第3回ぜんため・インディー通り巡りで見つけた注目作品10選

イベントレポート

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美川憲一の歌曲にも唄われた岐阜の柳ケ瀬商店街を舞台に、岐阜とゲームを中心としたエンターテインメントを盛り上げるべく2017年より毎年夏に開催されている「全国エンタメまつり」(ぜんため)
ぜんためでは例年インディーゲームの展示コーナー「インディー通り」が設けられており、遠方から訪れるゲームファンのみならず、地元の子供たちなど様々な来場者で賑わっている。

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今年で3回目を数えるぜんためインディー通りは、第1回(関連記事)でもインディー・VRゾーンの会場となった映画館CINEX地下「シネックスホール」で開催される「インディー通り一丁目」、VRゾーンとなる十六銀行・旧徹明支店「じゅうろくてつめいギャラリー」内の「インディー通り二丁目」、ぜんためというイベントの最大の特色である柳ケ瀬商店街の通路を使った野外展示の「インディー通り三丁目」からなる拡大版となっており、全49組による展示が行われた。
本記事ではインディー通り巡りで出会った作品から注目作を10作品ピックアップして紹介する。気になる作品が見つかったら是非チェックしてみてほしい。

PixelForce『STARROLL』

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今回のぜんためインディー通りにおいては近隣の学校の学生チームによる作品の展示が数多くあり存在感を放っていたが、そのうちのひとつ『STARROLL』は名古屋工学院専門学校のチームPixelForceによるパズルゲーム。

3分割された直方体のようになっているフィールドをL・Rボタンで回転させ、ゴールである宇宙船の着陸地点へ辿り着くための道を作っていく。フィールドの回転はプレイヤーが存在していないエリアだけが回転するようになっており、回転の回数が規定数以内であればクリア時に評価ポイントとなる星を得ることができる。また、途中に配置されている「燃料」を全て回収することでも星をゲットできる。

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ステージは4種あり、移動すると滑る氷のあるステージや、ある側面にだけ配置してある発電機をドアに接続してドアを開ける必要があるステージなどバリエーション豊かで、フィールドだけでなく頭もひねる必要がある。野外展示の暑さと厄介なパズルの組み合わせにのーみそがふっとーしそうになること請け合いだった。
じっくり腰を据えて考えながら遊びたい作品だが、製品版は今冬にSTEAMにて配信予定とのこと。リリースの時を楽しみにしたい。

ムジークゲームズ『ハマルカク』

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『ハマルカク』はECCコンピュータ専門学校のチーム・ムジークゲームズによるアクションパズルゲーム。
プレイヤーはピンク色の魚を操作して、画面奥から迫る黒い魚にぶつからないようにしながら、白い魚に隣接するようにして魚をくっつけていき、最大5×5マス分の魚群を作ってリリースすることでスコアを稼いでいく。黒い魚は魚群となった魚も削っていくので、魚群を回転させるなどしてうまく避けたり、時には魚群を先にリリースしてスコアにすることも必要になる。

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黒い魚は避け、白い魚はくっつけるとやること自体はシンプルだが、5×5マスの魚群のうち1列を埋めることで魚が赤く点灯してリリース時のスコアが上昇するなどスコアアタックが熱い。筆者はついランキング1位を獲得できるまで席で粘ってしまった。ある程度ゲームが進むと視点が切り替わったり、先へと進むごとにBGMが徐々に豪勢になっていくなど演出性も高く仕上がっている。

本作は8月25日に大阪で開催されるmegabit comvention 02においても出展予定があるので、現地に赴かれる方はそちらで体験してみるのもよいだろう。

FanCluster『GrayScale』

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『GrayScale』は名古屋情報メディア専門学校(NCS)ゲーム制作部のチーム・FanClusterによる横スクロールタイプのパズルアクションゲーム。
棒人間を操作して、『GrayScale』のタイトルが示す通りの白と黒の2色の領域を行き来しながら宝を入手して出口に向かうことが目的となる。

勢いをつけて境界線をまたぐことで飛び出した側にブロックが発生し、発生させたブロックを足場にして高い所に登ることができる。しかしブロックは背景の色に溶け込んでいき、最後には消えてしまう。ブロックを出現させる位置を考慮するのはさることながら、ブロックが消えてしまわないうちに目的地へと走り抜ける的確な操作も問われることになる。

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システムの根幹となっている白と黒の境界線をぶち破るときの感触の良さは特筆もの。
クリアタイムや境界線を越えた回数はカウントされるので、ただクリアするだけではなく、より少ない手数でゴールできるかにチャレンジする楽しみ方もある。

本作はぜんため開催日の前日にあたる8月2日よりSTEAMにて配信が開始されている(現地ではダウンロードカードの販売も実施)。ぜんためには行けなかったと言う人は是非STEAMからトライしてみてほしい。

プラムベリー『朝を知らぬ星』

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『朝を知らぬ星』はプラムベリー氏が開発中の3Dアクションゲーム。
プラムベリー氏は去年のぜんためにも出展しており、当時中学3年生でUnityを使用した3Dアクションゲーム『おてんば少女と学校の迷宮』を展示して周囲の大人たちの度肝を抜いた先進気鋭の開発者。同作と併せて展示が行われていた。

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展示バージョンでは夜に覆われた街で女性主人公を操作して怪物達と戦う内容となっていた。日本刀を召喚しての通常攻撃の他、ローリングによる回避や敵を捉えるロックオン、必殺攻撃などを行うことができ、敵のモーションを見切って切り込む奇をてらわないオーソドックスな3Dアクションに仕上がっている。

氏のtwitterに上げられていた動画に存在していた2人同時プレイはゲーム内のカメラ視点の都合からオミットされたとのことで、多人数プレイを愛好する筆者としてはやや無念だった点もあるが、その技術力に疑いの余地はない。今後の動向に注目したい。

フロシキラボ『MEssing MEmory』

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白黒ビジュアルが特色となるアドベンチャーゲーム『MEssing MEmory』はサークルフロシキラボが開発中の作品。
プレイヤーは記憶喪失で療養中の主人公となり、他の人物たちに「自分が過去にどのような人間だったのか」のエピソードを聞きとり、それを自分の過去として肯定することで自身の人格を形勢していく。

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そして形勢された人格によって登場人物たちの主人公に対する反応もまた変化する、という多重に折り重なった構造を持つ作品となっている。人格による変化はゲームシステム面にもおよび、ゲームの内容が脱出ゲームやクイズゲームへと変化することもあるという。

展示されていた「超ショートデモ」ではそうした性格による分化が始まる直前で終了となったため、その真価までは探ることができなかったが、裏に一物抱えていそうな登場人物たちが性格の変化によってどの様な対応を返してくれるのかが楽しみだ。
本作は9月開催の東京ゲームショウ2019ほか、各種イベントで出展予定があるとのこと。

website : https://furoshikilab.wixsite.com/furoshikilab

mdkGAMES『大正ゾンビろまん』

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打撃力の高いサブタイトルが非常に目を惹く『大正ゾンビろまん~地獄のプロレタリアン式バックブリーカー~』は、『はさんでポン!』(関連記事)などを制作したmdkGAMESが開発中の作品。

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本作はドットイートゲーム型の見下ろし視点のアクションゲームとなっており、坊ちゃんを操作して、動く屍となった女中が徘徊する迷路と化した屋敷の中を、鍵を集めて脱出することが目的となる。ステージはランダム生成になっており、行き止まりの存在と正確にこちらを追跡してくる女中の組み合わせによって追い込まることが多い。坊ちゃんはダッシュを使って女中に体当たりすることで女中を一定時間気絶させられるため、ピンポイントでダッシュを使っていくことが重要になる。

展示バージョンでは5ステージまでプレイすることが出来たが、ステージによってはただ鍵を取ろうとしても取れない場合もあり、一筋縄ではいかないようになっていた。鋭意製作中とのことなので続報に注視したい。

website : https://mdkgames.jimdo.com/

かえるさんげーむず『もののけ浪漫育成記』

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『もののけ浪漫育成記』は今年3月よりRPGアツマール上で公開されプレイ可能となっている育成RPG。
本作はRPGアツマール上で活躍しているクリエイターらによる共同制作による作品で、出展者のかえるさんげーむず代表であるのんちゃ氏はUIデザイン・システム面を担当しており、同氏の代表作である文明育成シミュレーションゲーム『百年王国』と併せて展示が行われていた。

本作ではひらがなで入力した好きな文章から「もののけ」が生成され、もののけ達を率いて戦闘を行っていく。

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(これが)

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(こうなる)

舞い込んでくる様々な厄介事をノンフィールドRPG方式で解決していくクエストのほか、非同期APIを使用した他のプレイヤーとの疑似対戦システムが搭載されており、生成・育成したもののけ達で競い合うこともできる。会場でご対応頂いたディレクターのえーしゅん氏によれば、上位ともなれば命名と能力の規則性がひとつひとつ探られるほどの鎬を削る戦いが繰り広げているとのことで、いわゆる「やりこみ」性は抜群と言えるだろう。

website : https://charlsnonterm.wixsite.com/home

Achamoth『触手を売る店』

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Achamothの『触手を売る店』は、タイトルの通り「触手」を育てて売る育成ゲーム。
RPGアツマールに投稿されている同名作品のアップグレード版にあたり、ゲームエンジンをUnityに変更して開発が進められている。会場ではiPhoneを使用してプレイすることができた。

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主人公である「土くれ人形」は店の地下室に封印されていた罪人の悪霊を解放してしまい、触手を育成する傍ら、店主から罪人の悪霊たちを探し出す命令を受けることになる。
育てた触手を店主に渡すと対価として「霊酒」を得ることができ、この「霊酒」を使う事で更なる触手の育成の土壌を育てたり、「式神」を入手して罪人の悪霊たちを探させることができるようになる。
触手は放置していても成長するが、採取した触手同士を「共食い」させることでより高品質な触手を生み出せる。触手の品質が上がれば得られる「霊酒」の量も増えるので、積極的に品質を上げていくことがポイントになる。

「触手」というモチーフに加えて香港などの雑多なアジアの風景が投影されており、醸し出される妖しい雰囲気が魅力的な作品となっている。本作は9月に開催される東京ゲームショウ2019にも展示予定となっている。

website : https://achamoth.games/

Rumor『SNOOZE』

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『SNOOZE』はサークルRumorが開発中の探索型RPG。

少女の夢の中とされる世界は、立派な岩々や遺跡のような景色、意味ありげな巨大なロウソク、そこに住まう不可思議な住人たち…
展示されていたバージョンではフィールド上を歩いて探索できるのみであり、ほとんどのことが謎に包まれたままだったが、緻密に描き込まれた際立ったビジュアルと、その謎めいた内容に逆に「気になる」度合いが高まった。果たして少女にはどんな冒険が待ち受けているのだろうか?

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サークルRumorは8月12日のコミックマーケット96(4日目)にも出展予定。謎めいた夢の世界が気になったという方はチェックしてみてほしい。

website : https://www.snoozerumor.com/

Max Neet Games『ジュン少年の事件簿』

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オークマネコ氏率いるMax Neet Gamesからは『ジュン少年の事件簿』のプロローグ版が展示されていた。スタンドアローン式のVRゴーグル「Oculus Go」を活用するアナログゲームであり、今回インディー通りで展示されていた作品の中でも一番の変わり種だったと断言しても良いだろう。

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プレイヤー達はジュン少年を初めとする少年グループに扮して、かくれんぼに興じる「アイちゃん」の行方を追っていく。指示に従ってカードをめくりつつ、時には特定のプレイヤーが過去を視ることのできるカコバコ(VRゴーグル)を装着し、そこで見た情報を共有しながら推理を行う。カードに示された設問にうまく回答できれば先へと進むことができ、筆者がプレイに参加した際には無事にアイちゃんの居場所を探し当てることができた。

筆者はボードゲームを頻繁にたしなみ、VR/ARとボードゲームとの融合を夢想することもあるが、このように実物として出てきたインパクトは筆舌に尽くしがたい。今回はプロローグ版で続きがあるかは未定とのことだが、ぜひ今後も続いて欲しいタイトルだ。

website : https://ookumaneko.wordpress.com/category/max-neet-games/

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。