルの元へ向かうことが目的となる。ただジャンプするだけでは届かない場所へ行くためにはステージ上に置いてある箱を抱えたり一直線上に投げ飛ばすなどして運び、高所へ登るための足場としたり、2箇所の間を繋いでワープする「ゲート」を活用することになる。

ステージ構成はブロックを積むだけのステージからブロック投げ、スイッチ、ゲートといった各ギミックを使うステージへと程よくステップアップしていくようになっているほか、ステージを選択するためのエリアも一種のパズルとなっていてパズル好きにはたまらない。また、ゲートの先に転送先の景色が視野のように広がる独自の表現は必見だ。本作はitch.ioにて体験版が公開中のほか、Steamにて2024年9月を目標にリリース予定となっている。
(真野 崇)

Website: https://stellagate.trap.games/

チームフッカル『ケーキスマッシュ』

『ケーキスマッシュ』は東京国際工科専門職大学のチームフッカルによるアクションゲーム。大型のボタンや机に用意されたピコピコハンマーなど、ゲームセンターに設置される体感ゲームを思わせる展示を行っていた。

本作では3色のボタンが用意されており、ベルトコンベアで流れてくるケーキの下段の色と合致した色のボタンを叩いてケーキをダルマ落としのように崩していく。制限時間内に規定ノルマ数のケーキを崩すことができればクリアとなる。

いわゆる「もぐらたたき」のようなシンプルな作品…と思いきや、そこに一味を加えるのがフットペダルの存在。ケーキ工場の警備員が巡回に来た際にはフットペダルを操作して身を隠す必要があり、隠れている間は警備員がいつ通り過ぎるのかとヤキモキさせられる。中にはフェイントを仕掛ける警備員もいるため注意が必要だ。
(真野 崇)

Website: https://x.com/FukkaruGames

ノンリニア『Near The Sun』

東京大学発のゲーム制作サークル・ノンリニアによる『Near The Sun』は2D横スクロール型のステルスアクションゲーム。妹を背中に背負ったまま進む兄という物語を感じさせるビジュアルが目を惹く一作だ。

壁蹴りや8方向に移動可能なエアダッシュ、アイテムを駆使してロボット達の視界に入らないように隠れて進んでいく。また「バッテリー」ゲージが存在しており、バッテリーはエアダッシュを行う際に消費するほか、ロボットに見つかってしまった際の猶予時間にもなっており、残量がゼロになってしまうとチェックポイントから再スタートとなる。連続エアダッシュでバッテリーを消耗した状態から発見された場合はすぐにアウトとなってしまうため、適度にバッテリーを回復させるタイミングを設けることが重要になりそうだ。

展示で体験できる範囲はアクション部分が中心となっていたが、ストーリーについては探索するステージの順番に応じてストーリーも分岐するマルチシナリオになるとのこと。本作はSteamにて2025年春の発売を予定している。
(真野 崇)

Website: https://x.com/n_linear

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。