クリスマスです。黙示録TPS『Xmas Apocalypse』でサンタになって、ゾンビと怪物どもをメリー狩りまくりマス!
クリスマスの季節である。
クリスマスと言えば、サンタクロースである。
サンタクロースと言えば、トナカイである。
サンタクロースとトナカイと言えば、空を飛ぶその姿である。
そんな空を飛んでいたサンタクロースとトナカイが墜落してしまった。しかも、墜落したのはゾンビと邪悪な魔物たちがあふれ返る、地獄のような雪原である。
かくして、サンタクロースは銃火器を片手に彼らを迎え撃つ。
果たして、クリスマスまで生き残れるのか。
それともクリスマスは永遠に終了か。
そのような紛うことなき”一世一代の大勝負”にサンタクロースとなって挑む衝撃作。
それがこれより紹介する『Xmas Apocalypse』である。
10分間生き残れ!ローグライク要素を持つサバイバル系TPS
『Xmas Apocalypse』は、12月16日より「Steam」、「itch.io」にて販売中のWindows PC用タイトルだ。本稿執筆現在、Steamでは記念セールを開催中で、2023年1月6日午前2時頃までは40%の割引価格で購入できる。「Merry christmas and happy new year」とも言うだけに、クリスマスが過ぎ去った後でも全然大丈夫だ。
元の価格も税込580円とお手頃なので、セールが終わった後でも大丈夫だぞ。
ジャンルとしてはサバイバル系のサードパーソンシューター(TPS)。主人公のサンタクロースを操作し、ゾンビを始めとする敵がわき続ける3Dの箱庭空間内を動き回りつつ、彼らを銃火器で迎え撃っていくという内容だ。
最終的に10分間生き延びることができればクリア。逆にサンタクロースの体力(ハート)が尽きるとゲームオーバーになる。どちらの場合も再び最初からやり直しだ。そして、やり直すとゾンビの出現パターン、フィールド上の仕掛けが若干ながら変化。以前とは違った展開が繰り広げられるようになる。そんな”ローグライク”な要素も備わった作りとなっている。
システム面にもその手の要素は多い。ひとつにレベルアップ。ゾンビたちは倒すと同時に緑色のジェム、その名も「カオスエメラルド」を落とす。「……ん?」となったそこのアナタ、気にしちゃいけない!これを獲得すると、画面上部に表示された経験値(XP)のゲージが上昇。満タンに達すればレベルアップする。
レベルが上がるとゲームがいったん止まり、3つの「スキル」が表示。このどれかひとつを選ぶことで、サンタクロースや手持ちの武器の性能が強化され、有利に立ち回れるようになっていく。
なお、スキルは画面右側に表示されるスロットの分しかセットできない制約がある。そして、選べるスキルの種類を増やしたい場合はゲームスタート前のメニュー画面から「Power-up」を選択。
そこにそびえ立つ、その名も「クリスマススキルツリー」を成長させていけばいい。成長の方法は単純で、ゲーム終了時に得られた「お金」を支払って、ツリーの至る所にある強化項目を解禁していくだけだ。”スキルツリー”ですからね。見た目がクリスマスなだけです。
「クリスマススキルツリー」での強化は、以降のゲームプレイにも反映。そのため、挑戦と敗北を重ねるたびにサンタクロースは強くなり、より豪快かつ過激な立ち回りを演じられるようになっていくのだ。
システム自体は、2022年にかけて人気を博した某サバイバーのオマージュではある。ただ、本作はTPSということで、正確に狙いを定めて敵を撃つテクニックが要求され、時に混戦を極力避ける判断も試される場面が適時発生。
それらの特徴から、似ているようで異なる手触りを持つ作品に仕上げられている。
しかし、本作の魅力は大体お察しの通り、設定全般(および遊びの根幹)にある。サンタクロースになって、ゾンビたちの襲撃から生き延びるという”それ”である。
設定の時点で勝利も同然のハチャメチャさとゲームとしての堅実さ
そもそも、サンタクロースが主人公のTPSという時点でインパクト突き抜けまくりである。
なので、銃を構えた際(射撃する際)にはサンタクロース当人がズームアップ。TPSではお馴染みの構図ながら、そこにいるのがサンタクロースというだけで珍妙極まりない。
アクション周りもまた然り。基本の移動、銃火器の構えおよび射撃に加え、「ローリング」も繰り出せるようになっている。TPSではお馴染みの高速移動兼緊急回避用のアクションである。対応するボタン(キー)を押すと間もなく、”ぐるり”と前転してくれる。
しかも、これといって発動に時間を要するような制約もない。体格の大きさとは裏腹に、瞬時に繰り出せる。連続発動も容易で、スピーディかつスタイリッシュに動いてくれる。
これを笑わず直視できるだろうか。アクションそのものは全く斬新なものではない。しかし、サンタクロースがやるだけで珍妙さとシュールさが限界突破。色んな意味で強烈すぎる光景が繰り広げられるのである。
極めつけ、フィールド上に現れる「プレゼントBOX」から「スーパースター」(……んん?)なるアイテムを回収すれば、一定時間、高速で前転し続ける大技も繰り出す。おまけに攻撃判定付きである。ムチャクチャがすぎる。「カオスエメラルド」と言い、お前はどこぞの青いハリネズミか!ちなみに青いハリネズミが広大な大地を駆ける最新作は、現行のゲーム機およびPC(Steam)にて絶賛発売中!……って、何の話だ!
そんなこんなで、もう設定だけで勝利しているも同然な有様である。さらにもうひとつ、本作には笑いを誘う要素があるのだが、それに関しては実際にゲーム本編を遊んで確かめていただきたく思う。その際のアドバイスはただひとつだ。
オプション(コンフィグ)でボイスの音量を100%にしよう!
ついでに、ヘッドフォンを装着しよう!これ以上は何も言わぬ。
ネタが先行してしまうが、ローグライク要素を持つサバイバル系TPSとしての面白さも堅実だ。特にスキルの選択次第で異なる立ち回りが生まれるというのが、毎回のプレイに微かな刺激を加えてくれる。
スキルの数は沢山あれど、セットできるのはスロットの分のみという制約も、立ち回りの変化を演出すると同時に、最適な組み合わせ(ビルド)を考えては作り出す戦略的な面白さがある。スキルツリー……もとい。クリスマススキルツリーを成長させるほど選べるスキルの種類も増え、ユニークな攻撃などが可能になっていくので、それを検証したいがために周回を繰り返してしまうこと請け合いだ。無論、そうなれば時間は溶けに溶ける(力説)。
クリスマススキルツリーの成長はプレイヤー自身のステータスも強化。数発撃ち込まないと倒せなかったゾンビも一撃で倒せるようになったりと、成長が分かりやすく現れるので、ついつい強化に没頭してしまうはずだ。無論、それと共に時間は溶ける(力説)。
10分間生き延びることを目指す基本の流れも、仕組みとは裏腹に単調さはない。某サバイバーのオマージュらしく、時間経過と共にフィールド上で様々な変化が起きる。新種の敵が現れたり、行動制限が狭まったり……など、特殊な状況が生み出されてはプレイヤーにそれに応じた立ち回りを求めてくる。それなりに長い時間生き延びれば、ボスだって登場。ゾンビたちを遥かに上回る耐久力、多彩な攻撃手段を持つので、闇雲に力で押そうとすれば返り討ちに遭うのはお察しの通りである。
単にゾンビたちを倒しつつ、生き延びるだけとはいえ、その一筋縄ではいかぬ構成には身構えてしまうこと請け合い。クリスマススキルツリーの成長、それに伴う生存時間を引き延ばす最適な組み合わせの発見など、色々な手を尽くして記録の更新に挑んでみていただきたいところだ。改めてネタに終わらない魅力に気付かされるはず。
無論、そうなれば時間は延々と溶けては溶ける。(力説)
とても大事なことなので、3回繰り返させていただいた次第だ。
だが、時間が溶けやすいからこそ、クリスマスなんて早いところ過ぎ去って欲しいと願って止まない人に本作は打ってつけも打ってつけと言えるだろう。
どうです?これで時間を溶かしてみません?
今後のアップデートにも期待が高まる、珍妙奇天烈にして衝撃の一作
1周やり切るボリュームはゲーム終了の時間通り10分(スキル選択による中断を含めて考えると長くて20分)。ステージも1種類しかないため、一区切りまではかなり短い。
しかし、クリスマススキルツリーを始め、各要素の解禁を目指すなら、それ以上の時間を要することになるだろう。
また、本作でプレイヤーが操作できるのはサンタクロースに限らない。
第2のプレイヤーキャラクターとして、トナカイも用意されている。しかも、二足歩行で移動し、銃火器を構えては扱うという、高度に訓練された”普通の”トナカイである。
なに?「お前、トナカイじゃなくてシカでは?」
えっと、シカって誰のことでしょう……。
ちなみにトナカイはサンタクロースよりスキル用スロットが多い反面、最大体力が低いという特徴を持つ。難易度は高くなるが、セット可能なスキルが多い分、戦術面はサンタクロース以上に派手になる。もし、ゾンビたちを気の済むまで豪快に狩りたい思いがあればお試しを。くれぐれも己が狩られぬように。
なお、ゲーム開始時点ではトナカイは使えないのでご注意。
(※一定の条件を達成する必要がある)
色々な所が”お腹いっぱい”な本作だが、荒削りな部分も多い。例として挙げれば、操作はキーボード主体でゲームパッドへのサポートなし(※ただ、Steamのシステムを活用することで利用自体は可能)、ゾンビが無敵化したり、パワーアップアイテム(前述の高速前転)の効果が次回以降も維持されるといったバグ、木を背後にした際にカメラがプレイヤーキャラクターの背中に寄り、急激に視界が悪くなる……といったものだ。
出現するゾンビの数が増えると、背後から急襲(不意打ち)されやすくなるのもストレスを感じやすい。ダメージを受けた際の演出がやや地味(エフェクトが出ない仕様)なのも、若干ながら分かりにくさを助長している。一部、演出的に派手な部分もあるのだが……。
ただ、本作は今後もアップデートを続けていくことが宣言されていて、既に幾つかのバグ修正が実施されている。また、新しいスキル、キャラクターの追加も予定されているので、ボリューム面でもさらなる充実化が見込めそうな感じだ。
題材的にクリスマス狙い撃ちなものの、それを抜きにしたローグライク要素のあるTPSとしてもなかなか遊べる仕上がりになっている本作。題材の珍妙さに惹かれた人もそうでもない人もお試しいただきたい1本だ。
思う存分にクリスマスという名の黙示録を堪能しよう。
そんな訳で、メリー狩りまくりマスのジングルHell!
[基本情報]
タイトル:『Xmas Apocalypse』
作者:gypynkt
クリア時間:10~20分(※1周)
対応プラットフォーム:Windows
価格:¥580(Steam)、$2.99(itch.io)
備考:日本語未対応
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