今度は横浜で発掘!横浜ゲームダンジョンで見つけた注目インディーゲーム10選

イベントレポート

2022年8月7日に初開催され、以後年2回のペースで開催されているインディゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」(関連記事)。その姉妹イベントとして新たに「横浜ゲームダンジョン」が2023年8月27日、新横浜の学校法人岩崎学園横浜デジタルアーツ専門学校を会場として開催された。当日は校内の体育館と学生ロビーが開放され、のべ114組が展示を行っていた。

東京ゲームダンジョンと横浜デジタルアーツ専門学校とのコラボレーションの経緯としては、東京ゲームダンジョン代表の岩崎氏が主催するゲーム開発勉強会にデジタルアーツ校の教諭が参加した事がきっかけとなっている。展示会が学生たちの刺激になってほしいという想いがあったとのことで、会場内の協賛ブースでは岩崎学園の系列の専門学校の学生による作品展示に触れる事ができた。また、協賛団体のひとつであるゲームクリエイターズギルドによる企画「全国7都市集結!学生ゲーム展示会」をはじめとして他校からの出展も数多くあり、会場では学生とみられる若い層がよく見受けられた。

本記事では取材陣が気になった作品を10点紹介するので、気になった作品があればチェックしてみてほしい。

はっさん堂『はっさんど』

日本工学院専門学校蒲田校のチームはっさん堂による『はっさんど』は、宇宙空間を舞台に60秒の制限時間内でダッシュと体当たりを駆使して星を破壊して得点を稼いでいく、スコアアタック形式のアクションゲーム。

自機を操作して通常攻撃である体当たりを使って赤い星を破壊するとゲージが溜まっていき、ゲージが最大まで溜まることで特殊攻撃が使用可能となる。特殊攻撃の使用時に張られる緑色のロープで橙色の破片や紫色のお邪魔キャラを巻き込むことでさらなるスコアアップを狙うことができるため、いかに効率よくゲージを溜めて特殊攻撃を繰り出せるかが鍵となる。

特殊攻撃とダッシュを併用する事で生まれる捻りこむようなスイング軌道がとても爽快で格好良く決めたくなるが、限られた時間内ではうまく使いこなすことができなかった。通常攻撃の範囲は扇状に広がるため距離をとった方が当てやすいといった細かいテクニックもあり、コツを掴むまで何度でもやり込みたくなる作品となっていた。
(真野 崇)

テラ『鼻細胞』

見渡す限りの犬の鼻、鼻、鼻。テラ氏とアルハ氏が展示していた『鼻細胞』は犬の鼻を細胞のごとく培養して敵となる偽の鼻にぶつけていくというマウスアクションゲームで、一目見た際の奇抜さという点では会場内でも傑出していたと言ってよいだろう。

本作ではフィールド内で暴れまわる偽鼻に対して鼻をぶつけて体力を減らしきれば勝利となる。特徴的なのが操作方法で、マウスをドラッグして緑線を引き、そこから更に動かす事で、始点を軸に引いた緑線を回して鼻をかき寄せるように動かすことができる。この”かき寄せ”が他に類を見ない新鮮な操作感覚となっていた。

鼻を敵にぶつけるにあたって元手となる鼻を培養する必要が出てくるのだが、濃い色と薄い色の2種類の鼻を混ぜることで培養速度が上がったり、敵からの攻撃で鼻を壊されないように安全な位置で鼻を培養しておくなどリアルタイムストラテジー的な要素もあり、見た目の裏にあるユニークな操作性と戦略性が侮れなかった作品だ。
(真野 崇)

体調大事に『SOMEN』

夏の風物詩というとスイカや風鈴など様々なものがあるが、体調大事に氏による『SOMEN』はそのタイトルの通り流しそうめんとなりコースを滑走する涼し気な3Dアクションレースゲーム。

竹筒を割ったコースの端からはタイミングよくボタンを押すことでジャンプを行うことができ、ジャンプからはひねりを加えながら着地することで麺のコシを強くすることができる。コースにはカーブや分岐もあるため、コシを強くすることに夢中になりすぎるとコースアウトの危険も伴う。強くしたコシは完走時の得点として換算される。

普段は水流に従って流れるだけのそうめんが大ジャンプするビジュアルはインパクト抜群。プレイした感触はさながら流しそうめんのコースの竹をスノーボードのハーフパイプに見立てたような作品だったが、制作にあたっては実際にスノーボードのゲームを参考にしながら開発したとのこと。題材の選定の妙を味わうことができた。
(真野 崇)

こひろくじ『チューバリアン』

こひろくじの珈琲氏が制作中の『チューバリアン』は、2人の少女が夜の学校を探索するアドベンチャーゲーム。緩い絵柄と空気感が目を惹く作品だ。

システムとしては奇をてらわない見下ろしマップ型のシンプルな探索型のアドベンチャーゲームで、体験版ではどういうわけか夜の学校の音楽室倉庫に閉じ込められていた蒼髪の少女「リアン」と出会い、帰路に就こうとする所までをプレイすることができた。

会場で体験できた範囲はごく短いものであったが、その短いなかでもグイグイくるリアンがなんとも可愛らしい。共に吹奏楽部に所属し楽器ではチューバを担当するという2人の交流の様子に注目だ。本作は2023年9月上旬にふりーむにて体験版を公開予定。また、完成版もフリーでの公開となるとのこと。
(真野 崇)

Website: https://kohirokuji.jimdofree.com/

TETRADOTOXIN『シトロンワールド フォワード:ゼロ』

TETRADOTOXIN『シトロンワールド フォワード:ゼロ』は超エネルギー「シトロン」が普及した近未来世界で美少女キャラクターが活躍する探索型2D横スクロールアクションゲーム。会場ではアクリルスタンド等のグッズも販売されており、世界観やキャラクター描写に力を入れている様子がうかがえた。

少女たちは戦闘と探索の両面で活躍する可変武器「アーモンド」を持っており、それを駆使して探索を行っていく。会場では鎌での斬撃に加えてワイヤーによる高速移動を持つ少女「スイ」を操作してステージを進んでいくところを体験できた。ステージ中に存在するシトロンは武器によって気体や固体などに性質が変化し、シトロンを固体化したのちスイッチの重石にしてエレベーターを動かすといった物理パズルの要素も盛り込まれている。

未登場のキャラクター達については、ステージ開始前にパーティを編成してキャラクターを使い分けて攻略していく方式が予定されている。まだまだ開発は初期段階であり、完成見込みは2025~2026年頃になりそうとのこと。これからの進展に期待したい。
(真野 崇)

Website: https://citronworld.mystrikingly.com/

E.N.D.R.I.『TOKYO ENDRE4MZ』

MINE氏とLEIA氏の2人組グループE.N.D.R.I.が開発中の『TOKYO ENDRE4MZ』(東京エンドリームズ)はタイトルにもある通り東京を舞台とした横スクロール方式のアドベンチャーゲーム。同グループは今回の横浜ゲームダンジョンがイベント初出展となる。

ピンクや紫を多用しヴェイパーウェイヴやシティポップを想起させつつも圧倒的な書き込み量を誇るピクセルアート群は目を見張るものがあり、とりわけ秋葉原の電気街通りの再現度はこれだけでも圧倒させられる。また、画面比率が4:3になっている点や、情報を集めるためのパソコンに表示されるイルカのマスコットや巨大掲示板など、2000年代を過ごした人間には既視感が強い在りし日のインターネットを想起させるものが多数登場する。

会場で試遊できた範囲では、街で失踪事件などのニュースが出回り始める中で主人公が謎の電話番号に電話を掛け、怪奇現象に見舞われる事から進んでいくオカルト色の強いストーリー展開で、ところどころでゾワリとさせられる。ホラーファンにも楽しめそうな作品になりそうだ。
(真野 崇)

Website: https://twitter.com/TOKYO_ENDRE4MZ

Cyber Space Biotope『Million Depth』

『Million Depth』はゲーム開発者のPop氏が設立したサークルCyber Space Biotopeの初作品となるローグライクゲーム。当初『Million Dark Depth』としてアナウンスされていた作品が改題されたもので、Steamにて2024年内のリリースが予定されている。本作では地下100万階という地底の奥底で音信の途絶えた友人の消息を確かめるべく、宇宙育ちの少女「モマ」が危険な奈落の底へと挑むことになる。

本作の最大の特徴は、マス目の上にパネルを並べて絵を描くように武器を作るクラフトシステムで、描いた絵の尖った部位の数や使ったパネルの種類によって攻撃力や耐久性が変化する。クラフトした武器は戦闘中にRスティックで飛ばして敵にぶつけてダメージを与える他、パネルが敵の攻撃を受け止めて減衰させる盾の役割にもなるため、攻撃力を重視するか、防御のしやすさを重視するか、あるいは見た目にこだわるのかが悩ましくなりそうだ。

戦闘は「ビオトープジャマー」と呼ばれる装置の効果で、自分が行動を起こすまでは時間が止まったままの状態で静止し、自分が動けば相手も動くという方式で、横スクロールアクションのような見た目ではあるがターン制のようにじっくりと考えて動くスタイルとなっている。ほか、地形の探査に使うバッテリーや地底へ降下していくごとに消耗する酸素といった資源の消費など、ゲームシステムが多岐に渡り一度の潜行では把握しきれない点も多かったため、機会があればより理解を深めてじっくり腰を据えて挑みたいところだ。
(真野 崇)

Website: https://game-creators.camp/games/23052324/million_dark_depth

リュノア『アストラウンド』

リュノア氏が個人で開発中の『アストラウンド』は宇宙飛行士を操作して無重力空間で戦う全方位型のアクションシューティングゲーム。ふわりとした無重力の浮遊感を感じさせる操作性と、向きを変える際にキャラクター本体の向きではなく画面全体が回転するという豪快なシステムが特徴だ。

360度全方向にショットを放てるツインスティック型のシューティングゲームなどとは異なり、あくまでもプレイヤー本人は画面に対して左右の方向にしか向くことができないため、上下方向から迫る敵に対しては画面の回転を駆使して対応することになる。また、敵を貫通して一気に倒すことができるチャージショットをめぐる爽快感と緊張感も秀逸で、このチャージショットは後ろを向いてロックオンを外してしまうとチャージが途切れるという厄介な特性があり、敵から充分な距離を取ったうえでチャージを始めないと敵に詰め寄られてしまう。SFホラー映画さながらの迫る怪物に対してビームガンのエネルギーチャージに焦る心境をそのまま味わえる。制約が面白さを生み出す好例と言えるだろう。

会場では操作説明を見ながら宇宙船内を進むチュートリアルの後、広間で3分の間出現し続ける敵を撃退し、最後に現れるボスを倒すところまでプレイする事ができた。完成版においても、船内を進むパートから耐久パートを経てボスと対決するまでの流れはそのままに全5ステージほどのボリュームになる予定とのこと。本作は2024年のリリースを目標に開発が進められている。
(真野 崇)

Website: https://twitter.com/Ryunoa_Zoltan

☆TAKA☆『ナタデコロコロ』

平成初期に一大ブームを巻き起こしたものの、今となってはその頃の熱狂は見る影も無くなってしまった、弾力が特徴のココナッツの汁を固めたデザート「ナタデココ」。そんな忘れ去られた賞味期限切れのナタデココを主役とした、世代感涙のパズルゲームが☆TAKA☆氏が開発中の『ナタデコロコロ』だ。

本作ではキューブ状のナタデココを操作し、タイルの上を転がりながらゴールへ進むのが目標となる。途中からはナタデココに突起が付くようになり、突起のある面に対して窪みのない平らなタイルは突起がつっかえて進むことが出来なくなるため、立方体のどの面を使って転がって進んでいくかを考えることが重要となる。進みたい方向に合わせて面の位置を調整しなければならない点が難しく、本作における最大の悩みどころとなる。

先のステージに進むと道を塞ぐコーラ味のブロックや、それを砕くためのシロップ弾といったギミックも登場する。パズルとしての歯ごたえはさることながら、ナタデココの魅力であるプルプル感もばっちり表現されており、見た目にも楽しい一本だ。本作は2024年の発売を目標として制作中となっている。
(真野 崇)

Website: https://twitter.com/hoshi_taka_hosh

POST COMMERCIALS:ALLIANCE『YOUNG TEAM SOUNDS』

ギターにキーボードが張り付いているファンキーなコントローラが異質な存在感を放っていたのが、POST COMMERCIALS:ALLIANCE(ポストコマーシャルズ:アライアンス)のノベルゲーム『YOUNG TEAM SOUNDS』。同サークルは弊誌を含む各種ゲーム情報サイト等へ寄稿を行っているライターの葛西祝氏が主導するサークルで、その活動自体にもどこか批評性を感じさせるものとなっている。

『YOUNG TEAM SOUNDS』では、病気を理由に活動を停止していた不調のミュージシャン「窪田」となり、急遽あるバンドの助っ人として新曲を作るべく奮戦することとなる。曲のインスピレーションを得るために自室の中やスマホなどをクリックして調べていき、時にはキーワードを入力してネット検索するなどして情報を得て選択肢を選ぶことで、窪田が作る伴奏(ギター・リフ)にその内容が反映される。伴奏を聴いたバンドメンバーやディレクターが反応を返すので、そこから更にやり取りを繰り返しながら制作中の曲をイメージに合致する物へと近づけていく。劇中でメンバーと通話のみで伴奏をやり取りする光景にはCOVID-19流行以降のチームでの創作スタイルが投影されている。

さながらジャム・セッションによって曲が出来上がっていく様子を見ていくような形で物語が進行し、実際に音楽を演奏したり譜面を書いたりするところではなく、その前段階である音楽を作るためのアプローチを追体験するというところに重きが置かれているように感じられた。創作活動の経験がない人ほどこのような視点は新鮮なものに映りそうだ。本作はSteamにてリリース予定で、今回のイベント開催に合わせてストアページが開設されている。
(真野 崇)

Website: https://postcommercialsalliance.mystrikingly.com/

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。