第16回ウディコンで発見!独自のシステムや演出が光る“RPG好きにプレイしてほしいフリゲ”4選

RPG,特集

毎年7月から8月にかけて開催されている、ゲーム制作ツール「WOLF RPGエディター」製フリーゲームのコンテスト「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」。第16回目を迎えた今年は、昨年を上回る70本以上もの力作が集まった。

筆者はここ数年、ウディコン作品の中でもRPGにフォーカスした特集記事をもぐらゲームスに寄稿しているが、今年は独自のシステムによる戦闘が楽しめるRPGを2作品と、RPG的な要素を活かした演出などが光る2作品をご紹介する。後者については公称ジャンルがRPGではなかったり、そもそもジャンル分類が難しかったりするのだが、“RPG好きにプレイしてほしいゲーム”として、今年はこの2+2作品でのピックアップとさせていただきたい。

あくまで広大なウディコンの世界の一側面を筆者の視点で切り取った形となるが、ウディコン作品を楽しむとっかかりの一つとして参考になれば幸いだ。

昨年の記事:第15回ウディコンで発見!独自システムが光るフリゲRPG3選

デスペレートホープ

メイド服に身を包み多用途サービス業「デスペレートホープ」を営む女性シュテーと、その助手である少女の姿をした機会人形フォルが、とある依頼をきっかけとして陰謀に巻き込まれていくという作品。戦闘やキャラクター強化等のイベントを繰り返しながらステージをクリアしていく、ノンフィールドRPGとなっている。

特徴はなんといっても、敵味方で共有のマスを陣取りゲームのように取り合い、その結果によってお互いに発動するスキルが決まるという、非常に独特な戦闘システム。同作者の前作『未来よ心のままに』からコンセプトを引き継ぎつつ、ブラッシュアップが図られている印象だ。

インターフェースも前作より洗練されたこともあり、実際に触ってみればそこまで複雑ではないのだが、言葉で説明しようとするとどうしてもややこしくなってしまうのが悩ましいところ。本記事ではできる限り面白さの要点にフォーカスした解説を試みるので、以下に掲載の画像も参考にしつつ、雰囲気だけでも感じていただければ幸いだ。

敵味方でマスを取り合うことで互いに発動するスキルが決まる、非常にユニークな戦闘システム

本作の戦闘における敵味方の駆け引きの舞台となるのは、画面の中央にある四角いマスだ。4つで1組のマスが上下に2セット並んでおり、フォル、シュテー、敵の順番で、「SP」を消費して上下のマスをそれぞれの色で埋めていく。そしてマスが4つ全部埋まると、埋めた数に応じたスキルが発動するという仕組みだ。フォルとシュテーが使えるスキルは共通となっている。

たとえば上に掲載した画像は、シュテーが上側の4マス目を埋めたので、スキルが順次発動しているところだ。最後にマスを埋めたキャラクターのスキルから発動する仕組みで、まずはシュテー(緑)が1マス埋めた際に発動できる「ブラスター」が発動。その後は敵(青)とフォル(赤)のスキルが発動する。フォルは2マスを埋めているので、発動するスキルは「ディスペルビーム」だ。

敵が何マス埋めたときにどういったスキルを使うかは明示されているので、自分達が使いたいスキルを使えるようにするのと同時に、あらかじめマスを埋めておくことで敵に使われたくないスキルを妨害、あるいは逆に敢えてマスを埋めず空きを作ることで使わせたいスキルへ誘導といった駆け引きが発生するわけだ。

加えて、状態異常の扱いもこのシステムならではのものとなっている。一部のスキルはHP減少などの状態異常効果を持つが、これは普通のゲームのように「発動時に敵に与える」のではなく、「マスに効果を付与する」ものとなっている。例えるなら陣地にトラップを仕掛けるようなイメージだ。

これを敵を踏めば実際に効果が発動となるわけだが、マスへの効果なので自分が踏んでも発動してしまう。マスが上下2セットあることも利用して、なるべく敵だけが踏むような立ち回りなどが戦術要素となっている。逆に敵が使ってきた状態異常を逆手に取って敵に踏ませる、といったプレイができるのも本作ならではの駆け引きだ。

状態異常はトラップのようにマスに仕掛ける仕組み。自分が踏んでも効果が発動するという諸刃の剣でもある

そのほか戦闘中に溜まるゲージがフルになると発動可能な大技もあり、同時に利用できるスキルの数は計5つ。敵味方ともに、使うスキルはすべて常時、戦闘画面上に表示されている。基本システムが独自要素の塊な分、シンプルにまとめられる所はまとめて取っつきやすさを確保している印象だ。

スキルは敵を倒したときなどにランダムに2つ提示されるものから1つを選び入れ替えていくという、デッキ構築的な要素もある。今回紹介しきれなかった戦術要素もあり、スキルの組み合わせで戦略を立てていくのも醍醐味だ。1プレイは比較的短めで難易度が3つあり、プレイ内容に応じたポイントのオンラインランキングも実装されているなど、繰り返し遊べる作品に仕上がっている。一風変わった戦闘システムを体験してみたい方に、非常に強くオススメしたいRPGだ。

メイド姿ながら武闘派?な所長と、機械人形でありつつ感情豊かなフォルの掛け合いで進みつつ、シリアスさを増していくシナリオも見どころ。一方で周回プレイ向けに、ストーリーをカットすることもできる

[基本情報]
タイトル:デスペレートホープ
制作者:ケイ素
公称プレイ時間:45分程度
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://silversecond.com/WolfRPGEditor/Contest/result16.shtml#6

「■」の多いダンジョン

使用するスキルとその順番をパターンとして登録し、同様に使用スキルがパターン化された敵と1vs1で戦うRPG。戦闘が開始したら毎ターン、敵味方がお互いにパターン通り一手ずつ行動するのをひたすら眺める形となる。ランダムエンカウントの雑魚戦などはなく、フィールド上に固定で存在する敵と戦いながら進む短編作品となっている。

枠にスキルをセットして行動パターンを構築。敵側の枠にカーソルを移動すれば敵の行動内容も確認できる

敵側のスキル設定から実際の行動時に何が起きるかを読み解き、対策を組んでいくというパズルチックなプレイ感が特徴。HPや攻撃力といった戦闘に関わる数値はほとんどの場合1桁と小さくまとまっているためパターンを組む際の計算がしやすく、また負けてもスキル設定から即座にやり直せるので試行錯誤も手軽に行える。

新たなスキルを使う敵を倒すとそのスキルを習得し、できることが増えていくというサイクルが面白い。ゲーム開始時は3つだったスキルのセット枠も徐々に増えていき、複雑なパターンを組めるようになっていくのもバトルの醍醐味だ。

物語の面では、タイトルの通り「■」ばかりで読み取れなかったゲーム内のメッセージが、“辞書”を入手することで徐々に把握できるようになっていき状況が明らかになっていくのもポイント。白黒基調の画面作りや、ピアノを中心としたときに軽妙で、ときにしっとりと聴かせるオリジナルのBGMも合わさって、どこか透明感のある作品世界を演出しているのも見どころだ。

ゲーム開始直後はほぼ読み取り不可能だったメッセージが、徐々読めるようになることで物語の真相に迫っていく

[基本情報]
タイトル:「■」の多いダンジョン
制作者:遊句
公称プレイ時間:30分程度
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://yougou.sonnabakana.com/others/sikakuDungeon/sikakuDungeon.html

アンブレラブレイバー

遊び場にしていた廃墟の洋館で友達に置いて行かれた主人公の少年「日笠コウ」が、不思議な雰囲気のお姉さん「東雲アメリ」に導かれ、洋館の出口へ向かうところから物語が始まる作品。公称ジャンルはアドベンチャーだが、立ち塞がる「おばけ」を、HPに相当する「勇気」が尽きないようにしつつ剣に見立てた傘で追い払うノンフィールドRPG的なシステムも備わっている。

使ったコマンドが強化されるといった戦術的な要素もあるが、敵の行動パターンが画面左上に表示されることもあり、難易度自体は比較的ゆるめ。少年コウが「立ち向かうべきもの」を表現する演出の一環として戦闘があるようなイメージだ。

半歩前を行きながら少年の手を引いてくれるお姉さん、というようなビジュアルもなかなかぐっと来るものがある

本作の物語はマルチエンディング。とくにアメリがなぜこの洋館にいるのかといった真相に迫るルートのクライマックスでは、このシステムならではの形で胸が熱くなるシーンが描かれる。システムと物語が一体となり、戦闘を通してキャラクターの想いを感じられる展開にはRPG好きとしてテンションが上がった。

コウを導くお姉さんでありつつ、お茶目な一面を見せたり、逆にときどき影も垣間見えたりするアメリも気になるキャラクターで、物語を進めるフックになっている。オリジナルのピアノ曲によるBGMも見どころで、とくに戦闘曲はそれぞれのシチュエーションや心情に沿った曲調やメロディで戦闘を盛り上げてくれる。ボリュームとしては短編だが、物語も演出も密度濃く楽しめる作品だ。

不思議な雰囲気のお姉さんと一時の冒険、そして……

[基本情報]
タイトル:アンブレラブレイバー
制作者:(影)苅田町役所
公称プレイ時間:30分~1時間
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://missingday9.wixsite.com/umbrella

魔王復活物語

本作についてはなるべく事前情報が少ない状態でプレイしてほしいという想いがあり、いくつかスクリーンショットを掲載することで、作品紹介に代えさせていただく。そういった狙いならば本来はスクリーンショットも控えるべきかもしれないが、すでに公開からある程度の期間が過ぎたこともあり、ネタバレ防止よりもまだプレイしていない人に興味を持ってもらうのを優先ということで、ご容赦いただければ幸いだ。また、スクリーンショットの下には核心的なネタバレは避けつつ、個人的な評価も記載した。

この記事で紹介するゲームは本作が最後となる。基本情報とダウンロードリンクの下にスクリーンショットを筆者基準でネタバレ度が低い順に載せるため、ネタバレを避けたい人は適当な所で引き返してほしい。

[基本情報]
タイトル:魔王復活物語
制作者:かげろう
公称プレイ時間:5分あるいは3~4時間
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
http://cgpoldpersonteam.blog.fc2.com/blog-entry-239.html

謎解きゲームとして本作をみたとき、筆者がとくに好ましく感じたのは「フェアである」という点だ。具体的には本作の根幹部分を担う某ギミックにおいて、ゲームの裏側から手を回すようなフラグ操作を行わず、あくまで通常のゲームプレイの範疇でギミックを成立させているのが面白いと感じた。

軽妙なテキストによって、リアリティをもって描かれるキャラクター達も魅力的。「あるあるネタ」も交えてプレイヤーの共感を呼びつつ、ゲームを作ることや遊ぶことに思い入れのある層(ウディコンに集う人々はまさにこれであろう)にとくに刺さるようなシナリオには、ときに笑い、ときにほろりとさせられた。謎解きも物語も、高いセンスでまとめ上げられた佳作と言えるだろう。

  • 中村友次郎(@finalbeta

    RPGのプレイと紹介がライフワーク。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。商業で一番好きなゲームメーカーは日本ファルコム。運営型では原神にハマってます。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。