数字を大きくしよう、どこまでも。気づけば数時間を吸われる驚異的な中毒性を誇る『パズル ウヌムマキナ』
スマートフォン、タブレットの誕生と普及により、ゲームの操作系は一段と簡略化された。そして簡略化により、一部のジャンルは従来型コントローラで遊ぶ時にも増して、格段に取っつきやすいものになった。
その代表格がパズルゲームだろう。厳密には同じ色同士を合わせ、消していく「マッチ3」(3つ合わせ)ルールのパズルゲームは最もその恩恵を受けた。それは『パズル&ドラゴンズ』、『2048』といったヒット作の誕生が物語る通りだ。
そして、ヒット作が生まれれば、それに影響を受けたタイトルが相次ぐのが世の常。今回取り上げる『パズル ウヌムマキナ』(※または『数字パズル ウヌムマキナ』)も、先んじて内容を紹介してしまえば、『2048』風の思考型パズルゲームである。
本作はスマートフォン(Android)版のほか、「ゲームアツマール」と「PLiCy」にてブラウザ版が配信中。後者に関しては、スマートフォンとタブレットのほか、パソコン(PC)上でのプレイにも対応している。
ただ、縦長の画面構成ゆえ、お薦めはスマートフォン及びタブレットで遊ぶスタイルである。本記事を通し、これから触れられるという方は参考にしていただければと思う。(なお、PCの場合はマウス操作になる。こちらも悪くないので、お好みでどうぞ。)
数字を大きくしよう。だが、増えるのは決まって1。
プレイヤーのやることは至って単純。
ブロックに刻印された数字を大きくしていくことだ。
詳細なシステムおよびルールを解説すると、本作はスタート間もなく、縦横4×4のフィールドに数字の刻印されたブロックが配置される。このブロックはその場に完全固定され、直接動かしたり、他のブロックと位置を変えるようなことはできない。
ここから何をするのかというと、同じ数字のブロックが2個以上並ぶ所を探す。見つけたら、そこに設置されたブロックを直接タッチ(マウス操作時は左クリック)。すると、そのブロックが隣り合わせのブロックとくっ付いて、数字の加算されたブロックへと変化する。
「1」同士をくっ付ければ「2」、「2」同士をくっ付ければ「3」という感じだ。異なる数字同士をくっつけることは不可能。前述にて名を出したパズルゲーム、『2048』と同じ仕組みというと、プレイ経験のある人は想像しやすいかもしれない。
ただし、どんなに数字が大きくなろうと、沢山のブロックを並べても、くっ付けたところで加算されるのは1だけである。「2」と「2」同士で「4」にならなければ、「1」を5個以上並べても「5」にはならない。どんな条件であっても、くっつけた時に加算されるのは1だけ。
このような法則を踏まえ、大きな数字が刻印されたブロックの生成に取り組んでいく。ブロック同士をくっ付けられる場所がなくなってしまうと、その時点で詰み。ゲーム終了になる。再チャレンジすれば、また最初からやり直しだ。
そして、基本的に数字をどんなに大きくしたとしても区切りはない。そんなエンドレス型の構成にもなっていて、基本的には己の限界を突き詰めていく形だ。また、制限時間もない。プレイヤーのペースで、数字ブロック作りに集中できる設計となっている。
収録ゲームモードもこのエンドレスな本編のみとなる。タイトル後のメニュー画面には5つの項目が設けられているが、メインゲーム「UNUMU MACHINA」以外は全て補助的なもの。制限時間内にどれだけ数字を大きくできるかに挑むとか、ストーリーに沿ってパズルに取り組んでいくみたいなモードは用意されていない。
ただし、最終目標は設定されている。それはメニュー画面内の「REPORT」こと実績レポートをすべて埋めることである。
なぜ、実績を埋めることが最終目標なのか。それについては後述する。
以上の通り、パズルゲームとしては思考型寄りで、モード構成も控えめな内容。ただ、ルール全般は個性的で、自然に頭がフル回転してしまうものに仕上げられている。基本、同じ数字同士をくっ付けるだけと、やることも単純で取っつきやすさも申し分なしだ。
徐々に貯め込む習性が身に付き、(時間を)吸われる
本作の魅力。それは圧倒的な中毒性にある。
ルールとコツをつかんだら最後。止め時が分からなくなる。
仮に詰んで終了となっても、「もっと行ける!」という気持ちになって再挑戦したくなる。
そして、気付いた時には数時間が”ゴッソリ”奪われている。そんな”やめられない、とめられない”を体現するが如き中毒性と面白さに秀でているのだ。
何がそれを際立たせているのかと言えば、1しか加算されない仕組みに由来する”貯め込む”戦術だ。前述の通りブロックはどんなに数字が大きくなろうが、沢山並べようが、くっ付けたところで加算されるのはたったの1。それを聞くと、2つ並んだ時点でくっ付けるのが最適解のように思うかもしれない。だが、実際は逆。そうすると、返って詰みやすくなる。
その要因が追加されるブロックだ。紹介が前後したが、ブロックをくっ付けた時には、並んでいた他のブロックが加算された数字の刻印されたブロックへと吸収され、消滅する。同時に空きスペースが生じ、即座にフィールド外から追加のブロックが補充される。注意すべきはこの追加されるブロックに刻印された数字。1~3に限定されている。4以降の数字が刻印されたブロックは補充されないのである。
なので、まばらに2~3のブロックをくっ付けて作ったり、4以降のブロックを不規則に作ったりすれば、補充分と並びにくくなる。場所が悪ければ最悪、詰み確定となってしまうのだ。それゆえ、なるべく同じ数字のブロックを沢山並べてくっ付け、余裕のある空きスペースが生じるようにしていくことが求められる。だが、繰り返しになるが4以降のブロックは補充されない。数字を大きくすればするほど、余裕のある空きスペースを発生させるのが難しくなっていく。
そう厳しくなる中、数字が適切に並ぶには、空きスペースが多く生じるには、そしてどれぐらい貯められるかといった事柄を考えるようにもなる。そして、時間もゴリゴリ吸われる。このように加算の仕組み、補充されるブロックの制限が絶妙に機能しており、それが中毒性の高さを生み出している。そして、段々と貯め込むことこそ最適解だと認識するようになって、ますます没頭しやすくなる。
また説明が前後した仕様だが、くっ付けて誕生した数字ブロックというのは基本的にタッチ(クリック)した場所に生成される。つまり、詰みを回避するには、生成する場所が同じ数字のブロックと並ぶように意識するのが大事なのである。そこから「つまり、貯め込むのか!」と理解し、徐々にくっ付けた際の考え方にも変化が生じてくる。あとはご想像の通りである。
このような個々の要素のまとめ方と調整が見事で、独特な面白さと体験を描き出している。とりわけ貯め込む楽しさは際立っており、4以降の数字をギリギリまで生成して、一気にくっ付けた時の達成感と快感は特筆に値する。ちゃんと貯めたら、貯めたなりに膨大なスコアが返ってくるのも、それらを引き立てていると同時に、積極的に狙いにいきたくなる動機にも直結している感じだ。
何よりも基本ルールが分かりやすい。それでいて、計算も複雑ではないので頭も疲れにくい。むしろ、簡単な計算を繰り返す流れゆえ、延々とやり続けてしまう楽しさがあるぐらいだ。
そんな”脳トレ”的な見所を含んでいるのも魅力のひとつ。ルールから、単純そうだがそこまで没頭してしまうのかとの疑問も抱くかもしれないが、プレイしてみれば思い知らされる。同時に沢山のブロックをくっ付けるため、自然に貯める行為に走ってしまうだろう。
スマートフォンかタブレットで遊べば、そのハマり具合も倍増する。
冒頭でも言及したが、可能であればぜひ、そちらで遊んでみていただきたいところだ。
やたら物悲しさ漂う雰囲気の真相はストーリーにあり……?
また、本作の面白い部分のひとつにストーリーの存在がある。
ストーリーに沿って進めていくモードはないはずでは、と前述から物申したくなるかもしれないが、無いのはモードである。ストーリー自体はある。
それも「REPORT」、実績の獲得に応じて解禁されていく形式を採っている。実績をすべて埋めるのを最終目標として掲げている理由がこれ。ここに本作のストーリーがまとめられているのだ。
その内容は端的に紹介すると、パズル本編でも色々コメントをしてくる機術士(きじゅつし)の少女で「ウヌムマキナ」生みの親、「ステイニー」にまつわるものである。ステイニーの可愛らしい容姿から、作風的にはほのぼのとしたものを想像するかもしれないが、実態は意外に重い。詳細は言えないのだが、各実績に記されたテキストを見れば、この世界観に対して察するはずだ。
解禁されていくストーリーもどこか悲壮感が漂っていると同時に、終盤には驚きの展開を見せる。一体、ステイニーが辿る運命とは何なのか。全ては各実績の獲得に勤しんだ末に見届けていただきたい。色んな意味で衝撃を受けるはずだ。
また、実績のコンプリート難易度自体はそこまで高くない。一部、難しいものもあるが、プレイを重ねていけばいずれは獲得できる塩梅だ。
逆を言えば、やり込み派のプレイヤーには物足りなさを感じやすい。容易に達成できない目標に挑み、それを獲得して優越感に浸るみたいなことは楽しめないので注意いただきたい。せめて、一部極端に難しいものがあっても……との思いも出るかもしれないが、ストーリーの存在を思えば、調整的には妥当。これ以上、高くすると追いかけたいプレイヤーにとってのストレス要因にもなりかねなかっただけに、良い判断だった……と、筆者的には思うところだ。
なお、「ゲームアツマール」のブラウザ版に限ってはオンラインランキング機能があり、高みを目指す遊びが楽しめる。上位へのランクインを目指して遊びこもうとすれば、何十時間も行けてしまうだろう。ただ、他のプラットフォームを思うと、やはりあとひとつモードがあっても、と感じる面もある。特に制限時間内にどこまで数字を大きくできるかに挑むタイムアタックは、あっても良かったのではと思う次第だ。
あとは遊び始めればゴッソリ時間を吸われるのはある意味では難点、と言えるかもしれない。幸い1プレイあたりに要する時間は短いので、”意志さえ強ければ”制御可能だが。意志さえ強ければ。
そんな気になる箇所もあるが、中毒性の高さは折り紙付き。1度深みにハマれば数字を足し続け、貯め込み続ける沼へと誘う圧倒的訴求力を持つ。単純にパズルゲームとしてもルールの分かりやすさとありそうでなかった面白さ、細かい調整の上手さなど、光る部分も沢山ある。このような己の限界を極めるタイプのパズルが好きな人なら、ぜひ遊んでみていただきたい1本である。可愛いキャラクターに惹かれて遊んでみるもよし。そして、その裏に隠されたストーリーの意外な重さに面食らうもよし。とにかく見所たっぷりの良作だ。
[基本情報]
タイトル:『パズル ウヌムマキナ』
作者:Ruたん
クリア時間:10分(1プレイ当たり)
対応プラットフォーム:Android、ブラウザ
価格:無料
◇ダウンロードはこちら(Android版)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.toripota.unummachina
◇プレイはこちら(ブラウザ版)
・ゲームアツマール
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm26015