王道と革新の異なるSTGが楽しめる、一粒で二度美味しい魅力が詰まった『VRITRA Complete Edition』
神々により施されたはずの封印が破られた。
それと共に姿を現した、天地を覆う悪意と恐れられる邪竜「ヴリトラ」。
ヴリトラ復活により、世界は邪悪なる生物と絶望に覆われ、朽ち果てようとしている。
宿敵の気配を感じた英雄神「インドラ」は宝具「ヴァジュラ」を抱え、下界へ向かう。
古より幾度となく繰り返された、神々の戦いの幕がここに開く。
『VRITRA Complete Edition』は、神奈川県横浜市に拠点を構え、小規模デベロッパーとしての一面も持つ株式会社ネオトロが制作したWindows PC向けシューティングゲーム。2018年8月31日にPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」にて配信された。
元はスマートフォン向けアプリとして配信されたシューティングゲーム『VRITRA』と『MUGEN VRITRA』の二作で、それらを一つにまとめた作品でもある。ただ一つにしただけでなく、ステージとヴァジュラ(オプション)の追加のほか、グラフィックの高解像度化も実施されており、まさに「Complete Edition」の名に相応しい豪華仕様となっている。
王道のシューティングゲームを徹底追及した『VRITRA』
内容はドラゴンこと「インドラ」を操作し、迫り来る敵を撃ち落としていく横スクロールのシューティングゲームだが、システム周りは『VRITRA』、『MUGEN VRITRA』それぞれで異なる。
まず『VRITRA』から紹介すると、こちらは正統派のステージクリア型。連射可能な「ショット」、その補助を行う「ヴァジュラ」ことオプション、専用のゲージを消費して発射する「ブースト」の全三種類の攻撃を駆使して、全5ステージの攻略に挑む。
各ステージの流れもステージ最後に待ち構えるボスの撃破を目指すという王道のもの。シューティング熟練者は勿論のこと、初心者でも直感的に馴染める設計だ。
また、これは後述の『MUGEN VRITRA』とも共通するが、本作ではダメージ制を採用していて、最大で三回までの被弾が許される。それ以上受けてしまうとミスとなり、残機が減って、やられたその場から復活する仕組みとなっている。
更にダメージを回復する手段は用意されていない。唯一、回復するのはステージをクリアして次のステージが始まった後か、ミスから復帰した後。ダメージ制という事で、ある程度の回避スキルが無くても遊べそうな印象を持つかもしれないが、実際は三回まで許されるなりに敵の攻撃は激しい。常に緊張感のある戦闘が繰り広げられることを重視したバランス調整が図られている。
そんな分かりやすいシステム、手応えのあるゲームバランスが象徴する通り、往年のシューティングゲームの面白さが詰まった作りが魅力。直感的且つ簡単に楽しめながらも、クリアするには敵弾の回避と攻撃の使い分けが試される、「避けて撃つ」というジャンルの醍醐味をしっかり押さえた作り込みが光る内容に完成されている。
特に長すぎず短すぎずのボリュームで、敵、仕掛けの配置も適切、緩急もしっかりと付けたステージ構成にはその魅力が沢山詰まっている。ショット一撃で倒せる敵の集団を一網打尽にとする爽快感をプレイヤーに体験させつつ、一定のタイミングで簡単に倒せない強敵を出現させ、戦術の切り替えを試す。この一連の流れが5ステージ全てで徹底されていて、気持ちよくも確かな歯応えがあり、印象にも残る戦闘を堪能できる。
宝具「ヴァジュラ」ことオプション、「ブースト」を駆使した立ち回りにも独特の戦術性がある。中でも「ヴァジュラ」は本作、通常攻撃であるショットを強化する手段が用意されていないので、どのヴァジュラを獲得するか否かでその後の難易度に変化が出る。後半のステージはそれが顕著で、プレイヤー自身の判断いかんで変化する展開というものを思い知らされるだろう。
「ブースト」もここぞというタイミングでの使用が求められるだけでなく、これで敵を倒さないとスコア倍率が上がらないという独自の仕様があるので、より高いスコアを目指す際には積極的な活用が求められる。更に専用ゲージを回復させる手段も独特で、通常攻撃のショットを撃ち続けなければならない。なので、タイミングによっては倍率を上げるチャンスをショット攻撃で潰してしまうことも起こり得るため、地味に難しい見極めが求められてくる。
他に「ヴァジュラ」も八種類あるが、攻略中に獲得できるのは四つに絞り込まれる。どの四つを出現させるかはゲームスタート時に決めることになるので、全ての効果を確認するとなれば二周は必須。更に難易度も四種類あり、最高難易度でなければ出現しないボスも存在するので、極めるとなれば、腰を据えて挑む必要がある。
シューティングとしては特段、異彩を放つシステムは無いものの、その分、王道の面白さとやり応えを突き詰めるコンセプトで全体がまとめられていて、初心者から熟練者まで幅広く楽しめる設計。全5ステージ構成なので周回プレイもしやすいほか、コンティニュー制限もなく、簡単な「ノーマル」であれば、ゲームオーバーからリトライする度に残機が増えていくので、根気さえあれば力押しによる攻略も通用する余地が設けられている。
まさに現代に蘇りし、王道シューティングとも言うべき作り。入り組んだ要素のない、素直なシューティングゲームを楽しみたいというプレイヤーには打ってつけの内容で、往年のシューティング好きほど心に刺さる仕上がりだ。
単一装備で限界に挑む、革新系の『MUGEN VRITRA』
対照的に『MUGEN VRITRA』は個性的な作りをしている。どんな内容か、簡潔に言うとエンドレス型。残機無し、単一の装備でどこまで生き延びることができるかを競う、自らの限界に挑むチャレンジモード的な作りとなっている。
単一の装備の通り、こちらでは「ヴァジュラ」が固定される。ゲームスタート時に全八つのヴァジュラの中から一つを選び、その装備だけで敵やボスの群れと延々と戦い続けることになるのだ。
それを考慮してか、本編では「ブースト」のゲージを満タンまで回復させるだけでなく、周囲の敵を全滅させる専用のアイテムも登場し、要所ごとでプレイヤーをサポート。制約とは裏腹に、積極的に攻撃を仕掛けていけるようになっている。
ただし、登場する敵と攻撃の密度は一団を退ける度にレベルアップし、後半辺りまでくると、出現する順番や攻撃の早さを見極めて迅速に対処しなければ、一瞬の内に撃ち落とされかねないほど苛烈に。そうなると、先の敵を全滅させるアイテムを意図的に画面内に残し、厳しい場面が訪れた瞬間を狙って獲得する、その場しのぎ兼溜める戦術も試されてくる。
基本、やり込み重視の内容なので、シューティングに慣れた人を対象とした設計だが、それ相応に極め甲斐のある作り。特にレベルがノーマル以上に到達して以降の苛烈さは緊張感抜群だ。そして、いざ限界を目指そうとなれば、本編に集中するあまり、加速的に時間が溶ける。気が付けば1時間近くが経過していた、なんてことも普通に起こり得るので、中毒性も抜群だ。
何より、ちゃんと独自のモードとして作られているのが凄い。このようなエンドレス型となると、敵やステージの地形などはメインの『VRITRA』側のものを流用し、構築しているものと思いがちだが、敵はそうである反面、ステージは本モード専用の舞台で、音楽を始めとする演出も独自のものにしているという、こだわりの作り込みが成されている。更に挑戦中にはボスも登場するのだが、その中にはこのモード限定の個体も存在。それだけでも、本作の全てをやり込もうとしているプレイヤーなら挑まざるを得ないモードであるのは言うまでもないだろう。
プレイ記録はオンラインランキングにも登録されるので、他のプレイヤーと争うことも可能。そんな熟練者へのサポートも手厚く実施されているほか、敵の出現パターンはプレイする度に変化するので、繰り返し何度でも楽しむことができる。
プレイするには一度、任意の難易度で『VRITRA』側をクリアしなければならないが、解禁するだけの価値、そして遊ぶ意義は申し分ないほど詰まった内容。「一本で二本のシューティングゲームを楽しめる」を体現した仕上がりで、単独の作品としても耐え得るやり応えと密度があるので、要チェックだ。
一本で二つのシューティングゲームを満喫しよう!
ここまでシステム、二種類のモードの魅力に焦点を当てて紹介してきたが、グラフィックも素晴らしい出来だ。ファンタジーとSFを絡めた独自の世界観を構築しており、幻想的なロケーションが多数登場する。敵もモンスターからメカまで、バリエーションに富んでいるほか、渋み溢れるデザインが異彩を放つ。音楽も世界観にマッチしたオーケストラ調の荘厳な雰囲気に富んだ楽曲が揃っていて、各ステージで繰り広げられる戦闘を大いに盛り上げてくれる。中でもメインテーマはとても印象的で、ここぞというタイミングでアレンジ曲が流れる、空気を読み切った使い方をしているのが見事だ。
最も簡単な「ノーマル」でも結構手応えのある調整で、随所にて複数の敵が複合攻撃を仕掛けてくる場面があったり、ボスの攻撃に初見での対処が困難を極めるものがあるなど、手軽に遊べる反面、シューティング初心者には厳しく感じてしまう部分は多い。先の通り、回復アイテムが無い、ノーマルに限ってゲームオーバーにならないと残機を上げられない(他の難易度では特定のスコア達成の度に上がる)、リトライ後はステージの最初からになるなど、そこまで厳しくしなくてもと感じてしまう部分もある。
しかしながら、全体の完成度は申し分なく、至れり尽くせりの内容にまとめられている。道中には、シューティングに精通した人にしか分からない小ネタも散りばめられていたりと、制作者のジャンルに対する愛もたんまり込められている本作。弾幕系ではない、正統派のシューティングゲームをお求めのプレイヤーなら要プレイの傑作だ。全八種類の「ヴァジュラ」を駆使して、邪竜ヴリトラ打倒に挑もう。そして、『MUGEN VRITRA』でシューティングの深淵を覗いてみよう。
11/4に秋葉原にて開催のデジゲー博にて、VRITRAのキャラバンモードを展示します。本編ともMUGENとも違うゲーム性で、全部で6つのボーナスもあります。ぜひ遊びに来てください!#インディーSTGキャラバン#デジゲー博#VRITRA#STGpic.twitter.com/AmBAgv9HUj
— h.sawatari@デジゲー博F-05ab (@saddy575) 2018年10月29日
また、今後実施される無料アップデートで「キャラバンモード」の追加が告知されており、先日の「デジゲー博2018」にもプレイアブル出展されていた。こちらも独自のシステムを持ったモードに仕上がっているとのことなので、要チェックだ。
[基本情報]
タイトル: 『VRITRA Complete Edition』
制作者:株式会社ネオトロ
クリア時間: 40分~1時間(※やり込み要素は除く)
難易度:中~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: ¥1480
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※PC(Windows)版