時を止めるアクションRPG『Transistor』。iOSで楽しむ戦略性
PCとPS4で累計60万本以上を売り上げている名作インディゲーム『Transistor』がその面白さをそのままにiOSに移植された。聖剣伝説やクロノトリガーに大きく影響を受けた名作だ。iPhoneやiPadで気軽に遊べる。オサレで独特な世界観と、数々のファンクションを組み合わせた戦略性の高いバトルを楽しめる1作だ。特に、「ファンクションの組み合わせ」による戦略性は非常に奥深く仕上がっている。
ハードボイルドな雰囲気満点の未来都市を舞台に繰り広げられる歌姫の戦い
『Transistor』は『Bastion』を制作したSupergiant Gamesが2014年にPCでリリースした2.5DのアクションRPGだ。Cloudbankという架空の街で歌手のレッドと、魂が宿った剣The Transistorのコンビが、街の秩序をかき乱すカメラータ一味と「プロセス」と呼ばれる敵との戦いに挑む…というストーリーに仕上がっている。
おしゃべりな相棒、貫かれた者の想いを受け継ぐ剣Transistor
プレイしてまず目を引くのは、その独特なアートワーク。近未来的なビジュアルに、手描き風のイベントシーンやどこかなつかしさの漂うグラフィックが特徴的だ。特に作品全体を通して、緑と赤が映えるデザインになっている。
幻想的な未来都市Cloudbank
ステージ移動の際は、影絵のような構図でTransistorが語る。ハードボイルド
敵であるプロセスとの戦闘は基本的に固定戦闘だ。映画のようなハードボイルドなストーリーをテンポ良く進めることに重きが置かれているのか、ランダムエンカウントは存在せず、特定の地点までキャラクターを進めると敵が現れて戦闘が始まる。
戦闘は2.5DタイプのアクションRPGとなっており、区切られたエリアの中で、スキル=ファンクションを駆使しながら、敵の攻撃を避けつつ殲滅することになる。
戦闘の時はエリアが区切られ、遠距離攻撃を妨げるブロックが多数出現する。
時を止めている間に求められる戦略性
本作の特徴は一見アクション要素の強いゲームに見えるが、一言で言ってしまうと「戦略性の高さ」にある。それも戦闘そのものと、戦闘突入前の二重の意味で。
『Transistor』の戦闘の最大の特徴は時間を停止させるターン()だ。このターン()を使用すると、時間は停止する。その間に次の一定時間に行う攻撃や移動などの行動を全て仕掛ける、つまり「予約する」ことができる。
そして使用後数秒経つと再びターン()が使えるようになるといった具合になっている。
ターン()を使うと、時間が止まり、その中で次の行動の予約ができる。
上のバーが予約した行動。ファンクションによって掛かるコストが変わってくる。
もちろんターン()を使わずに進むことは可能だが、敵がかなり手強いため、ターン()を駆使しながら戦うことになる。時を止めて行動を入力するということを繰り返す。「予約」できる行動は総コストが決まっており、使うファンクションによって消費されるコストが異なってくる。敵へのダメージ量なども算出されるのは、シミュレーションRPGそのもの。限られた範囲で、如何に敵に有効な攻撃を行うか、そして敵の攻撃を防ぐかを綿密に考える必要があるのだ。
つまり、停止した時の中で、次の行動の組み合わせ=戦略を考えるのがこのゲームにおける戦闘の醍醐味であり、このゲームの戦闘はアクションRPGの皮を被ったターン制シミュレーションRPGだ。
特にiOS版では、キャラクターの移動や攻撃の照準合わせは全て目標をタップしなければ行えず、ファンクションを選びながら、攻撃や移動といった操作を同時に行うのは難しい。そのため時間を停止できるターン()は操作の面でも相性が良い。
無数に広がるファンクションの組み合わせ
さて、戦闘中に駆使することになるファンクション。このファンクションの組み合わせが非常に多様で、戦闘に入る前の時点で早くも戦略性が求められる。
各ファンクションは戦闘中の攻撃や移動、妨害などに特化している。4つのスロットにそれぞれ1つずつ割り振ることができるが、さらにサブスロットにファンクションを装備することで、メインのファンクションに付加効果を与えることができる。
ファンクション編成は各所にあるセーブポイントアクセスポイントで可能だ。ファンクションの組み合わせ次第で強力な攻撃も発動できる。例えば攻撃ファンクション「クラッシュ」に同じ攻撃ファンクションのバウンスを組み合わせると、単体攻撃が周囲の敵に連鎖するようになる。
また、パッシブファンクションのスロットに装備すると、他のスロットに装備した場合とはまた別の効果が得られる。
ファンクションを装備するにあたって、注意しなければいけないのが、ここでも登場するコストだ。各ファンクションにはコストが存在し、装備するファンクションのコストの総和は、定められた上限以下に抑えなければならない。強力なファンクションはもちろんコストが高いため、好き放題装備するわけにはいかないのだ。戦闘中の使い勝手も踏まえながら、自分の理想のファンクションの組み合わせを探求してほしい。このファンクション装備の組み合わせも戦略性がかなり高いと言えるだろう。
ゲームデザインに巧妙に埋め込まれた難易度調整
他にも、バックドアと呼ばれるおまけのステージが存在し、そこでは「テスト」と呼ばれるより戦略性の高いバトルを楽しめる、レッドが鼻歌を歌える、など様々な面白い要素もあるのだが、最後に難易度調整について紹介しておこう。
本作は難易度設定が存在しない。しかし、道中手に入る「リミッター」を使用することで、敵が強くなったり数が増えるなどのマイナス効果が生じるようになっている。使用すればするほど、難易度が上がる仕組みだ。一方、難易度が高くなる対価も用意されており、リミッターをつけるほど、敵を倒して得られる経験値は上昇する。
ここの「リミッター」を使用するというゲームデザインに、難易度調整そのものが組み込まれている点は非常に巧妙であり面白い。プレイしていて戦闘が物足りなくなったら、リミッターをつければいいのだ。
独特な世界観はプレイしているだけで楽しい。そして、ゲームデザインの根幹である、ファンクションの戦略性や難易度調整など、奥深い要素が多く、ゲームクリア後の2周目といったやりこみ要素も用意されている。
60万本以上を売り上げた人気作である理由も伺えるが、こうしたPCゲームの名作をスマホやタブレットで気軽に楽しめるのも魅力的だ。PC版、PS4版、iOS版、いずれもゲーム性は大きく変わらないので、遊びたいデバイスでCloudbankに飛び込んでみてはいかがだろうか。
[基本情報]
タイトル 『Transistor』
制作者 Supergiant Games
クリア時間 10時間以上
対応OS PC、iOS(iPhone、iPad)、PS4、
価格 PC版1,980円 iOS版1,200円 PS4版2,400円
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※2015年8月6日、PS4版は北米のみと記載していたところ、日本国内版が販売されているため、その旨を修正しております。読者の皆様にはご迷惑をおかけしました。